2015.09.10

明日に向けて(1147)洪水から命を守るために-能動的対処が問われている!

守田です。(20150910 23:30)

栃木県、茨城県に豪雨が降り、大洪水や土砂災害が発生しています。とくに茨城県常総市で鬼怒川が決壊し、およそ7000世帯に被害が及んでいると見積もられています。9月10日22時30分現在で行方不明10人、意識不明1人と報告されています。
両県には大雨特別警報が発令されています。数十年に一度の洪水が起こる可能性があり「ただちに命を守る行動にうつる」ことを求めるものですが、実際、鬼怒川の破堤による大規模氾濫は77年前、1938年の台風による豪雨以来だそうです。
この他、東北の福島県、山形県、宮城県、岩手県と甲信越の長野県に土砂災害警戒情報が発令されており、東京都、神奈川県、千葉県、静岡県、長野県に警報が発令されています。いずれも22時30分の情報です。

とくに福島県をはじめとした東北地方はこれからさらに雨が強まるとされていますので、河川の氾濫や土砂災害の発生に対しての十分な警戒が必要です。
すでに夜半に入っていますが、災害対策の基本は「とっとと逃げる」こと。該当地域の方は事態が深刻化する前に万が一の避難を行っていただきたいと思います。
すでに水が町を覆ってからの避難は危険です。ましてや夜間では視界も悪い。それでも山や崖に近い方は、いつもと違う音、匂いなどがする場合は、土砂災害の危険性が迫っていると考えて、身を守る行動をとってください。
避難所に行くことが危険だと判断した場合は、2階以上にあがるとともに、山側、崖側とは反対側に居るようにすることが大切です。

最新のNHKニュースを貼り付けておきます。

各地で河川氾濫や浸水 最大級の警戒を
NHK 9月10日 22時49分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150910/k10010226621000.html

このニュースによると栃木県では7日に降り始めてからの雨量が多いところで600ミリを越えているとのこと、平年の9月一月の雨量の倍の量が3日間で降ったことになります。
茨城県でもおよそ300ミリの記録的な雨だそうです。また福島県会津地方でも48時間の雨量が300ミリを超え、50年に一度の記録的な大雨になっているとのこと。
雨はこれから東北の多いところで200ミリ、北海道で150ミリ、関東で100ミリ降ると予測されています。まだまだ危険が続きます。
また23時のNHKニュースによると福島県北部や宮城県南部の筆甫でも400ミリを越えているとのこと。雨雲は大きく宮城県に移動していますが、関東や福島でもまだ雨が続く可能性があります。

今回の災害で特徴的なのは、鬼怒川の堤防が大きく決壊し、常総市に大きな被害が出ていることです。140メートルぐらい破堤していると見られています。
同じ氾濫でも堤防の上を水が越えていく「越流」の場合と、堤防が壊れてしまった場合では水流、水量が圧倒的に違います。決壊は河川災害における最悪の事態です。
このため今後、万が一他の川で破堤が生じた場合は、ハザードマップには水没地帯と記されていないところまでも水がやってくることもありえます。ともあれ土砂災害警戒情報の出ている地域の方は十二分な警戒態勢が必要です。

鬼怒川の決壊の最大の要因は何か。またそこから何を学ぶ必要があるのか。一つに南北の伸びる鬼怒川の上に長く雨雲がかかり、流域全体に激しい雨が降り続いたため、水量がかつてないほどに大きくなったことがあげられます。
その点では自然の猛威が原因です。しかし他方で人間がこれらにどう対処してきたのか。またそこから今後、いかに対処することが必要なのかという点で学ぶべき点があります。

この点を、僕が常に災害対策面でその見解に学んできた群馬大学の片田敏孝さんが10日18時の毎日テレビのニュース番組に出演して解説されたのでご紹介しておきたいと思います。片田さんは次のように語りました。
「堤防の整備が国として進めてきているがまだまだおいついてない。国が管理する河川の場合、100年に1回の洪水が来ても防げる堤防作ることになっている。しかし今の投資水準では国が管理する大きな河川だけでむこう1000年ぐらいかかってしまう。
「ここ最近の気象災害は荒々しさを増している。そして仮に堤防が全部できていたとして、例えば100年に1回の洪水なら守られると言うのは、初めからそれ以上のものは守ろうとしていないことだ。
ここ最近の雨はすごい降り方なので堤防がどれだけできてもそれに委ねるのは限界がある。また最近の雨の降り方は局所的だが、市町村の方は合併などして大きくなっている。市役所でその状況が十分につかめていないということもある。
避難指示や避難勧告が適時に出されているという状況でもない。」

「情報に委ねてばかりいると危ういのだということも自覚しておかなくてはならない。状況がまずいとなったり、今夜これからひどくなるぞと把握されたら早目早目に行動をとって欲しい。
また避難勧告などはあるエリアにでる。その中には水位が低いところもあれば高いところもある。木造平屋建てもあれ鉄筋コンクリートの4階に住んでいる方もいる。個人個人にとって最適な行動はみんな違う。
これに対して避難勧告一本で自らの最適な行動になっているかというと必ずしもそうではない。最近、避難勧告が出たけれどもすでに水につかっていれば逆にとどまるという選択もありだということも伝えている。
自分にとっての最適行動は必ずしも避難勧告によって体育館に避難するばかりではない。それぞれにとっての最適行動を自分で考えなくてはいけない。そういう主体性が求められている。」

