2013.04.23

明日に向けて(662)今一度、低線量被曝の危険性と向き合おう!

守田です。(20130423 23:30)

福島第一原発の現場の杜撰さが、次々と明らかになっています。
ネズミの感電によって引き起こされたクーリングシステムのダウン、そして汚染水の貯水槽からの相次ぐ漏れ出し、昨日はさらに冷却装置の変圧器内に、新たにネズミ2匹の死骸が見つかり、点検のため東電が自らプールの冷却を4時間ほど止めなければならない事態が発生しました。
詳しくは以下の記事をご覧下さい。

乱雑ケーブル 野ざらし配管 福島第一 弱点あらわ 相次ぐトラブル
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013042302000129.html

こうした相次ぐトラブルの発生に対して、この間、僕はこの事態をいかに捉えるのかを明らかにしてきました。
一つにはトラブルの発生を主体的に捉えること。つまり東電をなじるだけではダメで、事故がまったく収束しておらず、私たちが今なお危機に直面していることをこそしっかりと把握して、避難訓練の実施など、自らを、そしてまた周りの人々を守るための行動に立ち上がらなくてはならないということです。
二つには、こうしたトラブルの発表の中には、常に東電が次にやろうとしていることが隠されてもおり、その点を見抜くことが必要であること。今回の場合は、汚染水の海洋投棄が狙われている点を見据えていかねばならないことです。とくにその場合は、放射性トリチウムが除去もせずに投棄されようとしており、この危険性に注目しなければなりません。

これらについて、詳しい内容を知りたい方は、以下の3つの記事を参照してください。

明日に向けて(654)福島原発汚染水漏れを考察する・・・露顕したのは杜撰さとストロンチウム隠し?
http://toshikyoto.com/press/731

明日に向けて(655)福島原発汚染水漏れの考察(2)・・・問われるのは現場の杜撰さに主体的に向き合うこと
http://toshikyoto.com/press/734

明日に向けて(656)福島原発汚染水漏れの考察(3)・・・隠されているトリチウムの危険性
http://toshikyoto.com/press/737

とくにトリチウムの危険性について詳述した(656)を参照して欲しいのですが、ある意味でここには低線量被曝の危険性の問題、ないしそれが非常に過小評価されている問題がダイレクトに現れているとも言えます。
なぜならトリチウムは、壊変によって放射線のうちの一つであるβ線を出す放射性物質であるわけですが、そのβ線のエネルギーが低いことから、危険性がとても小さく見積もられているからです。
どれがぐらい小さく見積もられているかというと、「周辺監視区域外の水中の濃度限度」がなんと1リットル6万ベクレルという高い値に設定されていいます。セシウム137の場合、同90ベクレル、134の場合でも同60ベクレルであることと比較すると非常に危険性の評価が低いことが分かります。
そのためトリチウムは、大量に環境中に捨てることが容認されており、事実これまでも運転中の原発からも常に大量のトリチウムが廃棄されてきたのです。

しかし実際にはトリチウムの危険性はさまざまに指摘されています。そのうちの一つ、2011年以降の研究論文を見つけたのでご紹介しておきます。

細胞・分子レベルでのトリチウム影響研究
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2012_04/jspf2012_04-228.pdf

論文の内容の詳しい紹介は次回以降に回しますが、冒頭の一文に問題意識が的確に書かれていたので、引用しておきます。

***

トリチウムの生物影響を検討するために,細胞を用いて種々の指標について生物学的効果比(RBE)の研究が行われており,RBE 値はおよそ2であると推定される.
だが,これまでの研究は,高線量・高線量率の照射によるものであった.しかし,一般公衆の被ばくは低線量・低線量率である上,低線量放射線には特有の生物影響があることが明らかになってきた.
したがって,今後低線量・低線量率でのトリチウム生物影響の研究が重要であり,そのための課題も併せて議論する.

***

要するにこれまでのトリチウムに関する「危険性」の見積もりは、「高線量・高線量率の照射によるもの」でしかないということです。トリチウムによる低線量被曝が細胞レベルで行われた場合の、具体的な危険性については把握されていないのです。
同論文は、乏しいデータの中からも、この領域に踏み込んだ秀作ですが、ここからだけでも押さえられるのは、現在の政府や国際放射線防護委員会(ICRP)による放射線防護指針が、科学的に立証されてなどいない、非常に危険性を過小に見積もった被曝評価になっていること、被曝の具体性をまったく無視したものになっているということです。

その上、水素の同位体であるトリチウムには、人体の中の様々な構成要素となっている有機化合物の中の水素の置き換わってしまうため、被曝以外の細胞への影響も大きいにもかかわらず、この面はまったく無視されてしまっています。
なぜこのような過小評価や無視がまかり通るのかと言えば、原発推進派であるICRPが、人体に対する危険性から規制値を出しているのではなく、原発にとって運転可能な技術的要請から「規制値」と作っているからです。このため低線量被曝の実態が無視されてきたのです。

私たちが今回の汚染水漏れ事故の中で、もう一度見つめ直さなければならないのは、この点にもあるのですが、そのための振り返りに絶好の動画があります。2011年12月28日にNHKによって流された「追跡!真相ファイル File.76 低線量被ばく 揺らぐ国際基準」です。
この情報をもたらしてくれたのは、しばしば僕のブログに有益なコメントをしてくださっている「みき」さんですが、彼女の指摘に基づき、僕も放映時に一度は見て、録画をしてあったこの番組を再度視聴し、ぜひとも今またみなさんに見ていただきたいと思いました。以下に動画のアドレスを記しておきます。

追跡!真相ファイル File.76 低線量被ばく 揺らぐ国際基準」
(NHK総合・2011.12.28)
http://www.dailymotion.com/video/xpedoe_yy-yyyyyy-yyyyyy-yyyyyyy_tech#.UTQybiYUSZM.twitter (動画)

中でもぜひご覧いただきたいのは、トリチウム被曝の被害者と思われる18歳の女性について取り扱っているシーン、および彼女の発言です。
同番組では最後にも彼女の次のような訴えを映し出しています。

「科学者には、私たちが単なる統計の数値でない事を知ってほしい。私たちは生きています。空気と水をきれいにしてください。沢山の苦しみを味わいました。誰にも同じ思いをしてほしくはありません」

ぜひ彼女の切々たる訴えを受け止めたい。彼女は「科学者には」と呼びかけていますが、苦しみを通した彼女の訴えを耳にした私たちは、再度今、低線量被曝の危険性を認識し、被曝防護を少しでも進めることを考えなくてはなりません。
同時に番組は、こうした低線量被曝に対して、国際放射線防護委員会(ICRP)が、いかに非科学的に、政治的な判断で「規制値」を決めてきたのかという点も実に丁寧に取材し、鮮やかに描き出しています。この点も含めて、ぜひご覧下さい。

なお、みきさんは、この動画の文字起こしもしてくださっています。動画を見る時間のない方はぜひこちらをご覧下さい。

MICKEYのブログ
「追跡!真相ファイル 低線量被ばく 揺らぐ国際基準」(上)(下)(※動画あり)
http://blogs.yahoo.co.jp/ueda_beck/9121120.html
http://blogs.yahoo.co.jp/ueda_beck/9121195.html

私たちの命、全ての命を守るために、低線量内部被曝の危険性を明らかにしながら、前に進みましょう!

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