2015.12.18

明日に向けて(1193)現代科学では原発も放射能も管理不能だ!(後藤さん講演会を振り返って)

守田です。(20151218 21:30)

17日に後藤政志さんをお招きして高浜原発再稼働の危険性を聞く会を持ちました。
準備期間一週間の緊急企画でしたが、予想を大きく上回り40人を上回る方が参加して下さいました。
友人の新宮真知子さんがFacebookに写真をアップしてくださったので自分のタイムラインにシェアさせていただいています。以下、紹介します。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=874247562696184&set=pcb.874247839362823&type=3&theater

IWJ京都の萩原さんが中継をしてくださいましたのでアドレスをご紹介しておきます。
ぜひご覧下さい。なおIWJの会員登録をされてこうした報道を支えて下さることもお願いしたいと思います。

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/279080

今回の緊急企画の主催は「本田久美子さんを勝手に応援する会」と「ノンべクキッチンホテヴィラ」でした。
本田久美子さんは京都市長選に挑戦している方で、僕も勝手連で応援しているのですが、この日はご本人にも忙しい中で参加していただくことができ、みなさんと後藤さんのお話を聞くことができました。

後藤さんにはまず高浜原発再稼働の危険性のダイジェストを語っていただきましたが、後藤さんが真っ先に挙げられたのは、加圧水型原発のもともとの構造上の問題点である制御棒挿入の問題。
沸騰水型は下から、加圧水型は上から差し込むのですが、地震で大きく揺れたときに果たしてきちんと入るのか信頼が持てないという欠陥を抱えています。
この他にも地震はプラントにとって大きな脅威であるわけですから、あらかじめどれだけの地震が来るという予測を行って設計がなされてきました。

実はここに抜本的な問題が横たわっています。そもそも来るべき地震の規模を現代科学で予測できるのかという問題です。
例えば新潟の柏崎刈羽原発は予想される最大の地震の規模=設計基準地震動を450ガルと設定していました。しかし2007年の中越沖地震でこの原発は1699ガルの揺れに襲われました。設計基準を4倍も上回っていたのです。
このため柏崎刈羽原発は、福島原発事故ほどの破局には至らなかったものの激しく損傷し、現在にいたるも再稼働できていません。膨大な放射能漏れに至らなかったのが幸いというべき事態でした。

世界最大の出力を持つ原発がすでに8年5カ月もとまっているわけですが、ここに表れているのはいかに設計基準地震動動が甘く設定されていたのかという事実です。
いやある意味で「甘い」というよりもより重要なのはそもそも現代科学で地震の規模を正確に予知することなどできないという問題です。
にもかかわらず、原子力規制庁が設けた再稼働に向けて新たな規制基準は、この重大な点を無視しておりそれだけでもアウトです。

後藤さんはここから始めて、さまざまに高浜原発、のみならず川内原発や伊方原発など加圧水型原発の抱えている構造的矛盾と危険性、さらに沸騰水型原発にも共通する原発全体の問題点を話して下さいました。
その際に参加者の胸を深く打ったのは、その多くが後藤さんが実際に格納容器の設計に携わった過程の深い反省から成り立っていることでした。
後藤さんは福島原発事故での水素爆発などについても「私に深い責任があります」と語られました。

これは夏に行った後藤さんと僕との対談内容を受けた内容の中での発言でもありました。
後藤さんが東芝に入社し、はじめて格納容器の設計に携わられた時、一番驚いたのは格納容器に圧力の逃し弁がないことだったとそうです。
普通、ボイラーなどには必ず逃し弁がついている。幾つもです。戦後直後にはボイラーの爆発事故が多発したこともあり、いざという時の安全装置として必須のものとされたのです。

ところが同じような密閉構造の格納容器に弁がついていなかった。最初は「え、大丈夫なのか」と思ったそうです。しかし暫くして「そうか。格納容器は放射能を閉じ込めるのが役目だから安全弁などないんだ。すごい装置だな」と思ったのだとか。
「俺は逃し弁など必要のない凄い装置に関わっているんだ」と嬉しくもなったとも語られていました。ところが暫くしてから風向きが変わってきた。
社内に「安全部」というところがあるのだそうですが、そこの人が来て後藤さんにひそひそ声で「実はいざとなったら緊急冷却装置が働かなくなることがあることが分かった。そうなったらどれぐらいの圧力まで持つか教えてくれ」というのだそうです。

「そんなこと言われたって設計仕様に4気圧と書いてあるでしょう」と答えると、「それじゃあ困る。もっともってくれないと」というのだそうです。
「それならどれぐらいもたして欲しいの?」と聞いたら「3倍」との答え。「そんなのは絶対に無理」と突っぱねつつ、なおも迫られて止むをえず「えいや」と答えたのが「2倍」だったそうです。
そんなやり取りを経て、格納容器に逃がし弁である「ベント」がつけられるようになり、格納容器の圧力が設計基準の2倍になったときに使われることになったのだとか。

