2017.09.06

明日に向けて(1423)核実験―緊張を深める朝鮮半島情勢の背後にある隠された事実をつかもう

守田です(20170906 16:00)

9月2日に滋賀県朽木村に向かい、山水人に参加してお話してきました。「原発からの命の守り方」と「戦争からの命の守り方」を柱とした話でした。
3日は彦根にいって「くらしとせいじカフェ@ひこね」に参加してきましたが、ちょうどそのころ朝鮮民主主義共和国が新たな核実験をしたことが報じられました。
これを踏まえて、山水人で朝鮮半島情勢について語った観点をお送りしたいと思います。

まず朝鮮民主主義人民共和国が行った6回目の核実験に対して、心からの怒りを表明します。
核兵器はあらゆる兵器の中でも最も非人道的なものです。破壊力がけた違いにすごく、環境や次世代へ計り知れない影響を与えるからです。
実はこの爆弾のひどさは原爆投下から72年経って、さらに明らかにされつつあります。すさまじい光線によって血管内部の水蒸気が蒸発して血管破裂をおこし、数日かけてじわじわと人を悶絶の苦しみの上に殺していったことが明らかになったからです。
これらの点についてはより詳しくは、本年8月に報道されたNHKスペシャル『被爆死 ヒロシマ 72年目の真実』に着目されてください。すでに「明日に向けて」で番組の文字起こしを行っています。

肝心なことはこのようにあまりに非人道的な核兵器は、どの国も使用することも、威嚇に使うことも許されないと言うことです。
朝鮮民主主義人民共和国が行ったからではなく、どの国も等しく、使用はもちろん、実験も所有も認められないのです。
これらは本年7月7日に採択された核兵器禁止条約にもはっきりと書き込まれています。

この点で、アメリカがこの核実験を批判するならば、同国も即刻、核武装を止めるべきであることは言うまでもないことですし、日本もまた朝鮮だけを批判し、アメリカの暴力は全面的に擁護しているあり方を抜本的に変えなくてはなりません。
にも関わらずアメリカに追従して核兵器禁止条約に不参加の態度を決め込んだ日本政府の姿勢は、結局は核兵器による威嚇を容認するものであり、それでどうして朝鮮を批判できるのでしょうか。なんの説得力もありません。
核兵器はどの国も実践にも威嚇にも使用してはならないし、だから製造も実験も、等しく認められないというのが「国際社会」の圧倒的多数派の見解なのです。いつでもどこでも貫かれなければならないのはこの原則です。

これを踏まえた上で、この間の朝鮮半島をめぐる軍事的緊張関係の本質を紐解いていきましょう。
核実験の直前の8月29日には、平壌から弾道ミサイルが撃たれ、北海道の上空を飛翔して太平洋に落ちました。アメリカへの威嚇とされました。
これに対してアメリカは31日に戦略爆撃機B1とステルス戦闘爆撃機F35を韓国上空に派遣。韓国軍とともに空襲訓練を行いました。B1との朝鮮半島近くの海域での訓練には自衛隊機も参加しています。

どうみたって双方が「威嚇」しているのですが、平壌からのミサイルが米本土には届かないことに対し、アメリカはかの国の目と鼻の先の韓国で、戦略爆撃機から爆弾を落としているのですから、客観的に見て、こちらの方が脅威の度合いが圧倒的に高いです。
核実験にしてもアメリカはこれまで1000回も繰り返し、膨大な量の核弾頭を持っているのですから同じことです。そればかりかここ数年、アメリカは朝鮮民主主義人民共和国の指導者の「首を獲る」、斬首作戦をちらつかせてすらいます。
この部隊は「暗殺部隊」と呼ばれています。非合法的な殺人部隊であることの公言ですが、どうしてこういうときだけ「テロリスト」とは言われないのでしょうか。しかも日本国内では、かの国からのミサイル発射だけが「挑発」と報道されています。あまりにおかしいです。

ちなみに実はここまで、僕は名称問題に困難を抱えながら記述しています。お気づきでしょうか?「朝鮮民主主義人民共和国」をなんと呼称するのか思い悩んでいるからです。
かつてはそれほど悩まずに「北朝鮮」と書いてもいたのですが、ある方から「それは世界のどこにもない国名で、無批判的に使うのはいかがなものか」と指摘されて「確かに」と思い至りあらためることにしました。
今回あるところでこのことを論じあっていて、ジャズピアニストの河野康弘さんが、2008年に同国を訪れた際に「北朝鮮と呼ばないで」と言われた経験を教えてくださり、より確信を深めることができました。
以下、河野さんのホームページをご紹介しておきますのでぜひお読み下さい。

