明日に向けて(1603)海側遮水壁ができるまで東電は有効な対策を採ることなく海を手ひどく汚染させてきた!-放射能汚染水問題(8)

守田です(20181021 09:00)

放射能汚染水問題の続きです。

● そもそも遮水壁完成以前に膨大な放射能が海に流されてしまった

これまでの連載で、福島第一原発のサイトからいまもなお意図的な放射能汚染水の排出が行われていることを書いてきましたが、より重要なのはそもそも海側遮水壁ができるまで膨大な量の放射能汚染水が海に流されてきたことです。
しかも事故当初、東電はこのことを熟知していながら、できるだけ経費を使わないためにきちんとした対応を行わずに流れるにまかせていました。
意図的な排出とは言えなくても、知っていて止めようとしなかったのですからこれまた犯罪的な汚染水流入の黙認でした。

● 国の排出基準の62万倍の「高濃度汚染水流出」を確認

放射能汚染水問題を時系列に沿って捉え返してみましょう。最初にクローズアップされたのは2011年4月2日のことでした。「高濃度汚染水の流出を確認」と報道されました。
さらに同年5月11日に原子炉3号機の「ピット」と呼ばれる地下の側溝からセシウム134が「一立方センチメートル」あたり37000ベクレルもある放射能汚染水が漏れてしまったと報道されました。国の基準の62万倍ものものでした。
しかしこれらの発表はいずれも「濃度」でしかなされませんでした。総量が問題になるにもかかわらずです。


さらにこの年の暮れの12月4日に汚染水を処理している施設から45~220トンの汚染水が海に流れてしまったと発表されました。

● 少なくとも462兆ベクレルのストロンチウム、4720兆ベクレルのヨウ素とセシウムが2011年に流れ込んだ

この3回に渡る汚染を朝日新聞が独自に精査し少なくとも462兆ベクレルのストロンチウムが海に流れ込んでしまったという試算を行いました。
東電自体は4、5月の汚染水の海への流れ込みで放射性ヨウ素とセシウムが4720兆ベクレル流れ込んでしまったという推計を出しました。
これらの数値は「最低でもこれだけの放射能が海に流れ込んだ」と捉えるべきものです。ようやく目にできたものが推計されただけだからです。
この間も膨大な地下水が汚染水と混じって海に向かっていたのですが、この構造全体にはその後も長期間にわたってメスが入れられませんでした。

● 馬淵氏、空本氏が、東電の汚染水への未対処を暴露

東電はこのことを当初から知っていました。山側から大量の地下水が流れてきて建屋に入り込んで汚染水となることはいわば「常識」とも言える事態だったのです。
当時、民主党政権のもと、事故対策にあたった二人の議員がこれを暴露しています。一つは馬淵澄夫氏の書いた『原発と政治のリアリズム』、もう一つはその馬淵チームの下で動いていた空本誠喜氏が書いた『汚染水との闘い』です。

これらによると事故対策の過程で地下水問題に気が付いた官邸チームが早くから山側に遮水壁を作り地下水の流入を防ごうとしたことに対して、東電が執拗に抵抗し、計画が見送られてしまったというのです。
なぜ東電は抵抗したのか。この段階では事故を起こした東電の資金で対処をなさなければならなかったからでした。東電は海ではなく自社を守るために抵抗し、汚染水漏れへの対処をネグレクトしたのです。
空本氏は国費投入に踏み切らなかった政府をも批判していますが、しかし東電の犯罪性はあまりにも顕著です。

● 選挙における自民党の圧勝後に東電が汚染水漏れを認めた

ではいつから国費を使った対応が始まったのかと言うと2013年7月21日の参院選における自民党の圧勝、民主党の惨敗のあとからでした。なんと東電はこの選挙翌日の7月22日に初めて海への放射能汚染水の膨大な漏れ出しを認めたのでした。


この過程を見ると、選挙前に東電が政府与党となった自民党などと事前に交渉し、自分たちを訴追しないことや、国が対策費を出すのと引き換えに選挙前に事実を発表しないという取引を行ったことが推測されます。
東電はこの後に、重大な事実を小出しに連発していきました。その中で大きなことは、8月2日になんと1日400トンの放射能汚染水が海に流れ込んでいることを発表したことでした。
この間、どれほどの放射能が海に流れ込んだのか。空本氏は自著の中で「約800日間でセシウム137で約1~20兆ベクレル、ストロンチウム90で約7000億~10兆ベクレル、トリチウムで約20~40兆ベクレル」と試算しています。

● 政府が国費の投入を表明

政府はこれに対して8月7日に独自の試算と対策への乗りだしを発表しました。もし政府が8月2日の東電の発表によって事実を知ったのなら、こんな短期間で独自の試算や対策への乗りだしを表明することなどできるはずがありません。
しかも選挙のすぐ後にですから、ここからも東電と政府が放射能汚染水対策を事前に打ち合わせていたことは明らかです。その点で東電は自社の防衛にまんまと選挙=有権者をも利用した可能性が濃厚です。
このように東電の罪は福島原発事故を起こしたことにとどまらないのです。その後の事故対応のあり方もあまりに犯罪的だったのです。

続く