2012.09.03

明日に向けて(538)
チェルノブイリ―大惨事が人びとと環境におよぼした影響(上)

守田です。(20120903 17:00)

1日に山水人に参加し、小浜の明通寺住職中嶌哲演さんと対談させていただきました。中嶌さんの若狭原発今昔物語に聞き惚れてしまいました。このことはまた報告を書きたいです。またそのあと幾つかのライブも聴いてきました。素晴らしいパフォーマンスが多かったですが、とくに夜になって行われた、さこよさんのライブがすごかった。講演させていただいて、ライブもきけてしまって、山水人への参加はいつもとてもお得です。

アーティストのPIKAさん、マーリンさんともお会いして色々とお話ができました。非常に意義深い時間を過ごせました。みなさん、山水人にはいろいろな出会いがあります。まだまだ宴は続くのでどうぞお越しください。なお本日9月3日の夕方からは、映画監督の鎌仲ひとみさんが来られます。昨年、トークでご一緒し、なぜか?気功話で盛り上がってしまったのですが、僕もこれから鎌仲さんにお会いするためにまた山にあがろうと思います!

さて本日の話題に移りたいと思います。今回、記事のタイトルに使ったのは、2009年にアメリカで出版された書籍の日本語訳の題名です。英語のタイトルは、“Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment”です。旧ソ連でゴルバチョフの科学顧問を務めたロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士を中心とする研究グループがまとめ、ニューヨークアカデミーオブサイエンスから出版されました。目下、日本語訳が進行中で、僕の友人や、内部被曝問題研で知り合ったお仲間も参加しています。訳ができたら、岩波書店から刊行されることになっています。

前々からこの書物のことを詳しく紹介したいと思っていました。なぜならこの中でチェルノブイリの犠牲者(1986年から2004年の推計で今後亡くなりうる数も含めたもの)が98万5千人になることが明らかにされているからです。衝撃的な数字です。

これに対して、2006年にIAEAなどが中心になって行ったチェルノブイリ・フォーラムで出されたのは、今後、死亡する数も含めて4000人というとんでもなく過小評価された数字でした。(これまでの死者60人、今後のがん死者3940人)もともとこれはIAEAが2005年に発表した数字で、轟々たる抗議がなされ、IAEAと密接な関係にあるWHOが数ヵ月後に9000人と訂正を行ったいわくつきのものでした。

しかしWHOの修正でいよいよその信ぴょう性が危ぶまれるなか、グリーンピースが組織した国際的な調査で、ウクライナとベラルーシの合計で14万人が死亡という発表が同じく2006年になされました。ただしグリーンピースは依然、調査の継続が必要であり、結論づけるのは早計だとのコメントも付していました。

この間の詳しい経緯を、京都大学の今中哲二さんが書かれているものがあるので紹介しておきます。
「チェルノブイリ事故による死者の数」今中哲二(初稿2006年8月)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/tyt2004/imanaka-2.pdf

この中で今中さん自身は、推計が非常に難しいことを前置きした上で、「私の勘では、、最終的な死者の数は10 万人から20 万人くらい、そのうち半分が放射線被曝によるもので、残りは事故の間接的な影響」と述べています。

ところでIAEAなどと違い、信頼できる組織であるグリーンピースが推計した死者数が14万人であったことに対し、この2009年の報告が98万5千人と非常に大きな差異が出てきている理由は、主に扱った原典の違いにあるようです。というのは欧米の科学者が集って行ったグリーンピースの調査に対し、この調査では、旧ソ連の多数の科学者の文献が扱われました。その多くがロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語で書かれていたため、英語圏の科学者には読めないものが多かったのです。しかしその報告こそ、被災者に最も近くで寄り添い、健康被害とともに向き合ってきた中で書かれたものであって、被害の実相をよりリアルに記したものでした。

そうした文献が15万点以上あると言われ、その中からこの調査では5000点の文献が使われているそうです。その中の多くのものが英語圏、西側には初めて紹介されるもので、そのために被害の事実がより克明に明らかにされることになったのでした。

なお現在、進行中の日本語訳は、完成した章から「暫定版」としてネットにアップされています。以下のページから読むことができます。またここから英語の原点を全文ダウンロードすることもできます。

チェルノブイリ被害実態レポート翻訳プロジェクト
http://chernobyl25.blogspot.jp/

ちなみに、98万5千人と推定されるこの死者数に対し、日本政府はなんと首相官邸ホームページにとんでもない数字を発表しています。問題のものは、同HP内の「東電福島原発・放射能関連情報」と題されたページの中の「原子力災害専門家グループ」にある「チェルノブイリ事故との比較」という文書です。「平成23年4月14日」付で出されています。全体として短い文書ですが、死亡に関して書かれている部分を抜粋します。

「1原発内で被ばくした方 *チェルノブイリでは、134名の急性放射線障害が確認され、3週間以内に28名が亡くなっている。その後現在までに19名が亡くなっているが、放射線被ばくとの関係は認められない。」

「2事故後、清掃作業に従事した方 *チェルノブイリでは、24万人の被ばく線量は平均100ミリシーベルトで、健康に影響はなかった。」

「3周辺住民 チェルノブイリでは、高線量汚染地の27万人は50ミリシーベルト以上、低線量汚染地の500万人は10~20ミリシーベルトの被ばく線量と計算されているが、健康には影響は認められない。例外は小児の甲状腺がんで、汚染された牛乳を無制限に飲用した子供の中で6000人が手術を受け、現在までに15名が亡くなっている。」
http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g3.html

あまりにひどい!絶句してしまうような大うそです。IAEAですら今後の死者をあわせた犠牲者数は4000人になると発表していたのに、今後予想される死者数を意図的に除外し、死者数を、原発内にいた47と、子どもたちの15人に限定してしまっている。合計すると62人ですが、IAEA報告のさらに上をいく大ウソです。

ちなみにこの大ウソは次の二人の名のもとに発表されています。

長瀧 重信 長崎大学名誉教授
(元(財)放射線影響研究所理事長、国際被ばく医療協会名誉会長)
佐々木 康人 (社)日本アイソトープ協会 常務理事
(前(独) 放射線医学総合研究所 理事長、前国際放射線防護委員会(ICRP)
主委員会委員)

このお二人の名と、ここに出てくる組織には十分に注意するようにしましょう!
けして騙されてはいけません。

続く

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