守田です(20161125 23:30)

11月22日未明に福島県沖でマグニチュード7.4という大きな海底地震が起こりました。
この影響で福島第二原発3号機の冷却装置が自動停止、冷却がポンプが再起動されるまでの90分間、停止しました。
東電はその後、燃料プールに隣接し、プールからの水を受けて再度冷やしてプール内に送り戻すスキマーサージタンクの中の水が波打ったことをセンサーが水位低下と判断し、ポンプが停止したと説明しました。

ところが昨日夜半になって東電が冷却装置の停止の理由を水位低下にあったと変更しました。
短い記事で報じられたので、全文を引用しておきます。

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地震で冷却停止、原因は水位低下 福島第2、東電が説明変更
共同通信 2016/11/24 22:06
http://this.kiji.is/174506626139719157?c=39546741839462401

東京電力は24日、福島県沖の地震により福島第2原発3号機の使用済み燃料プールの冷却が一時停止した原因が、プール脇にあるタンク内の水位低下だったとの見方を示した。
当初の説明は、タンクの水が地震で揺れたことを水位変化と検知したとしていたが、変更した。

燃料プールは、循環している冷却水の上澄み部分が脇にあるタンクに流れ込む構造。タンクの水を浄化・冷却し、再びプールに注水している。
地震時は揺れにより、プールの水の一部が建屋内の別の設備に流れ出たため、本来は脇にあるタンクに流れ込む水量が減少し、タンク内の水位が低下したとみられる。

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これは一体どういうことでしょうか?

当初東電は、「ポンプが自動停止したのは、水が波打って、センサーが誤って水位低下と誤判断したためであって、何ら問題となる事態ではない」と説明したのです。
しかし変更後の説明は明らかにより悪い事態が起こっていたことを意味しています。水位低下という異常事態が実際に発生し、センサーは正しくそれを感知していたからです。
その意味で設計思想から言えば、ポンプは正しくも止まったことになります。しかし何か異変が起こると、ポンプが止まって冷却が停止されるのでは、事態は安全側に収束しないわけで、フィールセーフの発想が無視されているようにも思えます。

それはともあれ、では水位低下の理由は何だったのか。新たな発表では「プールの水の一部が建屋内の別の設備に流れ出たため」とされています。
つまり22日東電が行った「冷却水漏れは起こっていない」という発表は、事実と食い違っていたのです。またも東電は、事故についてあまやった情報を流したことになります。

さらにここから先は疑問だらけです。そもそも東電は、冷却水がプールから漏れたのかどうか、こんな重要なこともすぐに確認できなかったのでしょうか?
何より東電は、現場でとくに問題がないと判断して1時間半後にポンプを再起動させたと言っているわけですが、しかしもともとの設定のままだったら水位を回復しなければポンプは動かなかったはずなのです。
水位の回復措置は、当たり前ですが水位が下がっているという事実を認識して行うわけで、少なくとも論理的には、この水位回復の過程で、水位が実際に下がったことが認知されたはずです。

しかし東電は最初の発表をこの後に行っているのです。
ということは、水位低下の事実を知りながら隠し、地震の影響を小さく見せようとしたのでしょうか?トラブルの隠蔽だったのではなかったのでしょうか?
この点をどこかのマスコミが追及していないか知りたくて、検索を繰り返していますが、まだこの事態を報じたのは昨夜配信の共同通信のニュースだけ。より悪い事態を東電が発表したのにフォローした記事が見つかりません。

また非常に懸念されるのは、この冷却装置の停止という事態は他の1、2、4号機ではなぜ起こらなかったのか。3号機との違いはなんであったのかです。
ちなみに福島第二原発の原子炉はどれも沸騰水型で、格納容器は1号機がマーク2型、2~4号機がマーク2型改です。とくに2号機、4号機は問題のあった3号機と同じ構造なので、ほぼ同じ揺れならどうしてそこでは冷却水漏れは発生しなかったのか。
ひょっとして3号機だけより大きく揺れたり、あるいは構造的に弱くなっている要因があるのではないでしょうか。

ともあれ起こってはならないことが3号機燃料プールで起きたのであって、その要因を探り、対処を行って、同じことが起こらないようにすることが大切なはずです。
しかしこうした安全思想から東電は大きくかけ離れており、その中で今回の大きな事実誤認か、事実隠蔽がなされたのだと思われます。

