守田です。(20110322 22:20)
科学的分析が欲しいという僕の呼びかけに、友人の科学者がこたえて
説明を送ってくれましたので転送します。
ただし少々、難しい内容です・・・。
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メール1
私は、公的に、現時点までの事故の推移状況では、
ウラン、プルトニウム他の漏出があったかどうか判断できない、との立場に立ちます。
状況証拠はそれなりに把握していますが、物的証拠がありません。
この点で、私も守田さんも同じ立場にあります。
全貌を、数値で把握していないのです。
私が恐れるのは、政府が情報統制を敷いているということではなく、
政府自体も、現状を把握できているか否かということです。
その立場から、先ほど守田さんから提供があった原子力資料情報室からの
アピールを受け止め、
「正しく怖がる」ための根拠となるべき、物的証拠・・・少なくとも食品汚染に関して、
法によって定められた核種のデータ・・・の提示があるか否かを聞きたいと思います。
現時点で、私が発表する文書のポイントをまとめたうえで、
昨晩、守田さんとAさんに送ったメールの内容を、ほぼそのまま、
いまここの皆様に出そうと思います。
ポイント4つ。
①少なくとも3号機からの放射能漏れに関しては、
ウラン、プルトニウムを含む、放射能漏出の危険性が考慮される。
②厚生労働省のウェブサイトから入手された
「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」(参考資料1)では、
原発事故などにおける、ウラン、プルトニウムを含む放射能の迅速測定手続が定められている。
これは、法的根拠に基づいた測定手続きであり、政府にはこの情報がある(ことになっている)。
③事態が事態である以上、少なくとも今後の放射能漏れについては、
セシウム、ヨウ素以外の放射能のデータについても提示が求められるのが当然である。
④政府は、現時点でデータの提示ができなくても、将来にわたってそれらのデータを収集し、
提示する意志があるかどうかを確認されたい。
・・・・・・
(参考資料1)
先に送った、厚労省の「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r98520000015cfn.pdf
は、平成14年のもので、東海村臨界事故を受けて作成されたもののようです。
良く読むと、測定分析の方法の詳細、分析装置の使用条件だけでなく、
測定する機関(県の試験場など)の定めや、
核種ごとの基準値と、規制値についても細かく定められています。
これによれば、緊急時における放射能測定の対象核種として、
セシウムとヨウ素だけでなく、本質的な放射能漏れの危険である、
ウラン、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムなどの核燃料そのものが
漏れ出していることを、迅速にモニタリングすることが定められています。
資料の25ページには、迅速性を旨とする「第1段階モニタリングにおける測定・分析」として、
下記のように定められています。
>1-5-5 第1 段階モニタリングにおける測定・分析
>(1)測定・分析対象核種
>放射性ヨウ素、放射性セシウム、ウラン、プルトニウム及び超ウラン元素のα核種
>の4核種群が主な測定対象となる。防災指針では、これらの核種による周辺住民
>の被ばくを低減するとの観点から実測の放射性物質濃度として別表3に示す指標
>が提案されている。
にもかかわらず、
政府発表では、ウラン以降の核種群について情報提供がありませんし、
この点について測定・分析中であるかどうかの情報提供もありません。
あるいは、そういう情報提供が今後あるかどうかの判断もされていません。
もちろん、非常に重要な情報ですから、
情報の正確性の観点から言って、測定結果の信頼度に対する追試験が
必要である、その他の様々な予期しない事態(装置の故障)などによって、
時間がかかることは分かっています。
でも、少なくとも、「それ」を分析・測定中であるという情報だけは提示してほしい。
そのことが、疑心暗鬼を生んでいる、と。
異様な事態だと思います。
セシウムやヨウ素は、ことここに至っては、瑣末な問題です。
核燃料そのものの放射能漏れこそが、人々が求めている情報のはず。
それが、なぜ公開されないし、公開すべきという声が上がらないのか。
