明日に向けて(1628)トルコへの原発輸出断念は日本の原子力産業終焉の序曲だ!

守田です(20181205 23:30)

● トルコへの原発輸出断念、その後の報道について

昨日4日に、日本政府と三菱重工がトルコへの原発輸出を断念するという報道がなされました。
最初に報じたのは日経新聞です。続いて東京新聞、共同通信、時事通信などが流し、今日になって産経新聞、日刊工業新聞、赤旗などが報じています。
興味深いのは今のところ、NHK、朝日、毎日、読売などの大手が沈黙していることです。
4日の段階では世耕弘成経済産業相が「現在まさに(トルコ側と)協議を行っている最中だ」「何らかの決定が行われた事実はない」と述べたため、政府からの公式声明を待っているのではないかと思われます。

テレビニュースではいまのところ朝日新聞系列の「テレ朝」が報道を行っています。
「計画を断念する方向で検討していることが分かりました」と慎重な言い回しをしていますが、「トルコでの原発計画は日本政府のインフラ輸出戦略の目玉でしたが、暗礁に乗り上げることになります」と結んでいます。

トルコの原発計画中止を検討か 費用負担折り合わず
テレ朝 20181204 11:54
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000142245.html
https://www.youtube.com/watch?v=sYGRsNNrW8g

おそらくはまだ公式発表に至ってない決定をこの問題を追いかけてきた日経新聞がつかみ、すっぱ抜いたのでしょう。
この間、日経新聞は一貫して原発輸出は困難ではないかという観点からの記事を連投してきたので、その点からも先んじて情報をつかみ報道したのではと思われます。

● 「現地の反対運動も懸念材料」と産経、「原発ビジネスは世界的に見ても厳しい」と日経

さてこれらの記事中でも興味深いのは、安倍官邸に最も近い産経新聞の以下のような指摘です。
「東日本大震災を受けて、安全対策費が上昇。総事業費が当初想定の2倍以上の5兆円規模に膨らみ採算確保が難しいとされていた。
加えて、予定地の周辺には活断層があるとされ、政情不安や現地の反対運動も懸念材料となるなど、23年稼働は厳しい情勢だった」

ポイントがきちんと押さえられていると思います。安全対策費の上昇によって総事業費が2倍以上になったことに加えて、活断層の存在、政情不安とともに「現地の反対運動も懸念材料になるなど、23年稼働は厳しい情勢だった」と「過去形」で書いています。
現地の反対運動=シノップの方たちの粘り強い抵抗が、計画の断念される大きな材料であったことがうかがえます。

原発反対市民集会 2013年11月 トルコ・シノップ

一方で大事なのはこの決定の日本および安倍政権に与える影響です。
この点、テレ朝がインフラ輸出戦略が暗礁に乗り上げることになった点を指摘していることを紹介しましたが、日経新聞は以下のように論じています。

「これまでベトナムやリトアニアで日本勢が交渉を進めていたが、東京電力福島第1原発事故以降の安全対策コストの急上昇や政権交代などで撤回や中断に追い込まれた。
日本だけでなく、原発は高価でリスクの高いエネルギー源としての認識が世界的に広がっている」
「再生エネルギーの普及で、原発ビジネスは世界的に見ても厳しい環境に置かれている。
世界大手の米ゼネラル・エレクトリック(GE)は今秋、経営不振が深刻な電力部門を組織再編し、ガス火力発電部門と、原子力や石炭を含むその他部門に分割すると発表した。
ドイツでもシーメンスが11年に原発事業から撤退した。東芝は06年に米原子炉大手のウエスチングハウスを買収したものの、巨額の損失が発覚し、経営危機に陥った」

日本の原発事業、岐路に トルコで断念へ 案件、英の計画のみ
日経新聞 20181204 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3849942003122018TJ1000/

● 安倍成長戦略の要の原発輸出政策が行き詰まり原子力産業終焉の日が近づいている

日経新聞はさらに原子力産業が極めて厳しい局面にいたっていることを指摘する記事を5日に追加しました。タイトルで原発輸出を「袋小路」と名指しています。

「官民一体で進めてきた原発輸出は袋小路に入った。新設が見込めない国内は事業縮小が相次ぎ、次世代の原子炉開発も暗礁に乗り上げている。日本の原発事業を支える技術力の維持に黄信号がともる」
「原発を敬遠する動きは次世代の技術開発にも影を落とす。日本がフランスと進める次世代原子炉開発で、仏政府は20年以降、計画を凍結する方針を日本に伝えた。
使用済み核燃料を減らす高速炉技術で、自前の高速炉計画を持たない日本にとって大きな打撃となる」
「国内外で原発の新設受注を失う日本メーカーにとって、最大の課題は技能伝承による技術力の維持だ。日本電機工業会の資料によると、日本の原子力従事者はピークだった10年の約1万3700人から16年に約3000人減少。このうち技能職は4割減った」

袋小路の国産原発輸出、三菱重などトルコ計画断念
2018/12/5 2:00 日本経済新聞 電子版
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38552990V01C18A2EA2000/

● トルコ民衆の勝利は日本民衆への大きな贈り物!

これらから私たちがつかみとっておくべきことは、トルコ民衆の奮闘のもとに実現された日本から原発輸出の断念によって、安倍政権の成長戦略の柱が折れ、日本の原子力産業の大きな行き詰まりがもたらされていることです。
その点でトルコ民衆の頑張りは私たちへの大きなプレゼントにもなっています。日本の核の灯を止める展望が開けてきているからです。

安倍政権はなぜ原発輸出を成長戦略の柱の一つとしてきたのか。一つには強いられた選択でもあったのでしょう。いまここで原発を輸出しなければ、日本の原発建設の技術が衰退し、ダメになることが見えていたからです。
しかし一方で安倍政権は常に自分にとって不利なことをまともに見ずに、嘘やはったりで政策を押し通してきた政権です。だからこそ高まる原発輸出のリスクをみようとせず、トップセールスで強引に展望を開こうとした。
しかしビジネスの世界では嘘もはったりも通用せず、結局、原発輸出はどの国に対してもまったく成功せず、ただの一つの成果もあげられないままに袋小路に陥ってしまったのです。
なかでも福島原発事故を振り返りもせずにひた走った結果、瓦解してしまったのが東芝でした。子会社のウェスチングハウス社がアメリカでの原発建設難航で巨額の赤字を出してしまったのです。東芝は原発輸出から完全撤退するも倒産寸前です。

これを見てすでにこの3月にトルコの計画からいち早く丸紅が逃げ出しました。安倍成長戦略に見切りをつけたわけですが、三菱重工も同様に音を上げ、これ以上、安倍政治に付き合えなくなったのでしょう。
その点でトルコ民衆の奮闘は安倍政権に大きなダメージをもたらし、日本の原子力産業に展望も大きく失わせています。私たちはここにこそ注目し、この貴重なプレゼントをしっかりと受け取って生かすのでなければなりません。

成長戦略の柱が完全に折れたこと、そればかりか各社の離脱が開始されたことで、安倍政権は産業界への影響力も間違いなく落としています。「安倍一強」が崩れ、嘘とはったりだけで政策を押し通してきた姿が隠しようもなくなってきています。
この流れをさらに強くするために私たちは残された原発輸出計画である、日立のイギリスへの輸出計画を食い止める奮闘を強めましょう。そのことでこそ日本の核の灯を止める展望は確実に深まります。