事故は一つ一つは小さなものでも、それらが重なった時により大きく危険性が高いものへと発展します。
またより強い地震のもとでは、そうした事故が同時多発し、対処を難しくもしてしまいます。だからこそ小さなもの一つ一つに丁寧に対応していくことが求められるのです。
その点で、冷却装置と言う最も大事な装置がダウンしてしまったことの要因が、まったく違う方向に転換されたのはとても大きな問題です。きちんとしたフォローが必要です。
なおこの問題ではもう一点、フォローを付け加えたいと思います。
明日に向けて(1323)でこの問題を論じたとき、燃料プールの危険性を詳述しました。福島第二原発だけでも約9500本もの使用済み核燃料が沈められている。このことが私たちにとっての巨大な脅威であるわけです。
ではどうしたら良いのかと言うと、より安全な状態に移すことで、技術的にはプールがいらない乾式のキャスクに安置することが危険の低減のために必要とされています。

ところがアメリカの反原発運動の中で、日本にも売られようとしているホルテック社のドライキャスクの危険性が指摘されていることを知りました。
このことを教えて下さったのは、篠山市原子力災害対策検討委員会をともに担っている玉山ともよさんです。

彼女が僕の記事を読んで指摘してくださったのは、リラッキングが大きな問題であるにせよ、僕が紹介した電事連資料の中で見逃せないのは日本で乾式貯蔵施設の拡大が狙われていることだという点です。
なぜなら、しばらく前から米国のサンオノフレ原発で採用されているホルテック社のドライキャスクが、「ペラペラで放射能漏れが懸念される」というのが、全米の反原発グループ共通の懸念事項となっているからだといいます。
以下、サイトも紹介して下さいました(英文です)
https://sanonofresafety.org/2014/08/21/premature-failure-of-u-s-spent-nuclear-fuel-storage-canisters/

彼女はアメリカが日本に次に売り込んでくるのはドライキャスクだとみているが、「プールを乾式貯蔵にしたところで、危険性は変わらないばかりか、また米国にかもねぎしょっていってたかられることは目に見えています」と指摘しています。
なるほどと思いました。「安全対策」と銘打って新たなビジネスがなされようとしているということだと思います。
今後、この点についてもウォッチを強めたいと思います。
追記

ここまで書いて投稿しようとしたところ、河北新報がより詳しい記事を掲載していることをつかみました。
これも短い記事なので貼り付けておきます。

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<福島沖地震>福島第2 停止原因は水位低下
河北新報 2016年11月25日金曜日
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201611/20161125_63025.html

東京電力は24日、福島県沖の地震により福島第2原発3号機の使用済み核燃料プールの冷却が一時停止した原因が、プール脇にあるタンク内の水位低下だったとの見方を示した。
当初の説明は、タンクの水が地震で揺れたことを水位変化と検知したとしていたが、変更した。
燃料プールは、循環している冷却水の上澄み部分が脇にあるタンクに流れ込む構造。タンクの水を浄化・冷却し、再びプールに注水している。
地震時は揺れにより、プールの水面が波立ち、水の一部が壁のダクトに流入したため、循環している水の全体量が減少し、タンク内の水位低下が起きたとみられる。
ダクトに入った水の一部は配管を伝い、建屋階下の配管のつなぎ目などから漏れ出し、水たまりが見つかった。第2原発2、4号機でも同様の水たまりが見つかり、3号機を含めた量は計約485リットル。外部流出はないという。
東電によると、3号機は水位が基準より2.2メートル下がると警報が鳴る設定で、地震発生から10分後の22日午前6時10分ごろ、警報が鳴ってポンプが停止した。

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やはり2号機、4号機でも同じことが起こっていたのでした。都合、3つの燃料プールから合計で485リットルの冷却水がこぼれてしまっていたのです。
ところが東電はこの3つの燃料プールからの冷却材漏れを、3号機の冷却装置の自動停止の問題にしぼり、しかも当初はセンサーが水位低下とあやまって判断したと発表したのでした。
ますます事故をより小さく見せようとしたとしか思えません。しかしこんなことをやってばかりいると安全性が遠のくばかりです。
ずさんで、誠実さのかけらも持ち合わせていない東電を私たちがしっかりと監視し、少しでも安全性が保持されるべく、努力を続けていきましょう。