2013.04.12

明日に向けて(655)福島原発汚染水漏れの考察(2)・・・問われるのは現場の杜撰さに主体的に向き合うこと

守田です。(20130412 22:00)

福島原発汚染水漏れ事故に関する考察の続きです。

明日に向けて(654)で、僕は今回の事故で露見したものは、現場があまりに杜撰な突貫工事の連続でようやく維持されていること、とくに仮設設備が多く、何かがあればすぐに破綻してしまう現状にあることであると指摘しました。
ただし今回の汚染水漏れは、事前に把握されていた可能性も考えられ、その場合、汚染水を浄化処理する新型装置のアルプスの可動により、汚染水の海洋投棄が考えられているので、これまで汚染水に含まれていたストロンチウムなどに焦点があたって欲しくない、むしろ汚染問題に社会的関心を誘導したいという思惑もあるのではと指摘しました。
ただより考察を深める中で、露呈された現場の構造的欠陥について、もう少し丁寧に押さえておく必要を感じました。同時にもう一つ奥に隠されているものがあることも見えてきました。何かというと、海洋投棄が狙われている放射性物質のトリチウムです。

まず今回、明らかになった汚染水計画の破綻は、7つ作られた貯水槽が構造上の欠陥を有していたことを大きな根拠としています。この貯水槽を手がけたのは前田建設工業(東京)で、東電が仕様を作成しました。もともとは産業廃棄物処理場に使われている技術で、地面に掘られた穴に、粘土質のシート1枚と、ポリエチレンシート2枚を重ねたものでした。
しかしなんともともとこの技術は、産廃を保管する際に、そこに降った雨水が地中にしみ出さないように使われる技術であって、貯水を目的としたものではありませんでした。前田建設自体が、この技術を貯水目的で使用したのは始めてだとそうです。どうしてこんなにいい加減なことが行われてしまったのでしょうか。

少し考えると見えてくるのは、実は毎日400トンも発生する汚染水の処理など、これまで東電はまったく経験したことなどないという現実です。いや、他の誰が経験したこともないと思うのですが、そのためとてもではないけれども知恵が回らないのが実情ではないか。ここがもっとクローズアップされるべきだと思います。

考えてみれば、今、起こっていることはまったくの想定外の連続であるわけですから、東電にとっては初歩的なことも知らない技術的対応が次々と問われているわけです。そもその東電は、原子炉のメーカーよりもずっと低い技術しか持っていません。プラントが正常に動いている時の運転の仕方しか知らないし、それ以外の経験などないのです。
膨大な水の処理などもまったく初めてのはずです。にもかかわらず、「事故収束宣言」や、あたかも福島原発サイトの危機は過ぎ去ったのかのような言説に大きく阻まれ、技術的応援を得ることができない。同時に、これまで長い間、事故があると必ずまずは隠蔽を試みてきた東電の閉鎖的な体質、自らの技術的未熟さを認めて、謙虚に教えを乞うたことなどない傲慢体質も大きな阻害要因となっていると思われます。
そのため、その方面の方たちにとっては、初歩的と言えるようなミスが次々と起こり、おそらくは致命的な構造的欠陥を他にもたくさん宿していることでしょう。繰り返しますが、ここにこそ私たちの国の根本的な危機が懐胎しています。

これに対してどうするのか。私たち市民にできるのは、下から福島原発の今の危険性を、繰り返し訴え、それを社会的意識の俎上に上げていくことです。例えばぜひそれぞれで行って欲しいのは、これから行われる参議院選挙で、それぞれの地域の候補者に、この問題をどう考えているのかを問い、そのこと自身で考えてもらうことです。
同時に、ぜひ各地で原発災害対策の実施、避難訓練の実施を行っていただきたいと思います。その際、ご自分のお住まいの市町村の行政に働きかけ、原子力災害対策への取り組みを少しでも向上させることを訴えてください。同時に市民レベルで、原子力災害を想定した学習会などを行い、少なくとも事故が深刻化した際の、個人レベルでの対処を決めておくこと、それを周りに伝えることです。
とくに東北・関東など、福島原発により近い方はぜひともより具体的で綿密な計画を立て、それを可能な限り多くの方に伝えて欲しいです。小さいことの積み重ねに見えますが、しかしそのようにして危機への対処を重ねる中から、福島原発の今の危険性を社会的に明らかにしていくことが、私たちが下からできることです。

私たちはゆめゆめ、東京電力に私たちの明日の安全を委ねることなどあってはなりません。ただ東電はダメだとなじっているだけならば、実は東電に頼りきっていることにしかならないことに目覚めましょう。そうして私たち自身が危機管理に立ち上がるのです。
行政の方たちにも、このことを問いかけてください。ネズミ一匹のせいで、死活を制するクーリングシステムがダウンしてしまったり、産廃の雨水対策用のシートで作った超水槽から、ある意味では当たり前のように漏洩が起こってしまっているのです。まったく初歩的な事故が次々と矢継ぎ早に繰り返されている。
だからとても安心などできないのです。だとしたら災害対策を重ねるしかありません。重ねる中から、現場の今への社会的批判の目を喚起しなくてはいけない。みなさん、ぜひこのことに立ち上がってください。もはや私たち市民しか、この国の人々を本当に守る主体はいません。未来を守るために、行動しましょう!

同時に、すでに指摘したように、私たちが見つめておくべきことは、今回の汚染水漏れの中で、東電が早晩、汚染水の海洋投棄に向かおうとするだろうということです。その際、これまで可能な限り、遡上にあげようとしなかったストロンチウムが、いきなり除去可能な物質として東電の口から語られるようになると思います。
その際には、ではこれまでどれだけのストロンチウムが出てきているのか、この点を東電に追求しつつ、危険な海洋投棄を批判していく必要があります。この点はぜひ一線で活躍している記者さんたちにも頑張って欲しい点です。
同時に非常に重要な点として押さえておくべきことは、62の核種を取り除いても、唯一、除去できないとされているトリチウムについてです。これがそのまま海洋投棄されようとしているわけですが、トリチウムは大変な危険物質です。にもかかわらず、トリチウムの危険性を非常に過小評価した対応がなされると思われます。この点も非常に重要です。

続く 次回は隠されたトリチウムの危険性について解説します

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