守田です。(20120824 23:30)
前回、お知らせしたように、広島県尾道市、福山市、三原市に訪問した際に、「中国電力スラップ訴訟」というものの存在を知りました。上関原発反対のために非暴力ながらも身体をはった抗議を繰り返してきた祝島島民2人と支援の市民2人に対し、中国電力が、嫌がらせ的に約4800万円もの損害賠償を請求しておこした訴訟のことです。
なぜスラップ(SLAPP)というのかといえば、「企業、政府など、力のある団体が原告となり、権力を持たない弱者を被告とし、威圧・恫喝・報復(圧力をかけ、おどし、しかえしすること)を目的に起こす訴訟」のことだからだそうです。英語のStrategic Lawsuit Against Public Participation)の頭文字をとって、スラップ(SRAPP)といいます。
この説明は、「中国電力スラップ訴訟止めよう会(ストップスラップの会)」が配っているパンフレットに書いてありました。同パンフの内容はネット環境にないので、基本部分を書き起こして、最後に貼り付けますが、いずれにせよ市民の抵抗を力でねじ伏せようとする許しがたい訴訟です。みなさん、ぜひこの訴訟を止め、4人の方たちを守るためにご協力ください。
なおこの訴訟のことを調べていて、幾つかの動画を見つけたので紹介したいと思います。中国電力が上関原発の着工に強引に踏み切ってきたのは2009年10月のこと。これにいたる過程で、多くの人々が海にカヤックを浮かべるなどして抵抗していました。このときに中電は作業船を激しく前進後退するなどしてカヤック隊に向かってきたのですが、その映像が残されていますので、まずはそれからご覧ください。アップロードは9月22日です。短いです。
カヤックの目前で前進後退を激しく繰り返す中電の船
2009年9月22日アップロード
http://www.youtube.com/watch?v=OfLSbXpHNUg&feature=related
こんなことを繰り返しながら、中電は前述のように10月に着工に踏み切ったのですが、実は着工といっも形ばかりのことで、全国に工事が進んでいるかのようなポーズを示すことが目的でした。これに対し、後に中電に訴えられた一人で、「虹のカヤック隊」に参加していた原康司さんがインタビューに応え、「着工はポーズ。焦ることはない。多くの人の注目も集まっている。みんなが集えば工事は食い止められる。あきらめないのが肝心」とおおらかに語っています。
原康司さん(虹のカヤック隊インタビュー)
2009年10月11日
http://www.youtube.com/watch?v=vPw82hnWd28
実際、祝島島民と全国からかけつけてきた若者の力でその後、中電は工事がなかなか進められない状態に陥っていったわけですが、その中で12月に、島民2人と、カヤック隊の原さん、岡田さんを訴えるにいたったのです。
島民で訴えられたのは清水海保さん。上関町議会議員で「上関原発を建てさせない祝島島民の会」代表で1955年生まれ。
もう一人は上関町で漁業と大工を営む橋本久男さん。1952年生まれ。詳しいプロフィールはパンフレットの書き起こしの方をご覧ください。
さてこの訴訟について岡田さん自身が発言している映像もあります。
2010年5月23日に行われた第21回環瀬戸内会議総会での発言です。岡田さんが訴えられるにいたった経緯などが紹介されています。
http://www.youtube.com/watch?v=tD2KhAtKews
さらに非常に見ごたえがあるのが、この祝島で頑張る若者たちが、沖縄の高江に行って、現地の人々と合流することを描いた沖縄のテレビニュースです。交流の姿、若者たちの顔が素晴らしい。一緒になって高江の工事に抗議し、作業員を一生懸命に説得するシーンなども出てきます。非暴力直接行動の精神が踊っています。番組の構成も素晴らしい。さすがに沖縄はテレビ局までひと味もひた味も違う。7分ぐらいの映像ですがぜひご覧ください。
