2013.05.18

明日に向けて(679)放射性トリチウムなどが大量に海洋投棄されつつある!

守田です。(20130518 23:30)

橋下発言の余波はまだまだ続いています。橋下氏はなんとしても辞任していただかなくてはなりませんし、さらに進んで安倍首相の歴史認識も正さなければなりません。そのため、まだまだこの問題を論じなければと思っています。
ただそうしてる間にも、東京電力がとんでもないことを推し進めつつあります。福島原発サイトにたまった汚染水の海洋投棄です!その場合、膨大な放射性トリチウムをはじめとした放射性核種多数が投棄されてしまいます。ただでさえ大変なダメージを受けている海がさらに壊滅的に汚染されてしまいます。
何よりも、この事態を未然に防ぐために、みなさんの注意を喚起すべく、この記事を書いています。

このところ東京電力が直接的に進めているのは、原子炉建屋に流れ込む前の地下水を井戸から組み上げ、海洋放出することでした。このために地元漁業関係者の説得を行っていますが、今のところ、東電をとても信用できない漁民の方たちから拒絶を受けています。
東電が問題にしているのは何かというと、原子炉が崩壊しているため、核燃料を冷やすために炉内に入れて汚染された水を回収する際に、周辺から流れてくる地下水がまじってしまい、結果的に汚染水の量が増えるので、地下水の流入量を減らしたいということです。
ただし、物理的に原子炉を直して、外から地下水が入らなくすることは不可能であるため、炉よりも山側に井戸を掘り、そこで地下水を汲み上げて直接、海に放流するというのです。

しかし本当にこの地下水は「周辺の河川と変わらないレベル」なのでしょうか。漁民の方たちが疑っているのも第一にはこの点です。何せこれまで繰り返し嘘をついてきた東電のことですから、とても信用などできない。
ちなみに、グリーンピースジャパンは、おしどりマコさんの取材から、この地下水の分析を行っているのが関西電力傘下の企業であることを突き止め、汚染がないなどとはまったく信用できないとして、汚染水放流反対の署名運動を開始しています。
僕もこれは正しい分析だと思います。東電の言う「安全」などいつも信用できるものではないですが、今回にいたっては、東電が「第三者機関に依頼している」といったその相手が、関電傘下の企業、身内なのです。その調査で、安全性が確保されるなど、到底信用できません。

その意味で、まずは地下水の投棄を含めた一切の汚染水の海への投げ捨てに反対しなければなりません。
以下、グリーンピースジャパンによる署名の呼びかけのページをご案内しますので、可能な方はぜひお願いします!僕もすでに署名しました!
http://www.greenpeace.org/japan/ja/Action/TepcoWater/

さて、僕が注目してきたのはその先です。東電は地下水の投棄だけを狙っているのかというと、まったくそうではなくて、新型の浄化設備「ALPS(アルプス)」を稼働させ、これまでよりも多くの放射性核種を取り除いたとした上で、処理後の汚染水の海洋投棄を目指すことをすでにこれまでにも公言しているからです。
アルプスはすでに3月30日から試験運転を始めています。東電は約4ヶ月の試運転で性能を確認し、本格稼働させるとうたってきました。となると8月後に本格稼働が始まることになります。つまりそれ以降に汚染水の海洋投棄を始めたいのです。
その点から考えると、今回の地下水の海洋投棄は、汚染水全体の海洋投棄に向けた地ならしの位置が大きいと思われます。

しかしアルプス稼動後の汚染水の海洋投棄という計画には非常に大きな問題があります。というのは東電はアルプスの稼働によって、これまで除去できなかった62の放射性核種が除去できるとうたっています。しかしそれならば現在の汚染水に含まれている62の核種の濃度を明らかにし、アルプス運転後に実際にどれだけ除去したかを明らかにすべきですが、東電はその点は公表しようとしません。
なぜか。この間、東電は意識的に汚染をセシウムだけであるかのように世論誘導してきましたが、アルプスの全性能を表にだしてしまうと、同時に、すべての汚染の実態も見える化してしまうからです。しかしこの点を明らかにしない限り、アルプスの性能は検証されたことにならない。結局、62の核種は本当に除去されたかどうか十分に検証されないまま投棄されてしまう可能性があります。

さらに大きな問題は、このアルプスによっても放射性トリチウムが除去できないことです。これは非常に重要です。トリチウムとは水素の同位体であり、化学的には水素とまったく同じように振舞う物質です。そのため扱いがとてもやっかいです。
酸素と結合すればすぐに水になってしまうし、他の有機化合物の中にも容易に入り込んでしまいます。そのため人体や生物の中に本当に容易に入り込んでしまいます。そしてそこでβ線を出して崩壊するのです。

しかもトリチウムは放射性物質としての危険性、放射線を出すこと以外の危険性も持っています。生物のDNAに特異な影響を与えるのです。DNAとはご存知のように遺伝子のことです。二重の鎖になっており、その中に4つの塩基、アデニン(A) , チミン(T),グアニン(G) ,シトシン(C)があって、組みを作って遺伝子情報を編み上げています。
重要なのは、この塩基のうち、A-T、G-Cという塩基の対が、水素結合という結びつきをしていることです。水素は例えば水などの有機化合物を作るときには、酸素と軌道上の電子を共有しあう形で結合を遂げます。これを共有結合といいます。ところがこうして共有結合した水素と、他の電子の間に引力のような力が働く結合方式があります。電気的に陽性の水素と、陰性の原子の間に働く静電気的な力で、これが水素結合と呼ばれます。DNAの塩基の対同士は、この力によって結合しています。
ところがここにトリチウムが入り込むと、β線を出して崩壊し、ヘリウムにかわってしまうので水素結合が働かなくなってしまうのです。そうするとDNAの塩基の結合が切れてしまうことになります。放射線があたることによってではなく、そこに水素として入り込んだトリチウムが、他の物質に変わってしまうことにより、切断が起こるのです。

