守田です。(20110320 12:50)
阪神大震災を経験した親しい京都の友人が、他の友人たちと参加しているMLに
現在の原発報道のあり方について、非常に説得力のあるコメントをしてくれました
ので紹介します。なおこの内容は、他の友人のつてで、京都新聞に届けています。
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Aです。
地震・津波・原発の被害、その伝えられる様子に毎日とてもツラく思っています。
私は阪神大震災の時にはちょうど15歳で、東灘区に住んでおり、ほとんど全体
状況が分からない状況だったので、いま、はじめて、こうした社会全体を
揺るがす災害がおきたときにどうなるか、ということを外からみて、日々驚き、
悲しみ続けています。
災害発生当初はメールの流量を減らしたほうがよいのだろうかと思い、
これまで投稿などしてきませんでしたが、新聞を読み、テレビを見ていると、
もうどうしても言いたい!ことができたこと、メディア関連に造詣の深い方もいると
いうことで投稿します。
(1)専門家や政治家のコメントよりも、取材を通じて元になるデータを開示させて
ほしい
(2)原子力安全・保安院「(暫定)レベル5」という災害評価の報道が良くない
と思うこと。以下もろもろ。
「ただちに」アクションをおこすとかそういう話「ではなく」、
なんというか、できごとをめぐって論点を出してみたいという程度のことです。
原発関係のメーリングリストその他のオルタナティブな情報には全く目を通して
いないので、すでに重複する論点である可能性がかなり大で恐縮なのですが・・・・
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新聞、テレビをみていると連日の放水作業をよく報道しています。
なんというか、これが見ていてよくわからない。報道を読んでもよくわからない。
わたしが一番驚いているのは、なぜデータがないのにここまで議論が
できるのかということです。
はじめられるころは、放水作業が功を奏して水位が上がれば「周辺の放射線は
徐々に低下する可能性がある」と報じられている
(『京都新聞』3月18日17版1面)。そして昨日からの官房長官談話などで、放水に
成果があった、というのは「事務本館北」の数値が低下した、ということを根拠に
している。
そこで、この間の、東電発表のモニタリングデータをつなげてみたのが、添付の
エクセルの表です。
表では、「西門」「事務本館北」地域を対象とした数値と、時間、放水行動を
対照させています。どう読み解きますか?
第1に、一目瞭然なのが、計測地点ごとに連続したデータがない、ということです。
最近発表されるのは「事務本館北」と「西門」の二地点の数値が交互に計測
されたものです。
そこから、モニタリング装置を搭載した車で「西門」と「事務本館北」を行ったり
来たりしている様子がうかがえますが、なぜ定点観測ができないのか?
複数地点を検査するのは妥当だけど、これだけ巨大な原発に、モニタリング
装置が一機しかないのか?
各地から放水車を集めるのと同時に、モニタリング装置を集める必要がある
のでは?東電・保安院がデータを出したがらないのはわかりきっているの
だから、記者会見のときにはっきり要求してほしい。
第2に、得られた数値変化の解釈が難しすぎる。
「西門」では、放水を始める前と後でほとんど数値は変わっていないし、むしろ
18日の夜と19日の昼前には急増している。
「事務本館北」の数値が低下したのちも、「西門」の数値は18日の午前と
さして変わらない数値になっている。
もし仮に、放水にそれほど意味がないなら、放水中はほかの作業が制限
されるということと、電源が復旧するときに装置が海水でビショビショだと
余計に困るということと、そもそも作業従事者の皆さんがかなりの危険を
冒して作業をしているということを考えると、やめたらいいのでは?と
思ってしまう。
頑張っているから意味があるのではなく、意味があるけど危険もある作業を
頑張っているから尊いのだろうと思う。
放水の結果と数値に因果関係があるのかないのかはっきりしない。
モニタリングの位置はこれで十分なのか?途中で計測位置が変化した根拠も
不明です。新聞は専門家にコメントをとるのに時間をさくより、議論の基礎と
なるデータを要求したほうがよいのではないか?
このままでは私たちは永遠に専門家に依存したままになります。
専門家と門外漢が共通のスタンダードにできる数値的根拠の開示、これが
任務にされて良いのではないか。
「隠ぺい」以前にそもそもデータが計測されていない。
また『京都新聞』(3月19日朝刊17版3面)では、所内の放射線の数値からは、
懸念される放射能の大量放出は起きていない、と書いてあるけども、それならば
実際に大量放出されたらどの程度、どのパラメーターが変化すると推測するのか
を示してほしい。
実際、このデータだけでは、なんともいいようがない、というのが正直なところ
ではないか。
それゆえ、官房長官や防衛相の「ことば」や専門家の「コメント」で紙面が
埋められていく傾向にあるが、ちゃんと追及して意味のあるデータをださせて、
独自の判断にもとづく「分析」をしてほしいし、読みたい。
膨大な紙面を割かれて報道されているこの放水、書いている人はなにを
執筆の際の判断基準にしているのか?
