2015.09.05

明日に向けて(1143)原発事故の中で救助や避難誘導を行う際の注意は?(川内原発再稼働の危険性を見据えて-2)

守田です。(20150905 00:30)

前回、原発からの命の守り方の基本を書きましたが、今回はこれに加えて、「とっとと逃げる」と言っても、人を抱えていて逃げられない場合、あるいは人々を逃がすための仕事につかなければならない場合について述べたいと思います。
この点は僕が篠山市消防団の方たちにお招きいただいて何回も講演する中で考えてきたことです。実は正直なところ常に僕には悩みがあります。誰にも「とっとと逃げる」ことをお勧めしたいからです。
しかし篠山市の防災訓練に招いていただき、その場で原子力災害対策の講演をしたときに、その日の訓練に参加していた自衛隊のみなさんをみて深々とこの方たちのことを考えなくてはいけないと痛感しました。警察官、消防隊もそうです。

防災訓練の場では自衛官の方お話を聴くこともできましたし、その後も各地の消防署の方などにもお話をうかがってきましたが、僕が見る限り、隊内できちんとした放射線防護教育を受けている方はほとんどいませんでした。
自衛隊には核戦争を想定した部隊もあるのでそれは別格だとは思いますが、ぜひこうした特殊な任務に疲れる方たちやそのご家族の方にも、放射能からの身の守り方を身に着けて欲しいと切実に思うのです。
篠山市を見ていても、火事や水害が起きたときに真っ先に現場に駆けつけるのは消防団の方たちです。そのあとに消防署がやってくる場合が多いですが、原子力災害は自然災害との複合として起こる可能性が高いのその状況でどうするかが問われます。

実は僕は明後日6日に、再び篠山市消防団に呼んでいただいて原発が事故を起きたときのことをお話するのですが、今回は、放射能事故の際の人命救助作業、避難の誘導を行う場合に必要な知恵を話して欲しいと依頼されています。
そこで僕が強調しようと思っているのは事故の初期こそ最も徹底した放射線防護が必要だということです。なぜかと言えば放射能には半減期があるので、事故で原子炉から放射能が飛び出してきた時ほど放射線値が高いからです。
もっとも福島原発事故の場合、だんだんに事故が進行し、後から後から放射能が出てきました。「原子炉から放射能が飛び出してきた」時が続いたわけで、そのように事故が推移することもあり得ますが、ともあれ事故直後ほど徹底した防御が必要なのです。

その上で今回は具体的に消防団での対応に即して以下の点を提案するつもりです。
①ヨウ素剤を飲んで出動。飲んだ時間をメモしておく。
②曇り止め用のゴーグルを着用する。
③精度の高いマスクを使う。(場合によっては上から安いマスクを重ね頻繁に交換する。)
④カッパなどを衣服の上から着用する。
⑤肌の露出を可能な限り抑える。
⑥作業中に水を飲むときは必ずうがいをする。
⑦使ったものは作業終了時に洗うか捨てる。
⑧靴やカッパを絶対に家に持ち込まない。
⑨汚染されたものは躊躇せずに捨てる。
⑩24時間毎にヨウ素剤を追加でのむ。

まずは安定ヨウ素剤を服用することです。安定ヨウ素剤は24時間持つので、人命救助や避難誘導などをされる場合は、とにかくすぐに飲んでしまい、出動することです。効果は24時間あるのでその度に連続で飲みます。
このため篠山市ではすでに市民分の安定ヨウ素剤の備蓄を終えていますが、今後、希望者への事前配布を行う予定です。とくに消防団には優先的に配るとともに消防団分室などにも備蓄することが必要だと考えています。
なお安定ヨウ素剤の効果、飲み方、副作用がほとんどないことなどについては、提言に詳しく書いてありますのでご参照ください。安定ヨウ素剤に関する知識を身につけて置くことは、ときに人に飲むのを進める側に立つ場合もあるのでより重要です。

続いてとにかく被曝防護のためには、放射性微粒子を身体の中にいれないことが大事であり、そのためにゴーグルやマスクなどが必須であることを強調したいと思います。
その際、ゴーグルは曇り止めをしてないと作業ができず、そうなると人は退去できずにゴーグルを外しがちなので、あらゆる天候条件の中で使えるものを用意しておいて欲しいです。ちなみに曇り止め用でもホームセンターで1000円ぐらいで買えます。
マスクもN100仕様などのものを着用した方が良い。これも1枚1000円ぐらいします。そのマスクを頻繁に交換して使うのが原則ですが、1000円のものを潤沢に持てない場合は安いものを上から併用し、その交換を繰り返すのも次善の手です。

