2013.07.09

明日に向けて(705)原発新基準はどこがおかしいのか・・・1

守田です。(20130709 23:30)
                                                        昨日8日に原発の新しい規制基準が施行されました。これにあわせて電力4会社が5原発10基の再稼働を申請しました。北海道電力の泊1~3、関西電力の大飯3、4高浜3、4、四国電力の伊方3、九州電力の川内1、2です。
九州電力はさらに12日に玄海3、4の申請を行うとしています。また東電も、柏崎6、7を申請しようとしています。

これらの電力会社の申請は原子力規制委員会の足元をみたようなものになっています。というのはこれらの原発、どれもが新基準を完全には満たしていません。にもかかわらず申請が相次いでいるのは、規制委員会が現状で条件を満たしていない大飯原発の運転継続を猶予期間を設けて認めたからです。
初めから新基準のもとでの規制の弱さが見えてしまった感じですが、懸念すべきことは、マスコミなどの論調が「新基準をしっかり守れ」という方向などに流れて、新基準の限界の批判的捉え返しが後景化してしまうことです。

規制委員会は、電力会社とは利害を異ならせており、古い原発の稼動を認めなかったり、「活断層」を「厳しく」評価するなど、電力会社の利害とぶつかっている面もあります。しかし寄って立っているのは「危険な原発をとめ、安全な原発を動かす」という立場です。
新基準が安全と危険を分けるものとされているわけですが、では新基準は安全性を本当に担保できているのでしょうか。全く否です。新基準のもとでの運転には大きな危険性が孕んでいます。にもかかわらずこのままでは新基準をパスすれば、原発が安全であるかのような幻想が生まれてしまいます。
これを捉え返すために必要なのは新基準の技術論的検証です。すでにこのことを、僕は元東芝の格納容器設計者、後藤政志さんの講演のノートテークを通じて提示してきましたが、昨日の再稼動申請を踏まえて、再度、まとめ的に論じていきたいと思います。なお長いので2回に分けます。

今回の新基準の最も大きな特徴は「過酷事故対策」を盛り込んだことです。規制委員会はこの重要な点を、過酷事故を重大事故と言い換えることで、あいまいにしだしている面がありますが、過酷事故とは何かというと設計上の想定を超えた事故のこと。設計段階での考察を突破された状態です。
何よりも問題なのは、それでも対策を施せば安全性が確保できるという幻想が振りまかれていることです。そんなことは技術論的にいって断じてありえない。というかすべての安全装置が突破された想定できない状態こそが過酷事故なのです。この意味は非常に大きい。

もう少し具体的に見ていきましょう。設計上において原発の安全性をもっともよく担保しているものは格納容器だそうです。この容器は普段は大した意味をなしていない。炉心が損傷する深刻な事故が起きたときに、放射能を閉じ込めるための装置として初めて積極的に働くのです。
安全思想の上から重要なのは、事故が起こるとすべてのバルブが閉まり、密閉されるように設計されていることです。このことで万が一の事態があっても、放射能を閉じ込められるということが原発の安全性を担保するとされてきたのです。
ところが福島原発事故ではこれが突破されてしまった。水素が漏れて爆発が起こったり、格納容器の圧力が高まり、ベントなどをしたものの、数箇所で穴があいてしまいました。
となれば、本来、格納容器を作り直すことが必要なのです。壊れてはならないものが壊れたのだから設計思想が崩壊したのであって、もう一度、一から作り直さなくてはいけない。にもかかわらずこの重大な本質問題を避けて、弥縫策で原発の再稼動を容認しようとしているのが新基準です。

では新基準が無視しているものとは何なのでしょうか。まずは格納容器の抱えている構造的欠陥です。先にも述べたごとく格納容器は炉心の重大事故時に、自らを密閉して放射能を閉じ込めることを最大の任務としています。
ところが炉心の加熱への対処のためには、水をどんどん投入しなければなりません。全てのバルブを閉めて密閉性を確保しながら、それとは反対にバルブを開けてどんどん外から水を入れなくてはならない。ここにもともと格納容器が、密閉性を実現できない構造的欠陥があります。

さらに問題なのは中で温度があがり、ガスが発生して圧力が上がると容器が崩壊の危機に立つことが設計後にわかったため、後づけで「ベント」という装置が取り付けられてきたことです。放射能を閉じ込めるための容器が、自らを守るために放射能を抜く装置を持っている。致命的な欠陥です。
しかもベントは非常用のバルブを開けることで初めて成立する。しかしこのように非常時に何かの作動させてはじめて危機が回避されるというのも、安全思想上、多きな問題があるものです。その機器が壊れて動かなければ安全性が破綻してしまうことになるからです。実際、ベントのバルブはうまく開きませんでした。
もう一点、ベントで放出される放射能を漉しとるためにフィルターをつけるとされていますが、たくさんのものが出てくれば、フィルターは抜けてしまう可能性があります。これまた確実に放射能を漉しとることなど保障されない装置でしかないのです。

安全性の確保は、機会が壊れたときにどうなるようになっているかにかかっています。壊れたときに安全装置を起動させるようにしていると、その安全装置の故障というリスクをかかえることになる。ベントのバルブが開かなかったことなど、最たる例です。
これの反対にはどのようなものがあるか。例えば鉄道の貨物列車などでは長い車両のブレーキをエアでつないでいるそうです。そしてブレーキペダルを踏むと、エアがかかってブレーキが効く・・・のではなく、反対にエアがかかっている状態ではブレーキが解除されているようになっているのです。
そうすると何らかの故障にみまわれてエアが止まってしまうと、自然にブレーキがかかることになる。安全装置が故障すると、列車が止まるように出来ているのです。原発にはこうした仕組みがない。安全設計になっていないのです。

続く

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