2013.09.16

明日に向けて(740)もんじゅでトラブル、道路も寸断・・・自然災害と原発災害双方からの避難準備の強化を!

守田です。(20130916 23:00)

台風18号が日本中を席券しました。とくに京都府の福知山市、京都市などで川が氾濫し、大きな被害が出ています。すでに「明日に向けて」の(734)で、「特別警報が出たら「ただちに命を守る行動」を!」というタイトルで水害対策を呼び掛けましたが、その「特別警報」が今回、初めて京都府と滋賀県に発令されました。
この間、明らかに雨の降り方、気象の変わり方が従来と変わってきています。原因として温暖化などが考えられていますが、ともあれ事実としておさえるべきことは、災害に対するこれまでの想定が次々と突破されてしまっていることです。災害対策の見直しが必須です。
また、その上に重要なのは、今回の台風災害でも原発サイトでのトラブルが重なった点です。自然災害と原発災害を同時に起こるものとして備えねばならない必然がより大きくなりました。この点を分析するために、今回は、現にトラブルが継続中のもんじゅの問題について分析しておきたいと思います。

もんじゅに起こったのは、もんじゅの原子炉の状態などをモニタリングし、原子力規制庁下の原子力安全基盤機構(JNES)に自動送信するシステムにトラブルが生じ、データ伝送ができなくなったことです。16日午前2時56分に発生しました。
同時に台風18号による2か所の土砂崩れが重なりました。1か所はもんじゅから約2.5キロ離れた県道上ですが、もんじゅにつながる一本道であるため、もんじゅへのアクセスが遮断されました。さらにもう1か所、もんじゅ敷地内の正門付近でも土砂崩れが起きました。
このためシステムトラブルを修理するエンジニアが現場に入れない事態が生じてしまいました。これを書いている16日23時現在、なんとかエンジニアが入れたようですが、すぐさま修理を行うことができなかったこともあって、システム回復の目途が立っていません。このためもんじゅは今、監視体制が手薄な状態にあります。

問題のシステムは「緊急時対策支援システム(ERSS)」と名付けられたものです。これは原発事故などの緊急時に、当該の原発から送られてくる情報を解析し、問題のプラントの状態や事故の進展を予測するシステムです。
「情報収集システム」「判断・予測支援システム」「解析予想システム」から成り立ち、このうち「情報収集システム」が各原発サイトからの情報の自動送信システムと、受信システムで構成され、後者は、経産省の安全保安院・緊急時対応センター内に設置されています。
あとの2つは、入力された情報と、これまでデータベースに蓄積された情報を比較・解析し、事故状態の判断と、その後の進展予想を計算するものです。前述の原子力安全基盤機構(JNES)におかれています。

このシステムが立ち上げられたのはJCO事故による原子力災害法の制定と、防災基本計画改定を契機としています。重大事態が発生した場合の現状把握と、瞬時の予測が目指されました。さらに新潟県中越沖地震を踏まえ、大規模自然災害発生時にも、プラントから情報が伝送されるようになりました。
また中国電力管内のダムでデータ改ざんがされたことを契機に、原子力事業者の「隠す行為」へのけん制効果をも狙ったものとして、情報の常時自動転送システムが作り出されたのです。
ところが福島第一原発事故に際しては、全電源が喪失されたため、このせっかくのシステムがダウン。もっとも重要なデータが得られませんでした。このため、原子力規制庁は、同庁発足後に最重要課題としてこのシステムの運用改善に取り組み、昨年9月に同システムの「運用マニュアル」を策定しました。以下にURLを示しておきます。

緊急時対策支援システム(ERSS)における運用マニュアル(内規)
平成24年9月原子力規制委員会 原子力規制庁
http://www.nsr.go.jp/activity/bousai/data/120919_erss00.pdf

ところが、今回、このシステムのうちのもんじゅからの送信が途絶えてしまったのです。システム側からみれば、もんじゅの様子がまるで分らなくなってしまったことになります。
これに対して、原子力規制庁は、もんじゅを管轄する原子力開発機構に対し、電話やFAX、メールなどでデータを送るように指示したとのことですが、システム全体のことを少し調べてみると、それではまったく意味がないことが見えてきます。
というのは、さきほどのマニュアルのP25~27、「表1―3 研究開発段階発電用原子炉施設 常時伝送データ一覧(もんじゅ)」をみれば明らかなように、常時伝送情報は約140項目にも上るからです。

