2015.07.09

明日に向けて(1103)政府と九電は火山学会の科学的提言に従い川内原発再稼働を断念すべきだ!

守田です。(20150709 07:00)

今回も川内原発再稼働問題を扱いたいと思います。

これまで原子力規制庁の新規制基準が、技術的にみて大きなあやまりを含んだ危険極まりないものであることを後藤政志さんの提言に学びつつみてきました。
これに付け加えるべきは火山学会が繰り返し「噴火の予知などできない」と大きな声を上げている点です。
なぜこれが重要なのかと言うと、一つに川内原発が日本の中でも有数の火山地帯に立地しているからです。二つにそれでも九電が安全だ主張するのは「噴火の予知がなされたら燃料棒を降ろす」としているからです。

しかし運転中の核燃料は膨大な放射能を持っており、放射能が放射線を発して違う物質に変わっていく「崩壊」の過程で出る熱量も凄いので、運転を止めてすぐに降ろすことは不可能です。
何年もの間、原子炉のすぐ横の燃料プールで冷やしてからやっと次の処理に移れるのが実情です。
そのためかなり前から噴火の予知ができないと運転中の燃料棒を安全に降ろすことなどできないわけですが、火山学会の方たちはとてもではないがそんな予知などできないと繰り返し明言しているのです。

にも関わらず、九州電力はこうした火山学会に集う科学者たちの提言を一切無視した主張を川内原発差止仮処分裁判で主張しました。
担当の裁判所である鹿児島地裁も本年4月22日に、九電の科学的裏付けなど一切ない主張をまったく無責任にも鵜呑みにし、仮処分申請の却下決定を下してしまったのでした。
しかもこの決定の中で鹿児島地裁は「可能性が十分に小さいとは言えないと考える火山学者が火山学会の多数を占めるものとまでは認められない」とまで断じています。

これに対して判決直後に、火山学会重鎮の火山噴火予知連絡会会長で東京大学の藤井敏嗣名誉教授がこの決定を全面否定する以下のようなコメントを出しています。
「カルデラ火山の破局的な噴火については、いつ発生するかは分からないものの、火山学者の多くは、間違いなく発生すると考えており、『可能性が十分に小さいとは言えないと考える火山学者が火山学会の多数を占めるものとまでは認められない』とする決定の内容は実態とは逆で、決定では破局的噴火の可能性が十分低いと認定する基準も提示されていない。
火山による影響については、今回の判断は、九州電力側の主張をそのまま受け止めた内容で、しっかりとした検討がされていないのではないか。」

なお鹿児島地裁の仮処分申請却下決定のあやまりについては以下の記事をご覧下さい。

明日に向けて(1076)川内原発再稼働容認判決は火山学会の噴火の予知などできないという常識を無視している!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9703bfd33037c139a626e3fb5aa37eb0

火山学会は裁判以前から「噴火の予知ができない」という主張を繰り返し行っています。
御嶽山の噴火で大きな被害が出たときも、それこそ必死になって、噴火が現代科学では的確に予想ができないが故の危険性を訴えていました。
この点については以下の記事をご覧下さい。

明日に向けて(972)原子力規制委の噴火評価はデタラメ!火山学会の誠実な提言を受け入れるべきだ!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9f924552b380fc1efc744322658a6fad
今回、さらに取り上げたいのは岩波書店の『科学』6月号に掲載された「火山学者緊急アンケートー川内原発差止仮処分決定の記載に関連して」の内容です。
電子版ページで特別無料公開してくださっています。岩波書店のこの取組と無料公開に感謝しつつご紹介したいと思います。なおweb上のページは以下の通りです。
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/index.html

アンケート項目は5つありますが、ここでは
「(1)「モニタリングを行うことで,少なくとも数十年以上前に(破局的噴火の)兆候を検知できると考えている」(決定主文75 ページの九州電力の主張)に対する所感をお願いします。
(5)決定主文に対してお感じのことをお願いします。」
という2つの項目への回答からの抜粋を行ってみたいと思います。まず(1)への回答から抜粋します。(原文では1~5への回答をそれぞれの方が述べていますが、ここでは1と5への回答抜粋を列挙します)

小山真人氏(静岡大学防災総合センター)
「もしそれほど長い猶予時間をもってカルデラ火山の巨大噴火予知が実現できるのなら,それは噴火予知の革命です。九州電力には,ぜひ国際学会で発表し,査読ジャーナルに論文を書いて頂きたいと思います。審査を通るかどうかは知りませんが。」
「綿密な機器観測網の下で大規模なマグマ上昇があった場合に限って,数日~数十日前に噴火を予知できる場合もあるというのが,火山学の偽らざる現状です。機器観測によって数十年以上前に噴火を予測できた例は皆無です。」
「こうした現状を考えれば,「少なくとも数十年以上前に(破局的噴火の)兆候を検知できる」という九州電力の主張は荒唐無稽であり,学問への冒瀆と感じます。」

