2012.06.21

明日に向けて(492)ゆっくりと長く大量に続く放射能漏れの中で私たちはいかに生きればよいのか(上)

守田です。(20120621 10:00)

昨日、生活クラブ京都エル・コープでお話したことを(491)に載せましたが、そのとき同コープ内の「協同組合運動研究会」の会報をいただきました。その189号(2011年9月8日発行)に、僕が前回2011年7月30日にお招きを受けたことを踏まえて投稿させていただいた、「原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか」という文章が載っていました。パラパラ読んでみたら、自分で言うのも何ですが、よく書けていました(笑)なので、ここにも掲載することにします。

長いので2回にわけますが、冒頭の部分に「シビアアクシデント」対策のことが書いてあり、これはそのまま大飯再稼動批判に該当します。政府が昨年の夏からまったく何の進歩もしていないことをあらためて感じた一瞬でもありました・・・。

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原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、
私たちはいかに生きればよいのか。
2011年8月18日 守田敏也

2011年3月11日。私たちの国を大地震と大津波が襲いました。福島第一原発が大事故を起こし、大量の放射能が漏れだしました。以降、事故は今日にいたるも収束の目処が立っていません。福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのでしょうか。みなさんと考察を深めていきたいと思います。
 
1、地震によって福島原発は壊れた!

今回の原発事故の主要な原因な何だったのかを考えてみたいと思います。政府や東京電力は「想定外の津波」としています。そして定期点検などで停止している他の原発を再稼働するに当たり、充分な津波対策を施したから安全だと言っています。本当でしょうか。

「主な要因は津波ではなくて地震だ」と指摘している方たちがいます。元日立の原子炉圧力容器の設計者の田中光彦さん、元東芝の原子炉格納容器の設計者の後藤正志さんなどです。この方たちの分析では、原発は津波がくる前に地震によって配管が壊れて、燃料棒を冷やす水=冷却材が抜けてしまい、メルトダウンがはじまったと推測されています。

津波ではなくて地震が大事故の原因であると、どういうことになるのでしょうか。点検中の原発の再稼働どころか、現在、動いているすべての原発も、同じ危険を抱えていることが明らかになるのです。これまでの設計基準では地震に耐えられなかったからです。そのため、原発の運転を停止しないと、地震によって同じような大事故が起きる高い可能性があります。

また事故調査では、現場の運転者の人が、どのスイッチを入れてどのスイッチを切ったのか、その時にそのスイッチは動いたのかどうか、等々のことをつまびらかにすることが大切です。しかし、こうした本格的な調査がないままに、政府は「津波のために電源喪失してメルトダウンした」という報告を国際機関に出してしまいまいした。実際はどうだったのかということなどまだ誰も見ていないにもかかわらずです。ちなみにスリーマイル島での事故のときも、放射能が低レベルになって開けられるようになったのは7年後で、フクシマの場合はもっとかかると言われています。

さらに政府や保安院は、5月に各電力会社に「シビアアクシデント対策」を要請し、これが行われたことを、停止中の原発の運転再開の条件に上げています。しかし「シビアアクシデント」=「過酷事故」とは、設計条件を越えた事故のことです。車で言えばブレーキが壊れて止まらなくなったような状態のこと。そのときの非常措置が「シビアアクシデント対策」で、具体的には格納容器から大量の放射能が漏れ、水素なども漏れて来る事態の中で、水素爆発を避けることなどを指しています。

そのため「シビアアクシデント対策」ができたから運転を再開するということは、今後、大規模な放射能漏れや水素漏れが再び起こる可能性があるけれども、そうなったときの対処を考えたので、運転を再開させてくださいと言っているのと同じことです。

原発はシビアアクシデントなど絶対に起きないと言って、運転してきたのですから、それが起きてしまった今、ただちに運転をやめるべきです。
 

2、放射能による被曝の問題

この事故で、どのくらいの放射能が出たのでしょうか。本当のところは、5年、10年たたないと完全には分からないと思われますが、今、政府が認めているだけでも、チェルノブイリ事故の3分の1くらいの放射能が出ていると推定されています。このため、大変な規模の被曝が起こっていると思われます。

放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線などがありますが、前二者はエネルギーが非常に大きい一方、粒子も大きいので何か障害物があると容易に通り抜けないし、距離もあまり飛ばない。そのため人が外から浴びるとしたら主にガンマ線ですが、そのように人が外から放射線を浴びることを外部被曝といいます。

それに対して内部被曝は、放射線を出すものを塵とか食べ物、飲み物を介して、体の内部に取り込んでしまい、内側から被曝することをさします。内部被曝をするとどうなるのでしょうか、体内の細胞が、放射線で長い間、被曝してしまいます。しかもアルファ線やベータ線は、近くの細胞を激しく壊してそこで止まってしまい、外に出てこないので測ることができません。

この内部被曝の問題で、今、一番注目を浴びているのは肥田舜太郎医師です。肥田さんは広島で自ら被爆された元陸軍軍医です。原爆の直撃を免れ、その直後から野戦病院となった避難所に押し寄せてきた被災者をはじめ、たくさんの被爆者を診てこられました。その肥田さんが強調されているのが、内部被曝の恐ろしさです。

体内に入った放射性物質は、低線量の被曝を持続的に起こします。このとき、放射線は線量が高いほど生物にダメージを与えると考えられてきたのですが、実際には低線量の被曝が長く続くと、高線量の被曝より細胞が受けるダメージが大きくなることがあります。これはカナダ人の科学者で医師のアブラム・ペトカウという人が発見したので、「ペトカウ効果」と呼ばれています。肥田さんは早くからこのことに注目し、アメリカの研究書を、ご自分で多数翻訳して紹介してきました。

肥田さん自身の臨床経験で特徴的なことは、被爆者に極端な疲労感・倦怠感が突然、発作のように襲ってくる症状があることでした。そうなると何もできなくなってしまいます。いわゆる「原爆ぶらぶら病」と呼ばれる症状ですが、その原因こそ、内部被曝に他ならないのです。細胞内の生命活動が内側から壊され、活力が維持できなくなってしまうのです。

しかしこうした低線量被曝の恐ろしさは、アメリカをはじめ核兵器を開発したり使ったりした側、原子力発電を推進してきた人々によって覆い隠されてきました。放射線の本当の害を研究したり公表したりすることが押さえられてしまったのです。とくにアメリカ占領下の日本では、被爆者への治療は認められても、病状の研究をすることは厳禁されたのでした。そのため放射線の害の研究は、今なおほとんど進んでおらず、人体への影響がたいへん小さく評価されています。そのことが今回の福島事故での、政府や大方の「専門家」による事故の影響の過小評価や、「放射能は怖くないキャンペーン」につながっています。

とくに今回の事故後に福島に乗り込んだ長崎大学山下俊一教授は、福島に放射性物質がたくさん降っているときに、「マスクの必要はない、子どもたちを外で遊ばせても大丈夫」と言ってまわりました。山下教授を信じたたくさんの市民が、当初考えていた避難を思いとどまり、マスクなどで身を守ることもやめてしまいました。その結果、かなりの人々の被曝が促進されてしまいました。3月末に行われた検査では、子ども約1100人の半数以上の甲状腺から放射性ヨウ素が検出されていたことが、8月になって発表されています。

また放射能汚染物質は、汚泥や腐葉土に交じって全国に流出し、さまざまな食べ物のなかにも交じりこんで、全国に蔓延しつつあります。これ対しても政府は、世界の中でももっとも緩い基準値を作りだしてしまい、汚染された食物の流通を許してしまっています。このことで被曝は一地域の問題でなく、日本全体に広がりつつあります。

続く

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