非常に重要な点です。僕もこの間、原子力災害対策についての講演を行う時、原子力災害に先立って、災害全般への備えを強くすることを提案し続けていますが、その際の最も大事なポイントがこの主体性の問題なのです。
この国の防災システムは行政から避難勧告が出たら避難するとなっています。しかしこの間繰り返している大雨は、地球的規模の気候変動を受けていると思われ、これまでの想定を突破してしまうものが多い。
とても的確に避難勧告や指示が出せる状況ではないのです。また人々の住いの場所やあり方によっても最適行動は違ってくるので、その点でも勧告や指示だけを待っていてはいけない。自主的に判断して行動することが問われているのです。

その点で注意を要するのは「特別警報」の捉え方です。特別警報は数十年に一度の大雨などの水害が予想されるときに出され、「ただちに命を守る行動をとる」ことを求めるものです。
しかしこの「特別警報」が出ていなくても、命が危機に瀕することはあります。昨年8月に起こった広島土砂災害もそうでしたし、その前の年に起こった伊豆大島での土砂災害でもそうでした。
大事なのは特別警報が出なければ「ただちに命を守る行動」をとらなくてよいとはけして考えてはいけないということです。あくまでも特別警報を一つの目安と考え、事態が深刻化しないうちに万が一に備えるのが災害対策としてはベストなのです。
そのためにさまざまな災害を想定してシミュレーションをしておくことこそが重要です。これを基礎に災害に対して能動的に行動することが大事なのです。

同時に今回の災害を見ても、気候変動が生じている中で、この国がいかに水害に弱いのかが浮き彫りになっていることを私たちはしっかりと把握しておく必要があります。
これもこの間指摘してきたことですが、スイスの保険会社(スイスリー)がまとめた危険都市ランキングでは、なんと東京・横浜が1位、大阪・神戸が4位、名古屋が6位に入っています。
「洪水、嵐、高潮、地震、津波」から算出されたものですが、スイスリーは、ワースト10の都市には「移住してはならない」とまで言っています。

洪水や水害の被害は自然災害としてだけ起こるのではないのです。都市の防災体制との兼ね合いで決まるのです。その点でスイスリーはその点で日本の諸都市の防災体制が脆弱であることをこそ指摘しているのです。
実際、国土交通省は、今、この国の中に土砂災害が発生しやすい家屋がなんと53万戸もあるとも発表しています。多くの人々が大雨が起こった際に極めて危険な地域で暮らしているのです。
それだけではありません。この国には関東大震災、南海トラフ地震などが発生する恐れや、桜島や富士山をはじめとした火山の大噴火に見舞われる可能性すらあります。にもかかわらずそれへの備えがまだまだ脆弱なのです。

火山など世界のなんと1割もが日本列島にひしめいているのに、この国の火山学者の数は40数人。ちなみにイタリアは600人だそうです。
このことひとつとってみても、この国が本当の意味での国防=民を守ることをいかにないがしろにしているのかが分かります。私たちはこの国のこの自然災害に対して脆弱なあり方をこそ克服の対象にしなければなりません。

つまり自然災害に対して能動的になるとは、自主的な判断力を養い、災害を想定したシミュレーションを行っておくことだけではなく、この国を、あるいはそれぞれが住まう地域全体を災害に強いもの変えていく努力を発揮していくことでもあります。
その最も有効な手段としてあるのは僕は自衛隊を災害救助隊に変えることだと思います。それが実現不可能だと言うのなら災害救助隊を新たに創設するのでも良い。なにせ水害に弱い国のトップテンの中に主要都市が入っているのですから絶対に必要です。

実際、今回も自衛隊のヘリコプターが救助で活躍してくれましたが、人命救助の合理性から考えれば迷彩塗装などマイナスなのです。救助隊は要救助者に見えなくてはいけないからです。自衛隊は敵に見えないように迷彩塗装しているのです。
それにも顕著なように、人を助ける論理と人と殺し合う論理はまったく違うのです。だから自衛隊のままで災害救助を行うのは合理的ではないのです。もっと人命救助に特化し、もっぱらその装備ばかりを揃え、その訓練ばかりを積んだ部隊を作った方がいい。
そして、これまで一度も使ったことのない戦車や戦闘機をどんどんハイテクの消防車や救急車などに変えてしまえば良いのです。さらにトヨタや日産に粋をつぎ込んでもらって世界中が驚き、歓迎するような災害対策機器を作りだしたらいい。
実際、自衛官の多くが災害救助活動に惹かれて入隊しているとも聞いています。自衛隊自身、積極的にそのような募集も行っています。だから変えてしまえばいいのです。繰り返しますが、水害の世界のワーストテンに主要都市が入っているのですから。

もちろんそこまではすぐには到達できないかもしれません。だとしたらまずはぜひそれぞれの地元で、行政に災害対策の強化を訴え、そこへの市民参加を求めて欲しいと思います。
そのことで市民側の防災意識、命を守り、町を守ることへの参加意識を高めていく必要があります。
そうした本当の意味での能動性の発揮を見据えつつ、たった今は、ともあれこの豪雨をしのぎ、命を守ることに力を注ぎたいです。
関東・東北地方の方々に再度、早目の避難を行うこと、「とっとと逃げる」ことを訴えます。すべての方の安全を心の底から祈っています。

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