2012.11.28

明日に向けて(588)NONベクレル食堂のめざすもの(上)

守田です。(20121128 10:00)

この10月、京都市岩倉に、放射線を測って安全を確認した食材で料理を出す「NONベクレル食堂」が立ち上がりました。オーナーは廣海緑朗(ヒロミロクロー)さん。東日本大震災以降、ともに放射線防護を考え、実践してきた友人です。
同店のHPを紹介しておきます。http://non-bq-shokudou.com/

さっそくお店にうかがい、ロクローさんに思いを聞いてきましたので、みなさんに紹介したいと思います。僕の意見もかなり書き込んでいますので、インタビューというより対談に近いかもしれませんが、ぜひロクローさんの思いに耳を傾けて欲しいです。
なおここでは触れませんでしたが、ロクローさんは、アメリカインディアンのホピ族と交流したり、山水人の運営に関わったり、あるいはロックバンドのフライングダッチマンのマネージャー役をこなしたりと、非常に幅広い活動をされてきている方でもあります。
そのどの経験も、かなり面白いのですが、今回は敢えて、「NONベクレル食堂のめざすもの」だけに話を絞り込みました。それでも長くなりましたので、3回に分けます。ぜひこの文章を読んで、食堂においでください。安心な上に絶妙な味の定食があなたをお待ちしています!

*****

NONベクレル食堂のめざすもの

―今日はこの10月にNONベクレル食堂を立ち上げたロクローさんに話をうかがいます。ロクローさんよろしくお願いします。さっそくですが、お店を立ち上げて暫くたって感じていること、考えていることなどから話を聞かせてください。(なおロクローさんのお話には(ロ)マークをつけてあります)

安全な食べ物を多くの人が探している

(ロ)オープンするまでにたくさんの避難者の方が来てくれました。東京からこられた方が10人は来てくれた。

―その人たちはなぜ岩倉に住んでいるのですか?

(ロ)最初に岩倉に来た方が情報を流したりするのではないですかねえ。僕が受ける印象では、岩倉には東京から来ている方が多くて、一乗寺には福島からの方が多いように感じます。とにかく、ほんまに避難者の人が多いなあ。
お店には、大阪や神戸からも、普通に来てくれます。話題が先行しているのですかね。
例えばフェイスブックに朝方に情報を載せると、昼までに2000人ぐらいの人が見ています。多いのは東日本の人ですね。そしてそこから問い合わせがくる。「そこで使っている食材を紹介してください。そこまではいけないのだけれど、その食材を買いたい」と言うのです。

―そういう反応をどう思いますか。

(ロ)食堂をやろうと決めたときに、僕の中にもここで使っているものをネットで紹介して、みんなが買いやすいようにしたいという気持ちがありました。知っている小農家さんがたくさんいるのですが、凄く手間をかけていいものを作っているのに、販路がないのです。農協に出したら買い叩かれる。農薬や化学肥料を使っているものは、大きさが揃っていて、高く売れるのですよ。おかしいでしょう?それ自体が。
せっかくいいものを、安心なものを作っても販路がなくて、農協に出しても二束三文やし、なんとか直売所で売ったり、京都の有機野菜を扱っている八百屋さんに卸すのですけれども、それでも農協より少し高いぐらいの値しかつかない。なんだかひどい世界やなあと思ってました。
その反面、安全な野菜はないかと必死で探し回っている人もいるのです。それやったらここで食材としてそれらを使って、放射線の測定もして、さらに農家さんの紹介も行って売っていきたいなということを、初めから思っていたのです。まだ忙しくてバタバタしていて、そのためのホームページも作れていないのですが、近日中に始めたいと思っています。とりあえずお米から始めようかなと。お米の問い合わせが凄く多いのです。

―お米は毎日食べるから、汚染されていると、身体への打撃が大きいですからね。例えばシイタケの中に汚染されているものが良く見つかるけれども、シイタケは毎日食べるわけではない。かりに少し食べてしまったとしても、毎日食べるお米とはずいぶん意味が違ってきます。何よりも水とお米の安全性が大事ですよね。

だけれども、安全で良い食材を紹介するという場合、お金がロクローさんにももたらされるシステムはできるのですか?

(ロ)たぶん出来ると思います。このまま食堂をやっているだけだと潰れてしまうだろうし(笑)。生産者の人と提携してその道を考えようと思います。

―僕も講演で、自分たちを守るためには、安全なものを作ってくれる生産者を守らなければならないと繰り返し言っています。でも僕の場合は言っているだけなんですね。だからロクローさんの試みは凄くいいし、ありがたいなと思うのです。それだけに、持続可能なシステムとして成り立てて、安定的に運営できる道を見つけて欲しいですね。
みなさん、のどから手がでる情報なのだから、喜んでペイをしてくれると思いますよ。生産者にとっても十分利益が出て、なおかつ情報量を捻出することはできるのではないでしょうか。