カヤック隊の若者達の思い*祝島と高江の連帯SLAPP訴訟に抗して
2011年2月15日アップロード
http://www.youtube.com/watch?v=0kXibpRH8o0
そして上関で昨年6月20日に行われた1100回目の反対デモの様子です。
祝島「きれいな海を守ろう」上関原発反対デモ1100回
2011年6月20日
http://www.youtube.com/watch?v=UkDnl3TY8RQ&feature=related
僕自身、これらを見ていて、上関の長年にわたる島民の運動、そしてそれに連なっていった若者たちの頑張りこそが、この間の、首相官邸包囲行動などにも見られる全国の大きなうねりの一つの原型になっていたことを痛感しました。「たたかい」ではあるけれど、憎しみや攻撃性によるのでなく、ヒューマニティや優しさ、人間的愛に立脚しようとしている人々の思いが、これらの映像から伝わってきます。
そしてそれはまた沖縄の人々の長きわたる基地への抵抗の中でも育まれてきたものであるのだと思います。だから高江の人々と、カヤック隊の若者はすぐに打ち解けてしまった。同じ風がそこに流れているのだからです。これらの映像を通じて、また実際に広島で聞いた岡田さんの発言を通じて、僕はそうしたことを感じました。
その点で、確かに中電スラップ訴訟は許しがたいし、みんなで力でぜひとも食い止めていきたいですが、しかしこうした若者たちの頑張りの息吹に触れることができたのはなんとも嬉しいことでした。実際に岡田さんの発言を聞いている時も、すがすがしく、日焼けしていてかっこいい岡田さんの姿も含めて、なんだかウキウキしてしまいました。ありがたいと思ったし、こうした若者がどんどん出てきていることがとても嬉しかったのです。
訴えられた4人は若者ばかりではなく、僕より年配の橋本久男さん、同年代の清水敏保さんもおり、もちろんその姿にも胸を打たれます。代表として大活躍の清水さん、橋本さんは「中国電力からの巨額な補償金を30年拒否し続けている」とも紹介されています。これまたかっこいい!そうした方たちの長い頑張りに、若者が結びついたのですね。ちなみに原康司さんは1972年生まれ、岡田和樹さんは1986年生まれです。
ともあれ4人をはじめ、上関原発反対で奮闘する祝島の姿の中に私たちは、今、全国に広がってきた炎の火種を見ることができるし、だからこそまたこの長きにわたる抵抗に、同じく沖縄での長きにわたる人々の基地への抵抗に、学ぶ中から、これからの方向性を探っていくことが必要だと思います。
何より、僕自身、恥ずかしながらまだ祝島には行けてないので、なんとかしてかけつけて、そこに流れる潮の匂いをかぎ、人々の心に触れ、多くを学びたいと思います。そんなきっかけをくださった尾道、福山、三原の方たち、岡田和樹さんにあらためて感謝を述べて、記事を閉じます。
以下、「中国電力スラップ訴訟止めよう会(ストップスラップの会)」の
パンフレットの基本的部分を紹介します。
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被告となった4人をみなさんの力で支えてください。
上関原発30年にわたる反対運動
1982年、中国電力による山口県上関原子力発電所建設計画が浮上、しかし地元の祝島島民をはじめ全国各地からの反対により、30年間計画は進みませんでした。
中国電力の強行作業とスラップ訴訟
ところが2009年10月、中国電力は地元住民の理解を得ないままに強引に埋立準備工事の着工。中国電力の強行作業により、非暴力で抗議活動を続けてきた地元住民には負傷者まで出ました。
さらに同年12月、中国電力は突然、祝島島民2人とシーカヤックで抗議していた2人の一般市民に対し、工事を妨害したとして約4800万円もの損害賠償を請求する裁判を起こしました。中国電力が妨害行為の証拠として提出した資料には事実と異なるものがあり、裁判官からも正されていますが、訴訟が始まってから2年が経つ今も、正しい証拠は提出されていません。
