守田です。(20110403 00:30)
福島第一原発では今、タービン建屋などに大量の放射能汚染水が貯まって
いることが問題となっています。そのうちの一部は、とうとう海に流れ出して
しまっています。地下水の汚染も進んでいます。
この汚染水をどう処理するのか。東電は一つの案として、メガフロートという
海に浮かべた大きな構造物を利用しようとしています。このため、静岡県
清水市の港に浮かんでいる「海づり公園」を買い受け、福島に運んで、
ここに汚染水を貯めようとしています。
これに対して、元原子炉設計士の後藤政志さんが4月1日に、緊急に会見を
行って意見を述べられました。後藤さんは、原子炉の前に海洋構造物に
携わっていたため、この領域でも専門家であるそうです。
後藤さんはこの方法は、今、取りうる方法の中ではいいアイデアだと評価
しています。しかしそのためには、メガフロートの専門家がいりますが、政府は
こうした専門家集団を集めて事態に対処していく体制をとれているのだろうか。
これまでの対処を見ていると不安になる。専門家によるプロジェクトチームを
作らないと何事もうまくいかないと提言されています。
これは前々回に流した記事の中にある、「田中俊一・元日本原子力学会長を
はじめ、松浦祥次郎・元原子力安全委員長、石野栞・東京大名誉教授ら16人」
など、原子力政策を推進してこられた方たちから出てきた、「国内の知識・経験を
総動員する必要がある」という提言にも通じる重要な意見だと思います。
なお後藤さんは、政府にも直接、提言を試みておられるようですが、今のところ
残念ながら反応はないそうです。
後藤さんのお話を再びノートテークしましたのでお届けします。
今回も、引用される場合は、「守田による聞き取り」とことわりを入れてください。
なお、メガフロートの使用を報じた静岡新聞のニュースも貼り付けておきます。
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放射性廃液問題 メガフロートは可能か?
後藤政志
放射性物質を大量に含んだ水の処理をどうするかが問題になっている。
私は原子炉に関わる前に、海洋構造物の設計をやってきた。はしけ(バージ)を
エンジニアリングとしてやってきた。それで話をしたい。
現在タービン室の下に水が溜まっており、汚染されている。ほっておくと水が
海に入ってしまう。すでに海の汚染が始まっているが、これから大量のものが
流れ込むと非常にまずい。それで何とか止めようとしている。
タービン建屋内の復水器に水を入れようとしたが、そこに水が入っているので、
それをタンクにうつさないといけない。タンクを新設して水を入れることなどを
考えているが、それでは海の漏れそうなものには間に合わない。それで他の
船を持ってくるのが一つの解決策になる。
恒久的な設備が作れないときはこういう非常手段は有効だ。
タンクを作るのは大変だが、船はすでにできている。船は水が漏れないように
設計されているので、水を閉じ込められる。気体を封じ込めることはできないが、
液体は貯められる。他に方法がないので、一つの回答になる。
各プラントの炉心は冷え切ってなくて安定していない。冷やしていかないと
溶けてしまい、危険な状態になる。そのため注水しているが、明らかにどこかで
漏れている。それで出てくる水を外のタンクに移そうとしているが、限度が
あるので、タンカーなどに入れようとしている。
対策として、短期的に大量の汚染水を貯蔵するには船舶が最適。
タンクを作るには時間がかかるが船舶なら緊急措置がとれる。ここに
ためておいて、後にタンクを造る。その場合、船は汚染させるので、
捨てるしかない。
船は人が乗って操縦する。放射性物質を乗せた船に乗るのは危険。
できるだけ自走船(プロべらがある船)ではなく、バージ(はしけ)が
好ましい。タグボートでひっぱれるので、はるかに人が被ばくする量が少ない。
私も本件で政府に働き掛けをしている。なかなかうまくコンタクトはできないが、
緊急時のため、少数の各分野の専門家を動員した、小回りの効くプロジェクト
を作ることが重要。プロジェクトは役割分担がはっきりしていないとうまく
進まない。それが失敗するとまた後手後手になる。
計画立案に当たっては、種々の条件を考慮の上、放射性廃棄物および
船舶関係の専門家をプロジェクトに入れる必要がある。
この提案は、状況は各種の条件によるので、あくまでも一つの案である。
メガフロート(浮体構造物)が日本中に幾つか設置されている。
もともとは空港などに使っていた。日本船舶海洋学会でメガフロートの
研究を行っている。私もそれのリスク評価の委員会のメンバーだった。
浮体式の空港は小さいもので長さ2000メートル、大きいもので
5000メートルある。
これは普通の船と同じ構造をしている。長さが5000メートルあっても深さは
5メートルぐらいしかない。これらを評価していた。
空港は一つの例で、洋上風力発電や、緊急時の支援用、病院などが
研究対象になっていた。各地域で小型のものを作り、公園などに
使ってきた。清水港でも繋留して海づり公園として使っている。
これは長さ136m、幅46m、深さ3mのもので、チェーンで繋留している。
この話を聞いたときにいいアイデアだと思った。ただし技術的な課題がある。
長さと深さの比率が45.3倍になる。
長さと深さが大きすぎると、波がきたときに曲がってしまう。メガフロートは
