2013.03.30

明日に向けて(650)原発事故避難者に死亡リスクの高い人がかなり多くいる!(復興庁調査より)

守田です。(20130330 16:30)

3月29日に復興庁より、「福島県における震災関連死防止のための検討報告」という文書が提出されました。この間、お伝えしている「震災関連死」のうち、震災から1年経った後の統計をとったところ、全国で40人のうち35人を福島県民が占めていたことを踏まえ、その原因を探った調査です。
30日付の東京新聞の記事によれば、この35人のすべてが「原発関連死」であり、実質的にこの調査は、原発事故によって、1年以上経ってから亡くなった方についての調査であると言えます。

注目すべきことは、医療関係者、公衆衛生関係者からのヒアリングの中で、次のような指摘がなされていることです。

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「2011年12月~2012年2月の施設での死亡率の結果を見ると、前年同期の約1.2倍であった。死亡率が依然として高い状況が続いている。これは、全体の死亡リスクが上がったと考えるべきであり、死亡は氷山の一角である。死亡リスクの高い人はかなり多くいると考えられる。
避難は、身体、心理、社会・環境という健康に影響を与える3つの要因すべての面で大きな悪影響を与えている。」

出典 「福島県における震災関連死防止のための検討報告」
http://www.reconstruction.go.jp/topics/20130329kanrenshi.pdf

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死亡リスクの高い人はかなり多くいる・・・。今なお、多くの方たちの命が危機に瀕しているということです。私たちはこのことを受け止め、原発事故で最も過酷な仕打ちを受けた方たちの命を守っていく必要があります。そのために何が問われているのかを、導き出していきたいと思います。

まず35名の方の死亡時年齢は80歳代が約5割、70歳以上で約8割。やはりお年寄りが多いです。男女別では概ね半々。既往症については約8割。病をもたれていた方が亡くなりやすかったことが現れています。
原因については、「発災直後からの避難(移動)や避難生活による疲労、ストレス、運動不足、医療事情がもとで、徐々に衰弱した事例がほとんどである。平均移動回数は、7回であった」とされています。原発災害時の避難訓練がほとんどなされておらず、なおかつ避難指示が段階的に拡大したため、平均7回もの移動が強いられたことが大きなダメージになったことが分かります。NHKによれば、最も多い移動は16回だったそうです。

この報告の中で重要なのは、先にも一部を引用した「原因や対応策についての医療関係者、公衆衛生関係者の意見」です。この部分の全文を引用します。

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① 精神科の患者(新規入院と外来)を2011年と2012年で比較すると、2012年の方がより強く影響を受けていると考えられる人が多い。これは、時間の経過によるストレスの積み上げが影響している。この結果を踏まえると、身体疾患にも影響が出ていると考えられると思う。
② 自ら調査した2011年12月~2012年2月の施設での死亡率の結果を見ると、前年同期の約1.2倍であった。死亡率が依然として高い状況が続いている。これは、全体の死亡リスクが上がったと考えるべきであり、死亡は氷山の一角である。死亡リスクの高い人はかなり多くいると考えられる。避難は、身体、心理、社会・環境という健康に影響を与える3つの要因すべての面で大きな悪影響を与えている。
③ 今回の原発事故が人災であるか否かはさまざまな見方があると思うが、天災と人災では、影響の尾の引き方、ストレスの解消の仕方が違う。天災はあきらめざるを得ないが、人災の方はどこかに持って行きようがあるだけに、すっきりしない状態がいつまでも続く。
④ 浜通りの人は、避難生活が長引いており、展望が見えない。このことが高齢者の元気が出ないもとになっている。

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今回の記事のタイトルにも使わせていただいた「死亡リスクの高い人がかなり多くいる」とはこのことであり、そのため先に②の内容を紹介しましたが、③の「天災はあきらめざるを得ないが、人災の方はどこかに持って行きようがあるだけに、すっきりしない状態がいつまでも続く」という指摘も大変重要です。
「すっきりしない状態がいつまでも続く」のは、何も自然現象であるわけではありません。人災であれば責任者が特定され、処罰されるのが当然でありながら、それがまったくなされていない。だからこそ「すっきりしない状態がいつまでも」続いているのであり、それ自身が、避難者の心を蝕み、ストレスを与えているのだということです。当然です。自らは事故の被害者として大変苦しんでいるのに、加害者が制裁を受けないのですから。
原発関連死に触れた「明日に向けて」の前号で、僕はこれらの人々の心身を守るためにも、東電をきちんと追求し、責任者への社会的制裁を実現しようと書きましたが、その必要性、重要性が、医療関係者、公衆衛生関係者の意見によって裏付けられたと言えると思います。

しかし同報告の中の復興庁の「今後の対応」に、このことはまったく書かれていません。社会的正義の視点を大きく欠落させています。
同時に、問題が多いのは次の点です。

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福島県における被災者について、震災関連死を防止するには、原子力災害からの福島の復興・再生、被災者の生活再建が大きな課題である。国、福島県及び関係市町村、民間団体等が連携して、福島の復興・再生の加速化、被災者の生活再建等の復興関連施策を引き続き実施していく。