(ロ)いくつか話をさせてもらっている農家さんは、本当に、かなり叩かれた値段で作物を売っています。それに対してこれぐらいで売れて欲しいという額があるけれども、同じような商品を買っている消費者の人の値段に対する意識もある。そこにけっこう大きな開きがあります。
それで僕としては、少し僕にもマージンをのせる形でも農家さんにも買い手の方にも喜んでもらえる値段を設定できると思っているのです。それを農家さんに示して、これで売っていいですかと了解を得て、それで販売していけばいいかなと思っています。その場合、測定をきちんと行うことは前提ですね。
有機野菜を扱っているいろいろな人に聞いてみたら、「そんな値段だったら商売にならんで」と言われるような値段なので、まあ、文句は言われへんかなと。

―そうですか。うーん。そういう方が、「商売にはなるけど、安いなあ」とか言うぐらいにはして欲しい気がしますが。ともかく経営が成り立つようにうまくやって欲しいです。

(ロ)ネットで売るシステムを作るのにお金がかかるのですが、うまくできればまわしていけるのではないかと思っています。
よく農家さんがここに勝手に野菜を送ってくるのです。ここで使って欲しいし、ここでネット販売して欲しいというのです。みなさん、本当に販路に困っているのですね。それを受け入れることができたら、来年は作付けを増やせますよね。そうやってどんどん広げていくのは悪いことではないと思うのです。

―とてもいいことですよ!

(ロ)ちゃんとした生き方を考えて農業を始める人が増えていると思うのですけれども、とりあえず農業を始めてから売り先を考える人が圧倒的に多いのです。だからそういう人のサポートもしたい。本当に東日本は安全な食べ物に飢えてますから、そこに本当にいいものを作ってくれている人をつなげられたらと思います。

―僕は最近、縁があって兵庫県の篠山市に通っているのですけれども、篠山市は「農都」としての発展を掲げています。実際に篠山には近年、新しく営農を始めて、有機野菜を作って頑張っている人たちが増えている。そういう人たちと結びついてくれるといいなと思うし、そこで販路が拡大する中で、東北や関東で、汚染によって営農を断念せざるを得ない人に、ここに来て営農をしないかという呼びかけができたらいいなとも思うのです。
実際に篠山市の農家さんにそういう話をしたら、すぐにも準備をしてくれて、販路も補償できるので来ないかという話が出てきました。それを東北の知り合いの農家さんに投げてみましたが、そのときはその方がまだ東北を離れる気持ちにはなれなかった。その気持ちはとてもよく分かる。でも先を見据えてこういう可能性を広げていくことはとても大事だと思うのです。

やはり汚染があるところで営農を続けるのは苦しい。汚染された土壌から、作物にそれほど放射能が移行しなかったとしても、明確に汚染があるところで作り続けていくのはやはりとても苦しいものがあると思うのです。実際に僕の知っている東北の方は、野菜に移行していなくても、汚染された土壌で作り続けていて本当に安全なのだろうかという根本的な疑問が沸いてくると話していました。
それに比べたら西日本はわずかな汚染はあるけれども、まだまだきれいだし、使える遊休地がたくさんある。それを活用すれば日本全体を食べさせることが可能だと、友人の「食べ物」の研究者が断言していました。僕もそうなのだと思うのです。東北の方がすべて移ってくるわけにはいかないでしょうが、少なくとも移れる可能性をどんどん広げていきたい。何せ、福島原発からは今も放射能が出続けているのですから。
そのためには西日本の行政にも動いてもらう必要があるのですが、そういうことにノンベクレル食堂の動きがつらなっていくといいですね。

(ロ)僕もやる前には、土壌を測れば作物一つ一つを測らなくてもいいのではと考えたことがあります。土壌が安全なら、作物も安全なはずだからです。でもずいぶん、甘い考えだということが分かりました。ある程度、正確に測ると、京都府や三重県、滋賀県でも0~3ベクレルぐらいは汚染が出てくるようなのです。野菜への移行計数を考えればほとんど問題がない数値だと言っていいと思うのですが、それを表示した場合、かえって農家さんのイメージを崩すことにしかならない。
ただし市場を見ていると実際に土壌を測って作物を売っている場合もけっこうあります。それを見てみると土壌の量がわずか200グラムぐらいで、測定も30分ぐらいでしかない。

―ひどいな。インチキですね。

(ロ)そうなんです。はなから「そんなん、出るはずないやん」という測り方をして、不検出という紙をつけて、野菜を売っている人らがいます。僕らのように少し測定のことを知っているもんなら「ウソや」とすぐに分かるレベルの話です。そういうものもあるので、土壌を測ってどうのというのはうまい方法ではない。
そもそも昨年の3月111日以前でも、土壌をきちんと計ったら5ベクレルぐらいまでは出るところがあったそうなのです。専門の計測者に聞いた情報です。核実験やチェルノブイリ事故の影響がこれまでもあったと思うのですね。

―あとは稼動している原発からの放射能漏れでしょうね。最近、各地の原発の周辺の人から話を聞く機会が増えているのですけれども、例えばある原発では、建屋のシャッターを開けるときに、周辺のモニターのスイッチを切ってからにするとかいう裏マニュアルがあるのだそうです。それでないとすぐにモニターが反応してしまうからです。原発の周辺にいる人たちはそういうことを知っている。健康被害がすでにこれまでもあったという話しも耳にします。

続く

« | | | »