2015.12.25

明日に向けて(1198)東芝が5500億円の赤字―原発再稼働強行は瀕死の原発メーカーを守るため

守田です。(20151225 15:00)

昨日24日に福井地裁が樋口裁判長が下した高浜原発再稼働禁止仮処分への関西電力の異議申し立てを認め、再稼働を容認する決定を出してしまいました。
しかしそもそも再稼働の前提になる「新規制基準」は、未だ収束もしておらず事故原因も不明確なことが多い「福島原発事故の教訓を踏まえる」ことを電力会社に求めたものですから、まだまだたくさんのことが分からない現段階では無効です。
この点を、明日に向けて(1196)(1197)で論じましたが、今回はそれではなぜ、これほどに理屈的にも辻褄が合わず、到底、教訓を踏まえたとも言えなければ、安全を担保したとも言えない再稼働が強行されるのかを押さえておきたいと思います。
結論は端的に原発メーカーの東芝が瀕死の状態になっており、なおかつ三菱重工も原発部門で大きくつまづいており、ここで原発を稼働させないと、日本の「中核」産業が滅びの道をまっすぐに転がり落ちてしまうためです。

とくに深刻なのは東芝の崩壊です。ご存知のように東芝は、商売の基本中の基本である会計で大きな不正を行ったがゆえに大揺れに揺れています。
隠していた大幅な赤字が表面化するとともに、信用失墜もはなはだしく、株価も急落。とどまるところを知らない状態です。このため21日の発表によれば2016年3月期の業績予想で過去最悪の5500億円の赤字が見込まれています。
この苦境を東芝は7800人をリストラ(2015年で総計10600人)するとともに不採算部門となってしまった家電部門を切り縮めることで凌ぐ方針ですが、はたしてそれで再建ができるのか危ぶまれています。
例えば毎日新聞経済プレミアの今沢真編集長は次のように述べています。

「この記者会見は、東芝の問題が単なる「不正会計」から、「経営危機」という別次元の段階に入った象徴的なものだと筆者は考えている。
もちろん、不正会計で経営が相当悪い方向に向かう感覚はあった。それでも、経営の屋台骨がここまで危機的に揺らぐとは考えていなかった。
それほど今回の巨額の赤字は衝撃的だった。なぜか。東芝の自己資本が急激に減少するからである。 」

「東芝はこうしたリストラの結果、自己資本が大きく減少する。不正会計発覚前の15年3月末に自己資本は1兆840億円あった。それが16年3月末に4300億円になる。
1年で6割の大幅減。再び5500億円の赤字を出すようなことがあったら、自己資本が枯渇してしまう。 」

なお引用は以下の記事からです。

「もはや経営危機」東芝5500億円赤字の衝撃度
毎日新聞経済プレミア 2015年12月25日
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20151224/biz/00m/010/012000c

なんと1兆840億円あった自己資本の6割を失ってしまったというのですから打撃ははかりしれません。
まさに深刻な経営危機が東芝を襲っているのです。

どうしてこんなことになってしまったのか。これまでも「明日に向けて」でも紹介してきたように、多くの経済ジャーナリストが「原発部門でのつまづき」を指摘しています。
最も大きいのは、ウェスティングハウス社を市場価格の3倍とも言われた価格(54億ドル=約6000億円)で強引に買収したダメージが払拭できなかったことです。
東芝はなぜそのような大きな賭けにうって出たのか。2000年代になって突如アメリカブッシュジュニア政権が打ち出した「原子力ルネッサンス」宣言を真に受けてしまったからです。「もう一度、原子力産業を隆盛させるぞ」という「大風呂敷」です。

いやより正確には、ブッシュジュニア政権にピッタリと寄り添って新自由主義の道をひた走っていた小泉政権がこれにタイアップし「2005年骨太大綱」などで、原子力産業隆盛の道を大々的にうたいあげたことにこそ東芝は飛びついたのでした。
このためウエスチングハウス社の買収に社運をかけました。なぜかといえば、現在の商業用軽水炉は、大きくは沸騰水型と加圧水型の二つのタイプに分かれれています。ウエスチングハウス社は加圧水型原子炉のもともとの開発メーカーです。
これに対して東芝はアメリカのGE=ゼネラルエレクトリック社が開発した沸騰水型原発を製造してきたわけですが、ここでウエスチングハウス社を傘下に収めることができれば、原子力産業のリーディングカンパニーになれると踏んだのです。

ちなみにウエスチングハウス社は、もともと潜水艦や空母のエンジンを開発・製造してきたアメリカの名うての軍需産業でもありました。原潜や原子力空母のエンジンも手がけており、現在就航しているアメリカの原子力空母のエンジンもすべて同社製です。
これは海の中を潜航したり、洋上にあっても激しい波で揺さぶられる艦船では、炉心の中を水が満たしていないために横揺れで波打ってしまう可能性のある沸騰水型原子炉は使えないためです。
しかしアメリカの原子力産業の衰退の中でウエスチングハウス社も経営悪化し、軍需部門をノースロップグラマン社に売却、原子力部門もイギリス核燃料会社(BFNL)に売却されてしまいましたが、東芝はこれを市場価格の3倍の価格で買い取ったのでした。

しかしその直後の2008年にリーマンショックに襲われるや否や、たちまちこの無理がたたり、東芝はこの時点からすでに不正会計に踏み込みはじめました。
もちろん東芝経営陣とて不正会計が破滅の道であることは熟知しており、経営の好転による苦境からの脱却が目指されました。その大きな柱に据えられたのが、柏崎刈羽原発を再稼働するとともに日本で初の原発輸出をアメリカ向けに行うことでした。
かくしてサウスカロライナ原発建設計画が立ちあがり、東芝の子会社となったウエスチングハウス社製の加圧水型原発2基が採用されることとなりました。

ところがこの時、東芝を震撼させる事態が勃発しました。それこそが福島原発事故でした。
なぜだったのか。そもそも深刻な事故を起こした福島原発の2号機、3号機をはじめ、福島第一原発の6つの原子炉の製造に東芝が大きくかかわっていたからです。
このことで東芝は原発メーカーとしての信用を大きく損なってしまい、アメリカでの原発建設の道が閉ざされてしまいました。同時に柏崎刈羽原発再稼働の道も大きく遠のきました。経営苦境を脱出するための大きな柱が折れてしまったのでした。

続く

なお今宵は首相官邸前や電力会社前に駆けつけて、福井地裁の不当判断に抗議し、高浜原発再稼働反対の大きな声をあげましょう!僕もこれから出かけます!

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