ある限定した閉じた海域、防波堤の中で波が限定していて使える。洋上では
とても持たない。
バージや船はこの比率が8倍から12倍までで造られている。20倍を超えるのは
特殊なもの。これに対してメガフロートは、この比率が数十から数百なので
洋上に持っていくのは難しい。
船体には波によって下から力がかかる。ホギング状態とサギング状態といって、
船の真ん中に力が働いたり、船首と船尾に働いたりする。このため
この比率が重要になる。比率が高いとこの力に持たない。
ではどうするか。船の上にメガフロートを乗せる方法がある。
他には波のないときに持っていくことがあるが、波が強くなるリスクがある。
これらを考えないと失敗する。
この間の原発に対する対処を見ていると、ある事態に対して最悪の状態を
想定して動くことができていない。その上でこれがダメなら次にはこれという
方法をとるべきだが、現場はそうなっていない。そのことが懸念される。
私が提案したいのは、後手後手になってはならないということ、この事態では
船関係しかない。船の手配が始まっていることは分かる。ただしその場合、
少人数のプロジェクトを課題ごとにつくり、有機的・柔軟に運用することが
問われる。
また常に最悪を考え、バックアップを考える必要がある。船がダメなら次を
用意しておくことが必要。
また利権が優先するようにならないようにしないと成功しない。
自分の会社の利益でこのプロジェクトが動かされたら最悪。海外からの協力を
得る時でもこの点への配慮が大事。
その上で、各分野の専門家の意見が反映するプロジェクトにしないと失敗する。
総力を結集することがとにかく必要。
今のやり方をみていると、外からの意見が入りにくい。
やむをえない面もある。しかし各分野の専門家をちゃんと入れて、
技術的評価がきちんとできるようにしないといけない。
本当にいいたいのは必要な技術者をちゃんと動員して、必要なロジェクトを
作って実行できるようにすること、それを政府主導でやっていただきたい。
今の状態では提言しても政府に届かない。今は仕方がない面もあると思う。
メガフロートがでてきて動き始めた。本当に技術的に知っているか不安がある。
それぞれの技術的バックボーンを持ったものが集まって自由に意見を言って
進めていかないと、失敗する。これは確信を持って言える。
私は普通のバージを使うのが良いと思う。
それがどれだけあるかという問題はある。
もちろん船を利用するのは対処療法であり、緊急避難でしかない。
いよいよどうしようもないとなったら、砂浜にバージを乗りあげさせて
沈没しないようにするしかないと思う。それで維持できてば時間的な
稼ぎができる。最終的には陸上に大きなタンクを造る必要がある。
考え方としては、洋上にたくさんの石油を日本は備蓄している。
同じ考えになる。極端に言えばそういう感覚。しかし長い間には
嵐がある。それらの対策も考えなくてはいけない。
大きな津波がくると大変。船の場合は津波が来るなら沖に出す。
しかし逃げ遅れると大変。これらを評価して、一番、有効な方法を
取るしかない。
これは格納容器ベントと同じものだ。本来、絶対にやってはいけないこと
なのだが、やらないと爆発してしまうので、やむを得ないので行う
危機管理的なものでしかない。
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静岡市メガフロート提供 原発汚染水を貯留
東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発のタービン建屋などに、
高濃度の放射性物質を含む水がたまっている問題で、静岡市は1日、この
汚染水を貯留するため同市清水区の清水港海づり公園に活用している
メガフロート(大型浮体式海洋構造物)を提供することを決めた。小嶋善吉市長が
同日会見し、東電からの要請に応じたことを明らかにした。
小嶋市長は「(東電から)メガフロートを使った汚染水の処理はあらゆる手段を
検討した中で、最も有効で迅速な解決策との説明を受けた」と話した。
メガフロートは鋼鉄製で長さ136メートル、幅46メートル、高さ3メートル。
内部は空洞で空気で浮いている。大型アンカーで海底に固定し、上に釣りエリアや
親水公園などが整備されている。メガフロートの内部は約1万8千立方
メートルの容積があり、放射性物質の汚染濃度が低い水約1万立方メートルを
入れる予定という。入れた後の処理は未定。メガフロートは三重県や兵庫県、
高知県などにもあるが、静岡市が現地に最も近かった。
今後、東電がアンカーを取り外すなどして、同社が手配したえい航船で横浜港
まで運び、メガフロート内部に水が注入できるように改造する。
海づり公園は2日から休止する。市は代替施設やメガフロートの補償など
詳細について、国も交え詰める方針。
市によると、3月31日午後に東電から打診があった。1日に市を訪れた東電の
担当者から詳細な説明を受け、小嶋市長が「緊急事態なので、協力できる
ならしたい」と、その場で応じたという。小嶋市長は「市民に憩いの場として
愛されてきた施設だが、こういう状況なので理解と協力をお願いしたい」と
述べた。
(4/ 2 07:53 静岡新聞ニュース)
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