もんじゅで何らかのトラブルが起こった時、これらの数値に異変が記録され始めます。それがリアルタイムで収集されて、データベースとの照合のもとでの計算に回され、ただちに現状把握や、予想がはじきだされるわけです。
しかし140もの項目について、電話・FAX・メールなどを使っていては、膨大な時間がかかってしまいます。あるいは情報の誤記、ご伝達なども生じやすい。それが重大な間違いであれば、たちまち計算ミスになり、現状把握も予測も間違ってしまうことになる。
そのため、常識的に考えて、非常時には、電話・FAX・メールなどで代替できるシステムではないのであり、それを行っている現状は、事実上、システムが死んでいる状態なのです。

もちろん、もんじゅそのものにトラブルがない状態であれば、システムもとくに威力を発揮せず、計算が行われなくても問題はありません。だから電話などでのんびり情報を送っていても問題にならないのかもしれません。
このシステムは、非常時にこそ期待された本来の力を発揮するように設計されたものだからです。ということは現状のもんじゅは、非常な事態になった場合にそれを把握するシステムそのものがダウンしている状態にあることになります。
その意味で、現在、炉心などに何らかの危険が迫っているという兆候があるわけではありませんが、非常事態時のモニタリングシステムがダウンしているという形で、危険な状態におかれていることをみておく必要があります。過去に1万点以上の点検漏れのあったずさんな管理のもんじゅがです。

さらにこうしたシステムのダウンを、すぐに直しにいけないというのは、もんじゅの決定的な脆弱性のうちの一つです。それはもんじゅをはじめ、日本の多くの原発が、過疎地に建てられてきたことに孕む構造的脆弱性でもあります。
これでは原子炉にもっと深刻な何かが起こった時、たとえば福島原発事故のように、自然災害の中で、電源喪失などが起こった時、すぐに現場に急行して対応することができない可能性が大であることを物語っています。
今回はたまたま土砂崩れが2か所ですみましたが、もっと多発する可能性があります。いや、今回の降雨で地盤が緩んでいるために、可能性は確実に高まっていると言えます。

これらから言えることは何か。一つにこのシステムが復活するまで、もんじゅに対しては最大級の警戒をしなければならないということです。今、事故があったら、国の側のシステム的な防備はまったく手薄です。
そのため危機の兆候があったら、ただちにできるだけ遠くに逃げた方がいい。事故の状態や進展の方向性を計算するシステムがダウンしているのですから、どんな兆候でも対応した方が無難です。
もんじゅのお近くの方は万が一の観点に立って、避難準備を行ってください。またもんじゅで何かあった場合は、通常の原発よりも危険ですから、僕のいる100キロ圏内に入る京都市などでも万が一の観点に立った備えをした方が良いです。

さらにもう少し長いスパンで見るならば、今後、自然災害と原子力災害の複合事態を想定した対策の強化を図る必要があります。対策の大きな柱が避難計画ですが、自然災害の中での原発災害からの避難を考えなくてはいけない。というよりも、今後、私たちは自然災害に見舞われたときに、常に原発災害を意識する必要があります。
台風や豪雨、竜巻などが、原発を襲うことを嵐が来る前から想定しておく必要があるということです。そのためには水害で避難するときには、さらに原発災害で避難することが重なることも想定して行動した方が良い。実際に、福島第一原発事故のときはそうだったのですから。忘れ去られがちですが、これほど恐ろしい実例はありません。
もちろんそれは非常に困難なことですが、平時に可能な限りの対策を練っておけば、その分だけ非常時に命を守れる可能性を広げることができます。まずは自然災害と原発災害の双方について、基礎的なことを知っておくこと。学習を深めておくことが大事。さらに双方を想定した避難計画を各自でたてておくことがとても重要です。

気象庁は、特別警報が出たとき、私たちに「直ちに命を守る行動をとる」ことを求めていますが、そのときは同時に、お近くの「原発の今」に十分な警戒を払い、直面する水害に、原発災害が重なりうることをも意識して行動しましょう。
そのための準備、訓練を重ねていきましょう。かっこたる信念とリアリティを持ち、自然災害対策+原発災害対策を進めていきましょう。

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