明日に向けて(1591)トリチウムを含む汚染水を濃度だけで規制し薄めて海に流している-放射能汚染水問題(5)

守田です(20181010 23:30)

汚染水問題の続きです。

● 「地下水バイパス」から汲み上げたものの分析からトリチウムの雨が疑われる

前回まで問題にしてきたのは、放射能汚染水の海洋投棄はこれから行われようとしているのではなくて、すでにこの間も意図的な投棄が継続的に行われてきていることでした。
具体的には「地下水バイパス」と言う名の地下水を山側で汲み上げたものの投棄と、原子炉の周りに掘った「サブドレン」から汲み上げたもの、そして原子炉と海側遮水壁の間の「地下水ドレン」から汲み上げたものの投棄のことです。
東電の説明図を再度ご紹介しておきます。以下のページにある二つの図をご覧ください。
http://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watermanagement/

このうち山側に掘られた「地下水バイパス」と原子炉の周りの「サブドレン」は東電の図では汚染源に水を「近づけない」対策のためのものとされ、青色で分類されています。
これに対して原子炉と海側遮水壁の間に掘られた「地下ドレン」は汚染水を海に「漏らさない」対策のものとされ、緑色で分類されています。

前回問題にしたのは汚染源と接する前のものである「地下水バイパス」から汲み上げた水に1リットルあたり120~250ベクレルのトリチウムが含まれていることでした。このトリチウムはどこから来ているのか。雨ではないのか?
だとすると汚染水対策の大前提が崩れます。トリチウムの雨は原発サイトだけにとどまらずもっと広範囲に降り、やがて海に出ることを繰り返しているのだろうだからです。だとしたらまずはどれだけの地域にこの雨が降っているのかを把握する必要がある。

● 排水規制が濃度で行われている矛盾

これだけでも大問題ですが、今回は続いて「サブドレン」と「地下水ドレン」から汲み上げたものがどうなっているのかを調べていてやはり大きな疑問に突き当たりました。
というのはまず問題は排水規制が濃度によってなされ総量規制されていないことです。その濃度基準そのものもこれまで指摘してきたように、EUのトリチウム摂取基準100ベクレルの15倍の1500ベクレルであって大変緩いものでしかありません。

しかし体内に摂取する場合と工場などから排出する場合は量があまりに違ってくる。飲むのはせいぜい数リットル×日数でしょうが、工場からは総量では何トン、何万トン、いやもっと大きな単位で出される可能性があります。
そうなると1リットル1500ベクレルといっても1トン排出すれば1500ベクレルの1000倍になるし1万トンならばさらに1000万倍になるわけで、工場などからの排水は総量を問題にしないと何ら規制したことにならないのです。

また濃度規制では「薄めて排出する」ことも可能になってしまいます。1リットル6万ベクレルを越える汚染水があってもこれに99リットルの汚染のない水を混ぜれば100リットル6万ベクレルになり、1リットルあたりでは600ベクレルまで薄まります。
総量規制がなされないとこの方法でどんなに濃度の高いものであっても薄めて排出することが可能になります。

● 「サブドレン」と「地下水ドレン」から汲み上げたものを一緒にすることでトリチウム濃度を薄めている!

このことを頭に入れたうえで、再度、先に紹介した東電の説明図を参照して欲しいと思います。
この二種類の「ドレン」から汲み上げた地下水は「地下水バイパス」から汲み上げたものとは違って「サブドレン・地下水ドレン専用浄化設備」に送られて処置が施されています。
トリチウムをのぞく多核種の放射能を大きく取り除いて、それから排出されるとされています。

しかし汚染源に「近づけない」対策(青色)に分類された「サブドレン」と汚染水を「漏らさない」対策(緑色)に分類された「地下水ドレン」から汲み上げた水を同じところに集めているのがおかしい。
これは濃度の高い「地下水ドレン」から汲み上げたものと、汚染源に接する前の濃度が低いはずの「サブドレン」から汲み上げたものを一緒にすることで、事実上の「薄め」を行っているのではないか?

ここでさらに東電が示した山側から海側に流れる地下水・汚染水の断面図を見てみると、矛盾がより浮き彫りになります。なぜならサブドレンのうち原子炉よりも山側にあるものは汚染以前のものですが、海側のものは汚染された後のものであるからです。
断面図にも明らかに海側のものは建屋からの流れと接触していることが書きこまれています。となると本来、この海側のサブドレンから汲み上げたものは「漏らさない対策」の対象である「地下水ドレン」と同等に扱うべきなのです。
要するに「地下水バイパス」と「山側サブドレン」が「近づけない」対策(青色)であり、「海側サブドレン」と「地下水ドレン」が「漏らさない」対策(緑色)に分類されるべきで、とくにこの緑色の部分の汚染度や汚染水の総量が問題とされるべきなのです。

しかし実際には汚染される前とされている山側サブドレンと、汚染を受けたはずの海側サブドレンと地下水ドレンを一つのタンクに混ぜてしまい、それで分析が行われている。これはもうはっきりと薄めるための行為を行っているとしか言えません。
濃度規制のもとではこのような姑息な「薄め」が可能になってしまいます。東電はそれで「厳しい自主規制をクリアした」と称しつつ、大量のトリチウムを含む放射能汚染水をすでに海に流し込み続けてきているのです。

続く