原発安全神話が崩れ去り、なお続く裁判
2011年3月11日、東日本大震災により東京電力福島第一原発事故が起き、上関原発建設のゆくえは未定のままです。しかし、裁判だけが続けられているのです。
市民の支援が放射能の無い社会をつくる
この訴訟は、原発建設を強硬に推進するために中国電力が反対派住民を押さえ込む「スラップ訴訟」と呼ばれています。自分たちの生活や海を守りたいその一心で抗議行動をし、そのために被告となった4人を支えるためにも、また、私たち市民の発言の自由を守るためにも、支援の輪が広がることが求められています。
訴えられている4人の紹介
清水敏保
海上運送業 上関町議会議員 上関原発を建てさせない祝島島民の会代表
山口県上関町 1955年生まれ
上関原発建設計画が持ち上がって以来30年にわたり一貫して反対してきた。美浜原発と敦賀原発への視察旅行で地元の方ともふれあい、地元が原発によって発展しないと実感。また度重なる不祥事を起こす電力会社を信用できなくなる。その後、上関町議会議員に立候補。現在に至る5期の議会の中で、上関原発について毎回質問・抗議し、あわせて国・県・中国電力にも抗議している。周辺自治体会議に上関原発反対を要請している。趣味はスポーツ、野球。
橋本久男
漁業 大工
山口県上関町 1952年生まれ
福井県敦賀原子力発電所2号機で配管作業に従事。防護服を着ての作業を経験し、被曝者を生み出している危険性を痛切に感じ、原子力とは共存はできないと考える。祝島では以前はタテ網漁やタコ壷漁、現在はイカス漁、素潜りなどの漁業を行い、祝島の他の漁師さんとともに、中国電力からの巨額な補償金を30年拒否し続けている。2009年からの中国電力による強硬な埋め立て工事に対し、24時間態勢で一日も欠かさず海上での阻止行動を続け、命をかけて建設予定地の田ノ浦の海を守ってきた。趣味はやっぱり素潜り。
原康司
シーカヤックガイド ダイドック冒険学校主宰
山口県周防市 1972年生まれ
アラスカやアマゾン川をシーカヤックで冒険中にアラスカで出会った先住民に生まれ育った故郷の大切さを教わる。その後地元に帰り瀬戸内を縦断中に、美しい瀬戸内の原風景や生活文化を色濃く残す祝島に出会い、感銘を受け、シーカヤックで祝島の漁師さんたちの漁船とともに海上での原発反対行動をはじめる。主宰する冒険学校では子どもたちにアドベンチャー体験を行なっている。趣味は百姓仕事。
岡田和樹
農業 水辺教室講師
広島県三原市 1986年生まれ
生まれ育った瀬戸内海に残された手つかずの干潟に、2005年、埋め立て計画が浮上、自分たちの世代にこの貴重な自然を受け継ぎたいと干潟保護運動をはじめ、計画は取り下げられる。その後、同じ思いで2009年から上関原発建設反対運動に参加、「上関原発を考える広島20代の会」を立ち上げたり、シーカヤックで海上阻止行動や中国電力本社前での抗議のハンストやデモなどを行う。瀬戸内の自然を生かした有機農業をしながら、子どもたちに自然の大切さを知ってもらおうと、干潟や川での観察会も続けている。趣味は山菜採り。
訴訟には弁護士費用、裁判所への交通費等多大な出費がかかり、またその間は仕事もできません。この訴訟にかかわる費用へのカンパを募集しています。ご協力をよろしくお願いします。
振込先
上関原発を建てさせない祝島島民の会
銀行振込
ゆうちょ銀行 加入者名 祝島島民の会
店名 一三九 当座 0067782
郵便振替
加入者名 祝島島民の会
口座番号 01390-4-67782
*郵便振替の方は裁判へのカンパとお書きください。
*領収書が必要ない方は、その旨を通信欄にご記入ください。
連絡先
中国電力スラップ訴訟止めよう会
(ストップスラップの会)
住所 広島県三原市高坂町真良1015
電話 0848-66-3592