ところがこの2倍という値、「間違っていました」と後藤さんは述べられました。圧力容器内で発生し格納容器の中に漏れ出てくる水素を十分に計算に入れていなかったのだそうです。
そのため福島原発事故で水素爆発が起こった時に強い責任を感じられたそうです。「これは私が責められてもまったくやむを得ないことです」と後藤さんは語られました。
後藤さんはこのように、かつて自分が分からなかったこと、技術者として間違えていたことを包み隠さずに明らかにしながら話をされます。だからこそ話に深いリアリティがある。ジーンと感じ入りながら聞き入りました。
さてこの日の話の詳細はまた時間をかけて紹介していこうと思いますが、今日、お伝えしたいのはセッションが終わった後のことです。
新宮さんがアップしてくださった写真の最後にも、2時間半あまりに及んだ企画を終え、ホテヴィラ店内に戻ってくつろいでいる後藤さんと僕と新宮さんのスリーショットがあります。
このあと後藤さんと軽くビールを飲んでお話し、来年3月末頃に東京で後藤さんの主催するAPASTでコラボ企画をしようという話しになって、その時に僕が何を話すかを打ち合わせました。

僕としては原発災害対策も捨てがたいのですが、やはりAPASTでの初めてのお話は内部被曝についてにしたいとお伝えしました。後藤さんも東京で内部被曝の話をしっかり聴きたいとの声が強いことを教えて下さいました。
ただ僕自身はこれまで後藤さんと内部被曝をめぐる観点はそれほどお話してきていませんでした。放射能の影響をめぐっては脱原発派の中でもあまりに大きな差異があるわけですが、その点での後藤さんの評価もお聞きしていませんでした。
後藤さん自身は、ご自分の専門が格納容器であることから、放射能の影響への評価にはあまり言及されていません。そうやって専門分野にとどまっていることはできないと地震や安全工学の問題など、次々触れる範囲を広げられては来てはいるのですが。

それで僕は矢ケ崎さんに学びつつ研究を深めてきた僕の観点を説明するために「内部被曝の評価の基礎は原爆を落としたアメリカが作りました。しかし関わっていて思うのは内部被曝のメカニズムなんて本当はほとんど分かっていないことです」と話しました。
どういうことかと言うと、原爆の破裂においても原発事故においても膨大な種類の放射性物質が飛散します。しかもそれが化学的にはさまざまな物質と結合しうるし、本当に多様な形態で人体の中に入ってしまう。
その後の挙動も複雑でどこにどんな物質がどのような形状でどれだけ入り込んだのかなどおよそつかみ切ることはできない。しかもそこから照射された放射線が、当該箇所をどのように破壊したのか、その影響がどのようにでるかなども複雑すぎます。

ところがこの「分からない」事実が明らかになったら、放射性物質の大量の暴露はとても人類に対処も管理できないということが明らかになり、核実験など言語道断だし、放射能漏れの起こる原発も許してはならないことが歴然としてしまいます。
それでアメリカは分かったふりをした。これに世界の原子力村がなびいてみんなで分かったふりをした。いや正確には今も分かったふりをしている。そこに内部被曝問題の大きなミソがあるのです。
ただし分からないことばかりだと言っても、アメリカを中心にICRP(国際放射線防護委員会)が被曝の具体性を無視し、被曝現象を抽象化し、平均化し、単純化することで、被曝影響を小さく見積もっていることだけは十分に解き明かます。

この話をすると、後藤さん、身を乗り出して話を聞いてくださり「原発をめぐる技術とまったく同じだ」と興奮して語りだされました。例えば先ほども述べた設計基準地震動にしたって、そもそも地震のメカニズムが複雑すぎて簡単に出せるわけがない。
いや地震の波動はさまざまな形で伝わってくるわけですから、ある地点への伝わりを地質・地形のすべてを把握した上で導き出すことなどほとんど不可能に近いのです。
しかしそれでは他の構造物と違って万が一にも地震で倒壊することなど許されない原発は建てることができなくなってしまう。だからこそ「分かったふり」をしてきたのです。

「そうだ。分かったふりだ。分からないことは分からないというのが本当の科学なのに。そこが歪められてきたのだ。その点で原発のコントロールも放射能の管理も同じだ」と大いに盛り上がりました。
そうなのです。現代科学では原発のコントロールも、放射能の管理も不可能なのです。にもかかわらず、この事実を捻じ曲げ、「分かったふり」をしているのが原子力村であり、核の推進者なのです。この非科学性、非道徳性こそが打ち破られねばなりません。
そのために、今後も後藤政志さんにより深く学び、真実を紡ぎ続けていきたいと強く思いました。緊急講演をしていただいた後藤さんに深い感謝を捧げつつ、とりあえずの報告を終えます。

*****

なお目前に迫った高浜原発再稼働容認の動きに対して、緊急の署名運動が呼び換えられています。
すでに「明日に向けて(1191)でご紹介していますが、ここでも署名先だけご紹介しておきます。ぜひご協力ください。

【高浜3・4号再稼働反対!】全国ネット署名 関西広域連合宛て
https://fs224.formasp.jp/f389/form1/

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