守田です(20110402 03:00)
原発の現状を直視しようとする冷静な記事が出始めました。
一つは、福島原発で起きた全電源喪失事故と同じシミュレーションが
1981~1982年にアメリカで行われており、福島原発がそれとほぼ
同じ道を辿ったと推測されるというものです。
これは
「ブラウンズフェリー原発1号機をモデルに、米オークリッジ国立研究所が
実施した。出力約110万キロワットで、福島第一原発1~5号機と同じ
米ゼネラル・エレクトリック(GE)の沸騰水型「マークI」炉」
で行われたものです。
このシミュレーションを辿った上で、記事は次のように書いています。
「バッテリーは8時間使用可能で、シミュレーションと違いはあるが、起きた
事象の順序はほぼ同じ。また、計算を当てはめれば、福島第一原発の
格納容器はすでに健全性を失っている可能性がある。」
つまりシミュレーションとの比較からいっても、「格納容器はすでに健全性
を失っている可能性がある」=破断し、最悪の事故に発展する可能性が
あることが指摘されています。
ただしこの記事は重大な事態を見過ごしています。福島第一原発1号炉では、
全電源喪失と同時に、冷却材喪失という重大事故が同時に起こっていた
可能性が高いことです。この記事では電源喪失による、冷却材が循環できず、
燃料が熱くなり、危機に向かったことが想定されている。そのため、停電開始後
5時間で燃料棒が露出と書かれています。
しかし実際には、その後に冷却材の喪失も起こり、燃料棒が早期に露出して
しまった可能性が高い。つまりこのシミュレーションよりもさらに
過酷なことが起こっている可能性が考えられるわけです。格納容器の
ダメージは、ここでの想定よりも、さらに深刻だと推測されます。
なおこの記事の最後に、
「原子力安全研究協会の松浦祥次郎理事長(元原子力安全委員長)は
「何もかもがダメになるといった状況は考えなくてもいいという暗黙の了解が
あった。隕石(いんせき)の直撃など、何でもかんでも対応できるかと言ったら、
それは無理だ」と話す。」
とあります。
これに対して、原子力資料情報室にゲストスピーカーとして参加している
元原子炉設計者の後藤政志さんは、どれほど確率が低かろうとも、
物理的に大変な危機が起こりうるものを選んではいけないのではないかと
語りました。僕も原子力政策がよってたってきた「考えなくていいという暗黙の
了解」はもはや覆されなければならないと思います。
さてもう一つの記事は、この松浦氏と田中俊一・元日本原子力学会長
などが、
「状況はかなり深刻で、広範な放射能汚染の可能性を排除
できない。国内の知識・経験を総動員する必要がある」
という提言を行ったという記事です。
まったく妥当な提言です。僕自身、最ものぞんできたことです。しかし反対に
この提言からは、今なお原発災害への対処に「国内の知識・経験を総動員」して
いない現実が透けて見えて来て、残念であり、悲しい気がします。
正常バイアスに捕われ、事故が極めて危機的なものであること直視し、
明らかにしなかったがために、三週間経った今も総動員体制ができていない。
そこに私たちの危機の第二の実態があるように思います。逃げる時間が
あるのに逃げず、力を集める時間があるのに集めない・・・そんな状態を、
私たちなりの方法で少しでも変えたいものです。
記事は次のように続いています。
「同原発1~3号機について田中氏らは「燃料の一部が溶けて、原子炉圧力
容器下部にたまっている。現在の応急的な冷却では、圧力容器の壁を熱で
溶かし、突き破ってしまう」と警告。また、3基の原子炉内に残る燃料は、
チェルノブイリ原発事故をはるかに上回る放射能があり、それをすべて
封じ込める必要があると指摘した。」
これも妥当な認識だと思います。現在の福島第一原発が、1号機から3号機
まで、ともに圧力容器崩壊の危機に立っていること、これを原子力推進
サイドが認め、警告を発したのは、少なくとも僕が知る限りこれが初めて
です。こうした率直な提言は喜ばしいものですが、しかしそれだけに一層、
原発の危機が深いことも読み取れます。
この危機が乗り越えられることを祈るばかりですが、同時に重大危機の
勃発への構えを作り出すべき必要性を、私たちは、再再度、認識すべきだと
思います。
なお松浦氏はまた
「原子力工学を最初に専攻した世代として、利益が大きい
と思って、原子力利用を推進してきた。(今回のような事故について)考えを
突き詰め、問題解決の方法を考えなかった」と陳謝した。」
そうです。
人々に詫びることもなく解説を繰り返す、○○大学教授などとは違い、
これも真摯な態度だと思います。
しかしもう一歩踏み込んで欲しい。そもそもマグニチュード9という地震の
想定もまた、それこそ「隕石が落ちてくる」ような確率のものと考えられていた
のです。しかし今後はそれを想定せざるをえない。そうだとすると、すべての
稼働している原発をすぐに止めなければならないし、これを想定した原発は