「北朝鮮」って呼ばないで!
2008年9月12日 河野康弘
http://www.earth-harmony.com/jp/frameset_katudo-nco.html

それではどう書いたら良いのだろう?いちいち「朝鮮民主主義人民共和国」と書くのでは長すぎるように思えます。
英語表記を参照してみると正式には北の側がDemocratic People’s Republic of Koreaで南の側がRepublic of Koreaです。しかしこれも長いし、DPRKと略しただけでも伝わりにくい。
このため英語ではNorth KoriaとSouth Koriaと略される場合もあります。これはこれですっきりもしていますが、それを日本語に訳すとなると、Koreaをどう訳すか、「朝鮮」なのか「韓国」なのかで困ってしまう。

ちなみに北は自国・自民族の略記を「朝鮮」としています。南は「韓国」です。そして互いの国のことを北から南は「南朝鮮」、南から北は「北韓」と呼んでいます。
悩んだ末に、いまここでは僕は朝鮮民主主義人民共和国を「朝鮮」と呼称することにします。大韓民国も「韓国」を略称として使っているので、それぞれが自らの略称しているものを使うのが公平だと思えるからです。
ただこうした過程をあえてご紹介したのは、この名称問題には、実は朝鮮半島をめぐる最も重要でありながら、意図的にせよ非意図的にせよ隠ぺいされてしまっている重大事実が介在しているからです。
なぜ北部の表記に困ってしまうのか。それは端的に言って日本と朝鮮が国交を結んでないからです。「朝鮮民主主義人民共和国」は日本にとっては存在しない国なのです。国家として承認してないからです。

では日本はなぜ朝鮮を承認していないのか。日本の事実上の宗主国であるアメリカが承認していないからです。ではなぜアメリカが承認していないのかと言えば、アメリカがいまだ朝鮮と交戦状態にあるからです。正確には交戦の中の休戦状態です。
もっとも重要なのはこの点です。なんの交戦状態なのかと言えば1950年に始まった朝鮮戦争なのです。この戦争はいまだに完全終結にいたってないのです!1953年に結ばれた休戦協定が継続中なのです。
もちろん北と南の両国も国交を結んでいない。両国にとって領土とは朝鮮半島全体であり、それぞれが南に、北に、違法政治勢力が居座っているという立場を採っています。国際的にも「実効支配」などと言われます。

しかるに朝鮮半島をめぐるあらゆる日本の報道の中で、この重要な前提を踏まえたものはほとんどないのです。東アジアの諸問題の中で、朝鮮とアメリカが休戦状態にあることこそ最大の不安定要因だということが無視されてしまっている。
それを象徴するのが、「朝鮮」と「韓国」の他、アメリカ、日本、中国、ロシアが参加のもと、対話で「朝鮮」の核問題の解決を目指すために行われてきている会議が「六か国協議」と報道されていることです。
この言葉が通用するのは、実は朝鮮半島情勢があいまい化されている日本国内だけなのです。そこに集まっている6つの勢力の中には、互いに「国」として認めていないものが含まれるため、本来は「国家間対話」とみなすことができないからです。

では何というのかというと6つの政治勢力が集まっての会合ですから、英語ではSix‐Party Talksと書かれるのです。決してNationという言葉は使われない。
これを日本語に正しく訳すとどうなるでしょうか。「六者会合」なのです。事実、日本政府の中でも外務省のサイトだけはこう書いています。
このサイトは日本語を理解できる海外の外交官が読むので、恥ずかしくて「六か国協議」とは書けないのです。参考までに外務省のサイトをご覧ください。

六者会合関連協議 外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/

ところが「六か国協議」と書かれれてしまうと、この重大事実が著しくぼかされてしまうのです。
そしてあたかも6つの国が平和のうちに存在していて、その中で「北朝鮮」という「国」だけが「挑発」を繰り返し、悪さをしている・・・かのような報道ばかりが繰り返されてきています。
しかし事実は違う。互いに国家として承認せず、休戦状態の中にある政治勢力がにらみあっているのが実態なのです。

続く

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