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何が問題なのか。復興庁の方針には、福島の「復興・再生、被災者の生活再建」を大きく阻んでいるのが、原発から膨大に漏れ出し、福島を汚染している放射能であることにまったく触れられていません。その上で、「早期帰還・定住プランを実行」などとうたわれています。
しかし多くの人々が、現実には除染も進まず、むしろ除染などとてもできないことが見えてもきていて、まさにそのために帰れないことを実感しているのです。にもかかわらず、この事実を見て見ぬかのような対応を続け、まったく虚しい「早期帰還」がうたわれている。このことこそが人々の心をより傷つけているのです。
政府、復興庁は、一刻も早く、多くの地域が除染ができないことをきちんと認め、帰還できない人々のためのあらたな町づくりの展望をこそ出すべきです。「蛇の生殺し」のような状態をやめ、新しい生活にむけた踏ん切りがつけられるようにすべきです。
ところが、にせの「事故終息宣言」を維持するためにも、原発の周辺地域において、なお除染が可能かのように振る舞い、人々に町と生活の新たな方向性での展望を切り開くことをさせない。その仕打ちが、ますます人々をして「元気がでないもと」を作っていることこそが見据えられるべきです。その意味で、原発関連死を生み出しているのは、復興庁のこうした姿勢そのものでもあることを指摘せざるをえません。

それでは、これらの人々の命を守るために、私たちは何をしたらいいのでしょうか。
第一に先にも述べた如く、「すっきりしない状態がいつまでも続いている」状態に終止符を打つこと。責任者をはっきりさせ、処罰を行うことで、被害者の心の苦しみを少しでも救うことです。
僕は長年、旧日本軍による性奴隷問題に関わってきましたが、被害者のおばあさんたちの心と、強制避難を強いられた人々の心に、似た痛みがあることを感じます。ひどい加害を受けながら、その加害者が裁かれない。大手をふってのし歩いている。そのこと自身が、被害者を苦しめ続けるのです。
たくさんのおばあさんたちの苦しみを見過ごしてきた日本社会の大きな限界が、今、被災地の人々にも押し寄せているとも言えます。これらの方たちには人的加害=暴力が加えられたのに、社会がそれを黙って見ている。黙って見ていることで暴力を容認され続けている。それが被害者をより深く傷つけ、苦しめるのです。

だからこそ、加害者の追求、被害者に謝罪をさせるとともに、社会的制裁を受けさせることが大事なのです。そのために社会が懸命になって動かないなら、被害者は、二重に暴力を受け、本当に悲しく辛い状態におかれてしまいます。いや、現に今、置かれているのです。そうして事故から1年以上経ってから、35人も亡くなっていったのです。
この状態をもうこれ以上続けていてはなりません。最低でも1000人以上の人々を死に至らしめた東京電力の深い罪を、大きな声を出して追求することでこそ、被害者の方たちの心の負担を少しでもとっていきましょう。

第二に、「復興」のまやかしを暴き、無駄などころか、二重三重に罪作りな高線量地帯での除染活動をやめさせていくことです。なぜ二重三重に罪作りであるのかと言えば、一つに被害者救済に使うべき貴重な社会的資源が失われていくこと。ゼネコンの儲けにばけてしまうことです。
二つにこれらの地域での除染は無駄なばかりではなく、大変、危険な被曝労働であることです。除染活動が被害を広げてもいるのです。三つに人々が町に帰る以外の展望を切り開くことを許さないこと。実施的な生活再建を阻んでいることです。
これらからも、無理な除染の強行は、それ自身が、避難者への新たな暴力であると言っても良いと思います。

さらにもう一つ大事な点は、復興庁の調査には、はじめから放射線被曝による被害を除外するという、調査の土台を揺るがす大きな欠落があるということです。
すでに1000人以上の方が亡くなり、今また多くの方の死亡リスクが高まっているこれらの人々は、すでに深刻な被曝をしてきています。まさに二重、三重にダメージを受けているのです。だからこれらの方たちこそ、可能な限り、放射線の低いところに避難・移転できるように社会的に保障すべきであり、同時に、日本国内でもっとも安全な食材を優先的に食べられるようにすべきです。
にもかかわらず、放射線の被害を、可能な限り小さく見積もろうとする政府の政策の中で、これらの人々に最も深刻な被曝の継続が強いられている構造があります。まさに理不尽の極みです。

福島を助けるのに私たちに必要なのは、このような政府や復興庁、東京電力による社会的暴力の継続的な行使を止めていくことであることを強調したいと思います。
繰り返しますが、これを黙って見過ごせば暴力に加担してしまうことになります。だから私たちは、自らの尊厳をも賭けて、これらの人々を守らなければなりません。奮闘を続けましょう!

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