このためトリチウムは、放射性物質として以外の大きな生物に対する危険性があることがわかります。ところがこの点が、まったく評価されておらず、トリチウムの危険性は、主に崩壊によって発生するβ線のエネルギーによってはかられてしまっているのですが、エネルギーが非常に弱いため、危険性がとても小さく見積もられているのです。
それに基づいき膨大なトリチウムを「法令水準以下である」として海洋投棄しようとしているのが東電の作っているシナリオです。

なお新聞各紙を読んでいて、まるでこの東電の思惑を代弁するような、ある種、唖然とする社説が掲げられていることを知りました。掲載したのは読売新聞です。「福島第一原発 地下水の対策は焦眉の急だ(5月14日付・読売社説)」というタイトルの記事です。
ここでは東電が漁民の方たちの説得に失敗したことが述べられ、「地下水放出の安全性、重要性について、東電は粘り強く説明しなければならない」としています。これはいくらなんでもおかしい。東電が説得できない内容をどうして先に読売新聞が知っているのでしょうか。本当に安全かどうかを検証するのが「マスコミ」の役割だというのが建前なのではないのでしょうか。

また次のような主張も出てきます。「東電の検査では、地下水には放射性水素(トリチウム)などが少量含まれる。地表の汚染物質が雨水とともに浸透したらしい。ただ、1リットル当たり最大450ベクレルで、世界保健機関(WHO)が定める飲料水の水質ガイドラインの同1万ベクレルよりはるかに低い。」
この1リットルあたり最大450ベクレルという数字の出処が僕はまだよく把握できていないのですが、しかしそれだったら、東電の言う「周辺の河川と変わらない」という主張が早くも崩れることになってしまいます。この点もこの記事はかなりおかしい。

さらに極めつけは、結語が次のように結ばれていることです。「福島第一原発の長期的かつ総合的な汚染水対策も欠かせない。汚染水は、敷地内の貯蔵タンクに保管中だが、汚染されたままでは漏出事故などが心配だ。いずれ保管場所も足りなくなる。まずは、試運転中の汚染除去装置を完成させ、安全に「水」を保管できるようにしたい。さらに、安全なレベルにまで処理した水については、海洋に放出する必要性も生じよう。今後の重要な検討課題である。」
一読したときは目を疑いました。東電の広報のような主張だからです。なぜアルプスの稼働で「安全なレベルにまで処理できた」水ができると言うのでしょうか。この社説はそうした検証をまったくとばして、東電の主観的シナリオに沿った主張を展開しています。あまりのひどさに唖然とします。なお全文のアドレスを記しておきます。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130513-OYT1T01392.htm

この読売新聞の社説を読むと、アルプスによる「除去」の後の汚染水の海洋投棄は、東電だけでなく、政府や原子力村が狙っている既定の方針なのではないかという強い疑惑が持ち上がってきます。それでなければこのような社説が出てくるわけがないと思えるからです。
そもそも読売新聞が、かつてアメリカの強い意を受けた中曽根康弘氏と結合し、日本に原子力発電を持ち込むことに暗躍してきたことなどから考えても、この社説からは、東電だけでなく原子力推進勢力が、事故処理の大きな暗礁である汚染水問題のクリアを、もっとも安易な海洋投棄ですり抜けようとしている意志が見えてくるように思えます。

しかし先にも述べたように、このような体制のもとでの海洋投棄であれば、放射性核種のどれだけが除去されるのか、まったく保証が得られません。さらにトリチウムは、危険性が非常に低く見積もられたまま、膨大に捨てられてしまいます。
そうなれば海の死滅の度合いは今後、どんどん拡大することになります。なぜか。汚染水はこれから何年も何年も出続けるからです。炉内を冷やし続ける限りです。せっかく今はまだ、炉内ないし汚染水の中に残っている放射性物質の多くが海に投げ込まれてしまうことになります。ものすごい規模の汚染が、これからさらに重ねられようとしているのです。

しかもそうなった場合、汚染物質はさまざまな形で私たちのもとに帰ってきます。水分子の中に入り込んだ水素としてのトリチウムは、海上から蒸発した水蒸気の中に入り込み、雲になって流れてきて、雨になって地上に帰ってくるでしょう。そうなればトリチウムの雨が降ることになります。
また海の中のあらゆる生物の中にトリチウムは容易に入り込むので、海産物の中にどんどん混入していき、食べ物のとなって私たちのもとに帰ってくるでしょう。危険性を感じて食べない人も増えるかもしれませんが、圧倒的多数の人は海産物を食べ続けます。そうしてたくさんの人々が被曝してしまいます。その影響たるや本当に恐ろしいものがあります。

この汚染水の海洋投棄の危険性をどうか多くの人に伝えてください。そうして東電の一挙手一投足を監視し、危険な海洋投棄に反対していきましょう。
たとえすでにどれほど海が汚染されてしまっているのだとしても、これ以上の汚染を私たちは食い止めなければなりません。それは私たちの未来世代への義務だと僕は思うのです。

なお関連記事として以下をご参照ください。

明日に向けて(654)福島原発汚染水漏れを考察する・・・露顕したのは杜撰さとストロンチウム隠し?
http://toshikyoto.com/press/73

明日に向けて(655)福島原発汚染水漏れの考察(2)・・・問われるのは現場の杜撰さに主体的に向き合うこと
http://toshikyoto.com/press/734

明日に向けて(656)福島原発汚染水漏れの考察(3)・・・隠されているトリチウムの危険性
http://toshikyoto.com/press/737

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