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原子力安全・保安院が18日の夕方に国際基準に基づいてこの事故の評価を
発表しました。
それは各紙朝刊に報じられましたのは周知のとおりですが、これはちょっと
悪質すぎると思います。
1-3号機はレベル5で、4号機はレベル3、などというように、炉ごとに分離して
評価をするというもので、ここにすでに保安院の善後処理、矮小化の下準備が
開始されているようにみえます。
従前の評価方式にしたがえば個別に評価するとなるのだろうけど、
この同時多発事故ということ自体がそもそも想定外だったはず。
これはそのまま報道するべきでないし、留保をつけるか批判するべきだったの
では?と思う。
念のためいえば、「レベル5とは過小評価でけしからん」、といっているのでは
ありません。結果的に下した評価が問題なのではなく、判断方法に大いに
疑問あり、ということです。
この事故を、「福島第一」単位ではなく、個々の炉の問題に分解できるとして
しまうところに矮小化の意図が明白です。
スリーマイル(2号機)でも、チェルノブイリ(4号機)でも、事故を起こしたのは
一つの炉だったけど、今回は複合していてそれが現実に作業に深刻な影響を
及ぼしているはず、にもかかわらず事故評価を分離。
現実の作業がそれぞれの炉の状況をみつつ全体的に判断しているさなかに、
なぜそんな評価がパスするのか?
『京都新聞』では(『京都新聞』ばかりでてくるのは、僕が『京都新聞』しか
読んでないからです)
3月16日朝刊6面で「事故尺度 福島「レベル6」仏当局見解 上から二番目に」
3月16日夕刊2面で「最悪「レベル7」も 米ISIS見解」として報道をしていました。
なるほど「レベル6」だという海外のコメントをわざわざ載せているのは、
レベル4だといっている自国の機関を暗に批判しているのかな、と思っていたら
まったくそうではなかった。
19日朝刊では、保安院の発表「レベル5」をなんの留保もなくそのまま報道。
翌日の20日朝刊の社説でもそのまま追認。
自分でつい先日報じていた、海外では6だといってるぞ、と他人の意見を
借りてくることすらない。
保安院の区分論が妥当であると思うなら、先の二つのニュースには
いちいち報道する価値はなかったのではないか。
たくさんある意見の一つにすぎないのだから。
なんのための「レベル」判定なのかが全く見失われているように思います。
受験勉強の後遺症なのか?
あげくのはてに、19日夕刊では、福島第一の放射線量排出量の「規模
チェルノブイリの5%」という記事を掲載。
いったいぜんたいウクライナのバロガ非常事態担当相はどうやって日本で
出されている放射線量を計測したのか、この一片の根拠もないコメントが
わざわざ紙面を割いて載せられているのはなぜなのか?
チェーンメール並みの記事を載せるのは本当にやめてほしい。
インターネットと違って新聞はきちんと編集されているというならば、
せめて編集の一貫性と掲載記事のクオリティを保ってほしい。
このままでは保安院による矮小化の片棒担ぎになってしまう。
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「ただちに・・・・ではない」という言葉をこれほど頻繁に聞く機会もないだろうけど、
そもそも原子力事故が、巨視的に見れば「ただちに」おこる被害よりも、
長期間をかけての被害がはるかに数的に大きい問題があるということから目を
そらさせている。
20年後、2005年のWHO/IAEA/UNDPによるレポートによると
チェルノブイリ事故で「ただちに」被害にあったのは労働者約50名。
そしてその後チェルノブイリ事故に関連するものとみられるがん、白血病に
よる死者は約4000名と見積もることができるとされている。
http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2005/pr38/en/index.html
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わずかにすぎないとはいえ、公開されているデータを読むのが手間がかかり
すぎる。すくなくとも、原子力安全・保安院、東京電力、文部科学省のサイトに
立ち寄らなければ、その日に発表されたデータが読めない。不便すぎる。
(IAEAも独自の発表をはじめたが、これは国際機関だから分離していて当然)
ネットサーフィン好きにはいいがそういう趣味のない人にも一目瞭然にする
必要が「ただちに」ある。
東電は形式的には私企業だから原則的には強制はよくないことが、
事故期間中は統合本部を結成しているのだから、必要なデータの公開という
程度なら許容されると思う。
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