私は、少し疑心暗鬼になっています。
この国の人々は、原発賛成・反対を問わず、タブーを作っている・・。
もはや、核燃料の漏出という「結論」に耳を閉ざそうとしているんではないかと。
もし、規定を越える量が出れば、いろいろと結論が出てしまうためです。
私は、別に秘密を握っているわけでもなんでもなく、
単に、政府の規定がきちんと守られていないような気がする、
と指摘したいだけなのです。
どうか、私の疑念を、杞憂だと言ってください。
特に報道機関に携わる方々に対して、政府にデータの提出を求めるよう、
促していただきたい。
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メール2
先ほどのメールについて、詳細です。
セシウム、ヨウ素に関する調査結果は、すでに公表されていますが、
それ以外の核種の公表が遅れている、というのが私の指摘です。
これは、前者2種と、後者では、分析測定の方法が全く異なるためです。
前者2種は、ガンマ線を放つので、ふつうのガイガーミュラー管などの
放射線測定器で測定ができます。
このレベルでしたら、税関検査なみの設備でできます。
ところが、後者の核種は、もう少し高級な分析装置が必要になります。
(簡単な装置でもできるかもしれませんが、正確さの観点から、
高級な分析装置を使ったほうがよい)
元素分析は、いくつかの方法がありますが、この厚生労働省のマニュアルによると、
ウラン、プルトニウムに関する迅速測定は、ICP-MSを用いることになっています。
ICP-MS は、いわゆる質量分析器です。
質量分析器というのは、物質の分子量を測定する分析装置です。
簡単に言うと、物質をイオン化して電荷を持たせ、
それを電場をかけた空間に放り込むと、電荷と分子量のバランスで、
たとえば、飛行距離の違いなどを検出して、物質の分子量を調べます。
さらに、物質にマイクロ波やレーザーを当てるなどして、
その化学結合を壊してしまえば、元素一個の質量を分析・同定することも
原理的に可能です。
おそらく、マニュアルに載っている測定手順は、このプロセスだと思います。
ICP-MSの価格帯は2500万円~数千万円/1台 ですので、
予算規模の大きな大学・研究所・企業でないと導入できませんが、
販売台数が極めて少ない(日本国内に1、2台とか)ってことはない装置です。
性能にもよりますが、数百台はあるはず。
アジレント社(新興勢力・外資)のホームページで、詳細を説明しています。
http://www.chem-agilent.com/contents.php?id=35074
で、私が、いま、いちばんありそうなシナリオだと思っているのは、
厚生労働省傘下の研究機関で、ICP-MSが止まっているんじゃないか、
ということです。
放射性同位体の分析は、高レベル放射性同位元素取扱法(だったか)に基づいて、
厳重管理した区域内で行わなければならない
(被ばくを避ける、というよりも、バックグラウンドノイズを避けるのと、
廃棄物処理を厳重にするため)ので、
「厳重管理した区域内」にあるICP-MSとなると、台数は限られます。
じゃあ、「厳重管理した区域内」の外からICP-MSを移設すればいいんですが、
そうすると、非常にセンシティブな装置なので、軸合わせとか調整に時間がかかる。
厳密測定なので、装置内部のクリーニングもしないといけない。
まして、停電が頻発するような条件では、到底、実験できない。
そこで、検体の測定機関を他に求めるということが考えられます。
ところが、他の測定機関は、どういう法的根拠で以って、
測定ができるかという問題に直面しますし、検査キットも無いでしょう。
機関の長の立場としては、いったん認めると、
そのまま継続的にその装置を使われることになるでしょうし、
測定結果についても責任を負わないといけなくなるので、
よほどの上級機関からの要請(というか大臣命令)でなくては、従わない。
末端の職員レベルでは身動き取れない状況になる。
役人の論理からして、大臣命令を促すような情報を上に挙げるとは考えにくい。
まして、現在のような状況では、「あえて知らせず」になっている可能性がある。
案外、こんな段階で、分析・測定がストップしており、
政府は現状を把握できていない可能性がある・・・というのが、私の推測です。
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