採算的にも成り立たないため、原子力政策はここで閉じる以外にないのです。
今後のこれらの方々の発言にも注目しつつ、情報発信を続けます。
原発の全電源喪失、米は30年前に想定 安全規制に活用
2011年3月31日16時39分 朝日新聞
東京電力福島第一原子力発電所と同型の原子炉について、米研究機関が
1981~82年、全ての電源が失われた場合のシミュレーションを実施、報告書を
米原子力規制委員会(NRC)に提出していたことがわかった。計算で得られた
燃料の露出、水素の発生、燃料の溶融などのシナリオは今回の事故の経過と
よく似ている。NRCはこれを安全規制に活用したが、日本は送電線などが
早期に復旧するなどとして想定しなかった。
このシミュレーションは、ブラウンズフェリー原発1号機をモデルに、米オーク
リッジ国立研究所が実施した。出力約110万キロワットで、福島第一原発
1~5号機と同じ米ゼネラル・エレクトリック(GE)の沸騰水型「マークI」炉だ。
今回の福島第一原発と同様、「外部からの交流電源と非常用ディーゼル
発電機が喪失し、非常用バッテリーが作動する」ことを前提とし、バッテリーの
持ち時間、緊急時の冷却系統の稼働状況などいくつかの場合に分けて計算した。
バッテリーが4時間使用可能な場合は、停電開始後5時間で「燃料が露出」、
5時間半後に「燃料は485度に達し、水素も発生」、6時間後に「燃料の溶融
(メルトダウン)開始」、7時間後に「圧力容器下部が損傷」、8時間半後に
「格納容器損傷」という結果が出た。
6時間使用可能とした同研究所の別の計算では、8時間後に「燃料が露出」、
10時間後に「メルトダウン開始」、13時間半後に「格納容器損傷」だった。
一方、福島第一では、地震発生時に外部電源からの電力供給が失われ、
非常用のディーゼル発電機に切り替わったが、津波により約1時間後に
発電機が止まり、電源は非常用の直流バッテリーだけに。この時点から
シミュレーションの条件とほぼ同じ状態になった。
バッテリーは8時間使用可能で、シミュレーションと違いはあるが、起きた
事象の順序はほぼ同じ。また、計算を当てはめれば、福島第一原発の
格納容器はすでに健全性を失っている可能性がある。
GEの関連会社で沸騰水型の維持管理に長年携わってきた原子力コン
サルタントの佐藤暁さんは「このシミュレーションは現時点でも十分に有効だ。
ただ電力会社でこうした過去の知見が受け継がれているかどうかは
わからない」と話す。
一方、日本では全電源が失われる想定自体、軽視されてきた。
原子力安全委員会は90年、原発の安全設計審査指針を決定した際、
「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又(また)は非常用
交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」とする
考え方を示した。だが現実には、送電線も非常用のディーゼル発電機は
地震や津波で使えなくなった。
原子力安全研究協会の松浦祥次郎理事長(元原子力安全委員長)は
「何もかもがダメになるといった状況は考えなくてもいいという暗黙の了解が
あった。隕石(いんせき)の直撃など、何でもかんでも対応できるかと言ったら、
それは無理だ」と話す。(松尾一郎、小宮山亮磨)
http://www.asahi.com/international/update/0330/TKY201103300512.html
原発事故、国内の経験総動員を…専門家らが提言
福島第一原子力発電所の事故を受け、日本の原子力研究を担ってきた
専門家が1日、「状況はかなり深刻で、広範な放射能汚染の可能性を排除
できない。国内の知識・経験を総動員する必要がある」として、原子力災害
対策特別措置法に基づいて、国と自治体、産業界、研究機関が一体となって
緊急事態に対処することを求める提言を発表した。
田中俊一・元日本原子力学会長をはじめ、松浦祥次郎・元原子力安全
委員長、石野栞(しおり)・東京大名誉教授ら16人。
同原発1~3号機について田中氏らは「燃料の一部が溶けて、原子炉圧力
容器下部にたまっている。現在の応急的な冷却では、圧力容器の壁を熱で
溶かし、突き破ってしまう」と警告。また、3基の原子炉内に残る燃料は、
チェルノブイリ原発事故をはるかに上回る放射能があり、それをすべて
封じ込める必要があると指摘した。
一方、松浦氏は「原子力工学を最初に専攻した世代として、利益が大きい
と思って、原子力利用を推進してきた。(今回のような事故について)考えを
突き詰め、問題解決の方法を考えなかった」と陳謝した。
(2011年4月2日01時42分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110401-OYT1T00801.htm
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