明日に向けて(1686)対テロ対策ができない原発を将来的に停める?いやいや重大事故対策すらできていない原発をいますぐ停めるべきだ!

守田です(20190426 10:00)

統一地方選が終わりました。僕も幾人かの方を熱烈に応援して走り回り、多くの方に支持を訴えました。まずはそのお礼を述べさせていただきます。 僕が応援したある方は当選し、またある方は落選しました。悲喜こもごもでしたしたが、多様でかつ違う地域の選挙も経験できてたくさんのことを蓄積もしました。これらについてはもう少し時間をおいて論じさせてください。

● 進んでいないのは「テロ対策」の前段の「重大事故対策」!騙されてはいけない!

今回は原発のことについて書きます。原子力規制委員会が「テロ対策施設が未完成なら稼働中の原発でも停める」と言い出し、多くの記事が出ましたが、本質が捉えられてないからです。 端的にポイントを記します。電力会社各社が「間に合わない」と言っているのは「テロ対策」だけでなく、重大事故の際に放射能の飛散量を抑制するための装置=フィルターベントの設置などでもあります。 なんのことはない。「福島原発事故の教訓を生かす」だとか言って新規制基準の機軸に据えられたはずの「重大事故対策」がまともに行われていないし、さらに「先延ばししたい」と言われているのです。

規制委員会はこの点を言葉の操作でごまかしていますが、マスコミがそれを見抜けない。情けない。失礼ですが言います。マスコミのみなさんは原子力推進当局の言葉を鵜呑みにせずもっと疑ってちゃんとした記事を書いて下さい! 今回、規制委員会が新規制基準(2013年)から5年といい、その後工事計画の審査を終えてから5年と猶予を伸ばしてきたのは「特定重大事故等対処施設」と言われるものです。 メインは原子炉から100m以上は離れた場所に緊急制御室を設置するなどです。ところがここに「フィルターベント」が組み込まれそれが「テロ対策施設」かのように言われてしまっている。ここが問題なのです。

これは規制委員会発行の「実用発電所原子炉に係る新規制基準について」という文章を見ても分かります。(特に6ページ) ここででは、かつては「共通要因による安全機能の喪失を防止(シビアアクシデントの防止)」までしかなかったが新規制基準では「万一シビアアクシデントが発生しても対処できる設備・手順の整理」を足したとされています。 その中に「格納容器の閉じ込め機能の維持」がありベントの設置が含まれ、その次にやっと「テロや航空機衝突への対応」として「原子炉建屋外設備が破損した場合等への対応」が出てきますが、現状ではこの重大事故対策もなされていないのです。

「実用発電所原子炉に係る新規制基準について」 原子力規制委員会 http://www.nsr.go.jp/data/000070101.pdf

「実用発電所原子炉に係る新規制基準について」6ページ

● 規制委員会は「重大事故対策」を「テロ対策」と偽ってきた!

もう少しカラクリを説明しましょう。規制委員会は本来、「テロ対策」ではなくて「重大事故対策」であるフィルターベント設置に、加圧水型原発に限って5年以上の猶予を与えました。 東電などの沸騰水型原発に比べて格納容器が大きくすぐには崩壊には至らないからだなどと説明されていますが、これもまったくの嘘。福島とタイプが違い、西日本に多い加圧水型なら批判は少なかろうと先に動かしたかったから猶予を与えたのです。

その際、沸騰水型では再稼働の条件である「重大事故対処施設」に組み込まれたフィルターベントの設置が、加圧水型では「特定重大事故等対処施設」に組み込まれ、全体として猶予が与えられたのでした。 ようするに新規制基準の大きな軸の一つがないまま稼働している事実を言い逃れるために「テロ対策」にフィルターベントを組み込んで、マスコミや人々を欺いたのです。 ところが資金難から電力会社がこれをも嫌がり、先延ばしにしていて、新規制基準が適用されていない状態が続いているので、先に「テロ対策の再度の延期は許さない」と言い出し、むしろ再度、それまでの猶予を確認したのが今回の真相です。

だとするならば、問題にしなければいけないのは、新規制基準を満たしていない稼働中の原発をすぐに停めることだということがすぐにも分かります。そもそも「期限」を付けてきたことの中にも偽りがあるのです。 規制委員会は「新基準によって事故で放出される放射能量は福島の時の100分の1以下になる」と公言し「事故に際しては5キロ以遠は自宅待機した方が安全」などとも言って、原子力防災を抑圧すらしていますが、その新規制基準など適用されてないのです。

九州電力ホームページより 「テロ対策」となっているのは⑮のみ!

● そもそもベントがあることがおかしい!プラントとして破産しているのだからもう止めるべきだ!

そもそも「新規制基準」による「重大事故対策」そのものもおかしい。重大事故を起こさないことを目指すのではなく、起きることを容認し、「それへの対処をする」と言い出しているからで、原発の安全性を確保できないことの告白だからです。 しかも言葉がすり替えられている。「重大事故」とは「過酷事故(シビアアクシデント)」と言われてきたもので、設計士さんが施した安全装置がすべて突破された状態をさします。そしてその対策の象徴がベントなのです。 ベントは「放射能を閉じ込めるための装置である格納容器を守るために放射能を外に出す」ためのものであって「格納容器の自殺装置」だからです。安全装置とは言えないのです。こんなものが必要な段階でプラントとしてアウトなのです。

規制委員会の図に戻ると「格納容器の閉じ込め機能等の維持」の中にあえて明記せずにベントを組み込んでいますが、これも詭弁です。ベントの段階で「閉じ込め機能」は喪失しているからです。 しかし「格納容器が崩壊するよりまし」とベントを自己容認し、しかも「福島の事故時にはなかったフィルターを付けて放射能量を抑制する」というのですが、そんなもの、やってみないと分からない。確実な保障のないものは安全装置とは言えません。 実際に福島原発2号機ではベントは最後まで開かず、格納容器下部が破損して大量の放射能が漏洩しました。しかもなぜ開かなかったのかだってまだ現場検証ができていない状態なのです。

             ベントの矛盾についてはすべて後藤政志さんから教わりました! 高浜原発視察時に

さらにフィルターがあっても最初に出てくる放射能の希ガスははまったくキャッチできない。最も膨大な量が飛び出してくるにも関わらずです。このため加圧水型では「いつベントをするのかが問題」とされています。 格納容器を守るには早くベントしてしまった方がいい。しかしそれでは危険な希ガスが大量に出てしまうので「できるだけ希ガスをため込んで減衰させてから出した方が良い」とされています。 ではどのタイミングで出すのか。なんと電力会社に「総合的判断(格納容器の損傷の兆候、避難状況等)により」実施することを求めています。しかし緊急時にそんな複雑な判断ができるでしょうか。その点でもこれが安全装置などとはとても言えないのです。

フィルタベント・システムについて
http://www.nsr.go.jp/data/000199919.pdf
「フィルタベントシステムについて」4ページ

● すべての原発をすぐに停めよ!

このようにフィルターを付けようがベントなどあってはならないし、加圧水型ではベントをいつ行うのかの判断も難しいとされているわけで、これで安全が確保されているなどとは到底言えません。 その点で僕は重大事故の発生を容認し、ベントに依存して飛び出す放射能量を減らすとしている新規制基準のもとでの原発の稼働そのものに大反対です。

しかも現状ではその新規制基準すらきちんと適用されておらず、福島原発事故以前の状態がまかり通ったままの稼働が行われているのです。だから原発はすぐに止めるべきです! 問題は「テロ対策」が進んでいないことにあるのではまったくありません。 ぜひこのことをこそ広めて下さい。一緒に声を上げて下さい!

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