カッパなどを着るのも、家や自分の寝処に放射性物質を持ち込まないための処置です。本来はタイベックスーツなどを着るのが理想ですが、自然災害とのセットの状況では、ハードな動きにも強いカッパの方が合理的だとも思います。
行動中はこれを着ていて、終了時に水でできるだけ丁寧に付着物を洗い流し、なおかつそれを家や寝処に持ち込まず、外に干す形で使用することで、作業後に放射性物質と身体を切り離すことを狙います。
なおこのために篠山市消防団はすでにゴアテックス製の赤いカッパを全隊員分購入してあります。このことで少しでも放射性微粒子のとり込みを避けようということです。赤を使用するのは要救助者から見えやすいためです。

さらに肌の露出をできるだけ避けることです。首元などが出ないようにスカーフなどを使用します。手ぬぐいでも良いですが、暑いと外しがちなので、行動中でもつけていられるものを普段から選択しておきます。
また放射能が降る中で飲食をすることは危険ですが、水を飲まねばならないことは必ず生じるので、うがいをしてから飲むことを徹底します。
汚染されたものは可能な限り早く交換する。洗うことよりも躊躇せずに捨てることを選択するなどで、放射性微粒子をとりこまないように徹底します。なお、これらはインフルエンザ対策や花粉症対策などで行われていることをそのまま適用できます。

もちろんこれらでも放射能対策は十分ではありません。可能なら防毒マスクをした方が良いし、タイベックスーツを来て破れたら何度も変えた方が良いですが、これらは予算との相談になります。
またそれでも外部被曝はまったく避けられないので、ガラズバッチをつけて被曝量の管理もした方が良いですが、これも予算がつけられるのかの判断になります。原発事故対策は徹底度を深めればどこまでもお金がかかる終わりのないものです。
ですからどこまで対策を施しても十分にはならないのだけれども、少しでも対策をした方がその分有利と考えて、予算が確保できる最大の範囲での対策をとっていただきたいと思います。

さらに、それでも被曝は避けられないので、さらに身体を守るために以下の点もお話しようと思います。
①放射能下の活動を細かく記録することです。一つは自分の防護の点検のためです。同時に将来の医療保障を得るのに記録が残っていた方が少しでも有利だからです。場合によっては裁判を闘うことになる可能性もあります。
②被曝に対しては免疫力を上げるのがベストなので、抗酸化効果の強いビタミンCを積極的にとるようにするとよいです。また長崎の被爆時の秋月医師の提言「水(汚染水)を飲むな。味噌を食べろ。玄米を食べろ。白砂糖をとるな」を奨励したいです。
これらの点は現代医学では証明できていないことが多いのですが、有効な薬がない中で、マクロビオティクスなどの知恵の援用として行われ、効果をあげたと言われていることをおさえて欲しいと思います。
③さらにできるだけ良質の睡眠をとる、 困難を一人で抱え込まないなども重要です。

被爆医師である肥田舜太郎さんは、被爆者に次のように語り続けました。
「被曝したら治す医療はない。治す薬もない。どうするか。腹を決める。覚悟を固める。その上で開き直る。開き直って身体に良いことはなんでもやる。なんでもやって放射能が暴れ出すことを押さえこむ。これを実践せよ!」。
実際にそのことで被爆者に力と勇気を与え、たくさんの方が病を克服して生き延びていくことを支えられました。こうしたことも知っておくと良いと思います。

人命救助や避難誘導、事故対応などに当たる方はこれらのことを頭に入れつつ行動して欲しいです。
もちろん「こんな簡単なことではダメだ」という意見もあるかと思います。それならばどうすれば良いのかを考えだして教えてください。その際、実行可能なことを提言してください。
何度も言いますが、実際に原発は稼働してしまっています。稼動してなくても燃料プールやもんじゅなど、いつ危機に陥るかも分からない核施設がたくさんあります。だからこそ少しでも実のある事故対策を重ねておくことが大事なのです。

以上のことを今、本にもまとめている最中です。『原発からの命の守り方』のタイトルで近いうちに出版に漕ぎ着けたいと思っていますが、ともあれここに書いたことを参考にみなさんそれぞれで原発で事故が起こった際の対応を考えを抜いてください。
何があっても原発から命を守り抜き、生き延びるすべを考えましょう。そのためのリアリティをできるだけ大きくしていきましょう。実はその積み重ねの中では原発に賛成・反対を問わずに、原発事故の恐ろしさへの認識を広げることもできます。
繰り返しますが、リアルに備えることが大事です。またこうした備えを行うことは必ず他の災害への対応力も強化することに繋がります。命を守る術を私たち民衆の側から逞しく育てていきましょう!

終わり

 

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