2013.02.28

明日に向けて(632)愛しい君へ(”Kakusei”・・・A Film by Dionより)

守田です。(20130228 21:00)

昨年の夏、ニューヨークから一人の青年が京都にやってきました。Dion Tanというシンガポール人の若者です。
メディア関係のカレッジに通っていて、課題制作として、福島第一原発事故によって「覚醒」を迎えた日本人の姿を撮りたいとのことでした。
僕に彼を紹介してくださったのは、秋田大学の村上東さん。2011年5月にはじめて東北を訪れた時に秋田でお会いした方で、以降、メール・ツイッターでつながってきました。

京都の僕の家までやってきたDionは、かなり綿密に事故のことを調べていて、すでに非常に優れた視点をつかんでいました。
僕への依頼は主に内部被曝のことを話して欲しいとのことでしたが、インタビューが始まると話がどんどん拡大し、都合2日間、8時間あまりの録画をして帰って行きました。
作品の制限は30分から45分と言っていたのに、8時間も撮ってどうするんだろう・・・と思っていましたが、時間が経つに連れてこのインタビューのことを忘れていました。

すると昨日、気仙沼の友人(アビスさん)が、海外の番組で「守田さんがインタビューを受けているシーンを発見しました」とメールをくれました。
ネット上にアップされたものの「16分30秒頃から、38分頃から」だと言います。クリックしてみたら、Dionの名前が出てきたので「ああ、あのときのものだな」と了解しました。
それで、とりあえず教えてもらった場所を観てみると、全体で5分ぐらいで僕へのインタビューがまとめられていました。「短い時間で、僕の言いたいことをうまくすくいとってくれたな」と感じました。

続いてせっかくだから全体も観てみようと、Filmの先頭から再生し始めたのですが、まず冒頭に出てくる女性の言葉が素晴らしく、というよりも胸に本当にぐっと迫ってきて、涙が出るのをおさえられませんでした。
「そうか、DIon、すごい番組を作ったのだな」と思いつつ、先も観て、さらに深く感銘しました。このFilmの中に僕へのインタビューを挟んでくれたことをとても光栄に感じるとともに、ぜひみなさんにも観ていただきたいと思いました。
冒頭の言葉は、福島県相馬市から秋田に避難している「TOMOMI ABE」さんが、15歳の息子のHIKARU君に宛てた切々たる手紙の朗読です。まずはこれを読んでみてください。

***

愛しい君へ

さすがに電話でのやりとりは厳しさが募る毎日
あたしは朝 目が覚めると同時に 夜 眠りにつくその瞬間まで君を想う
まるで身体がちぎられそうになるほど辛い
君がここにいないことが痛いほど辛い

何ヶ月も毎日 毎日 顔を合わせる度に 相馬を出る 出ないで口論していた君
どうして分からないのかが分からなかったあたし
「俺の命だ、俺の自由だ」と かたくなに拒んでいた君
それは15歳という若さの 今が何よりも一番楽しい時間で
きっと君は外を歩くたびに自殺している気分なんだって

あたしが君の弟を連れて相馬を出たのは
あたしが泣きながら君を説得する姿を見た君の弟が
夜 布団の中で「あきらめてもいいよ」と言ったから

「僕 にいちゃんのためなら がんになって死んでもいいよ あきらめたよ」
9歳の君の弟は そう言ってあたしに笑った
もう時間がないと判断したあたし
君の弟は恐い話をさんざん聞いて逃げていたから外に怯えてた

二人のうちのどちらかを選ぶなんて
絶対にできないと何度も何度も泣いたあたし
何千回 ため息をつき 何百回 涙を流したことか
今でもそう 君を想うと涙が出る

君を置いてきたこと 一生後悔する あたしは一生後悔する
あたしが君の 世界でたった一人の母だから
君はあたしの 世界でたった一人の君だから

でもあたしはそれでも 何が何でも君に助かって欲しい
君の命は 君が今 自分が思っているほど 軽くはないのだから
あたしにとって 家族にとって
世界でたった一人の君の弟にとってもね

あたしはあきらめない 絶対にあきらめない
君の命をあきらめない

***

全編は以下のアドレスから観ることができます。

“KAKUSEI: The Fukushima End ” Pre-Screener
http://www.youtube.com/watch?v=AQydg6d05kU&feature=player_detailpage

番組は秋田にいるABEさんを取材し、さらに相馬にいるHIKARU君を取材していきます。
このHIKARU君のインタビューシーンも素晴らしい。内容は本編にゆずりますが、この映像には、「そこ」は危ないと知りながらもなお、「そこ」を離れられない若者たちのピュアな気持ちが凝縮しています。
ぜひ、多くの方に観て欲しい。そして「どうしてそんな危険なところから避難しないのか」という、どこか苛立ちも含んだ問いへのある種の回答がそこにあることを知っていただきたいと思います。

もちろん、それを知ってなお、僕はお母さんのTOMOMIさんと同じく、避難を願い、呼びかける側にいます。しかしその声を届けるためには、この若者の叫びを心に刻まなくてはいけない。
いや、ある意味ではお母さんの声は届いてもいるのです。しかし、彼には友がいる、恋人がいる。だから動くことは彼の心を裏切ることになってしまう。そんな状態を解消するのには集団的避難の実行しかないのです。
この解くに解けない難問、多くの人々がまさに今、もがき苦しんでいる、深い問いがここにあります。

多くの方がご存知のように、今、福島の子どもたちから甲状腺がんが次々と見つかりだしています。100万人に1人と言われる確率のものが、まだ3万人あまりしか検査していないのに、もう10人近くも見つかってしまった。
うち3人はすでに手術をうけたそうです。残りの7人は8割の確率でがんだと伝えられています。この状態では今後、検診が進むにしたがって、犠牲者は増えるでしょう。本当に大変なことです。酷いことです。
是非とも避難の促進を図らないといけない。といっても放射性ヨウ素による被曝はすでに終わっているわけですが、身体に深刻なダメージを受けているからこそ、本当にもう少しの被曝も加えない方がいいのです。

そのためには社会的な動きを作り出さないといけない。とくに必要なのは被災地からの避難の促進、子どもたちの疎開の促進を、政府に訴えることです。
とくにこれから行われる参議院選挙でこの声を広げる必要があります。みなさん、ぜひぜひ、それぞれの地域の脱原発派候補に強烈な訴えを行ってください。
脱原発をエネルギー問題に切り縮めず、高線量地域からの避難・疎開の促進、および福島4号機をはじめ、大危機が続いている福島原発対策に重点をおくことを選挙公約に盛り込むことを、ぜひ強力にプッシュしてください。

この他、ありとあらゆる機会をとらえ、被災地の人々を集団的に逃がすこと、少なくともその権利を確立させることを呼びかけてください。
そのような思いを深めるために、ぜひこの作品をご覧になり、かつまた多くの人に進めてください。(ただし一部に、覚醒とは言えないのではというシーンもあります。これはこれで日本の現実ですが)
・・・もともと英語圏の方にも観れるように作ったFilmですので、積極的に海外にも拡散していただけたらと思います。

私たちはあきらめない 絶対にあきらめない
全ての命をあきらめない

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