藤井敏嗣氏(山梨県富士山科学研究所所長,火山噴火予知連絡会会長)
「多くの場合,モニタリングによって火山活動の異常を捉えることは可能であるが,その異常が破局噴火につながるのか,通常の噴火なのか,それとも噴火未遂に終わるのかなどを判定することは困難である。
いずれにせよ,モニタリングによって把握された異常から,数十年先に起こる事象を正しく予測することは不可能である。」

匿名
「現代の監視,観測体制で,破局噴火を経験,観測したことがないので,どのような推移(特に時間推移)で噴火に至るのか,破局噴火をどこまで一般化して考えることができるのか,実用的な“検知”が可能な段階に現在あるとは言えないと思います。
九州電力の主張は単なる期待ないし希望であり,これを了とした決定主文の判断は理解できません。」
「予測できないことを一般に列挙するのは,科学者としては少々残念ですが,これが現実です。」

匿名
「数十年以上前に兆候を検知して,巨大噴火を予知することはできません。
地球物理学的観測(地震,地殻変動,電磁気等)や火山ガスの分析により,「火山活動の異常」は検知可能です。
しかし,現段階では,そのシグナルをもとにして噴火発生の確率や噴火規模・様式を科学的には予測できません。」

つづいて項目(5)への回答です。

小山真人氏(静岡大学防災総合センター)
「決定主文には,全体として九州電力の主張がほぼ丸ごと受け入れられた上,火山学者の主張を恣意的に取捨選択したり,都合よく解釈を加えたとみられる箇所が多数見られます。」
「上記の火山学会提言(2014 年11 月2 日)について決定主文は「新規制基準及び火山ガイドの内容を否定する趣旨までは含んでいないとみる」(178 ページ)と書き,同提言の根幹部分である「噴火警報を有効に機能させるためには,噴火予測の可能性,限界,曖昧さの理解が不可欠である。火山影響評価ガイド等の規格・基準類においては,このような噴火予測の特性を十分に考慮し,慎重に検討すべきである」を取り上げていません。
そもそも火山学会が異例の提言に踏み切ったのは,火山影響評価ガイドや,それにもとづく適合性審査会合の内容があまりにも火山学の現状を無視した杜撰なものであるからですが,そのことを全く理解していません。」

藤井敏嗣氏(山梨県富士山科学研究所所長,火山噴火予知連絡会会長)
「九州電力の主張をほとんど無批判に受け入れているようにみえ,裁判所が証拠書類を独自に吟味したとは思えない。
また,決定主文には,委員会等で九州電力の提案や規制委員会による火山ガイドなどについて説明し,それに関して具体的に意見聴取を行わないまま,批判的意見がなかったから火山専門家が承認したものとみなせるといった文言が随所に認められるが,これは一方的で,恣意的判定である。
異論を表明しない限り同意したとみなすという裁判所の判断は異常であるが,さらに当事者たちが説明を受けただけで意見を挟む余地がなかったなどとマスコミ等を通じて表明していることからすると,裁判所の判断は間違っていると言わざるを得ない。」

匿名
「火山関連部分で“多数の学識者による議論を尽くした上で策定された新規制基準”(p. 75)とは知りませんでした。
火山影響評価ガイドの立地不適の条件には,「設計対応が不可能な火山現象が原発に到達する可能性が十分小さいと評価」されることが挙げられています。
阿蘇,小林,加久藤,姶良,阿多,鬼界カルデラが川内原発から160 km 以内にあって,第四紀後期に複数回当該原発に到達した実績があるのであるから,「立地不適」と判断するのが評価ガイドの趣旨に沿うと私は考えます。」

匿名
「司法が判断したことなので,コメント無し。」
以上で抜粋を終えます。

全7ページからの抜粋ですのでそれぞれの方の主張の部分しか取り上げていませんので、ぜひ、全文をお読みいただきたいのですが、それでもこの部分を読むだけでも火山学会に集う科学者の方たちの「学問への冒瀆」への怒りが伝わってくると思います。
火山学会の方たちは、噴火における災害から人々を守ろうと苦闘している方たちでもあります。だからこそ予知が的確にできないことに悔しさも感じつつ、しかしそのことを知ってもらうことこそ人々の安全につながると考えて提言を繰り返しているのです。
しかも日本には世界の火山の1割もがひしめいてるひもかかわらず、文科省による火山学への予算配分は驚くほど少なく、わずか数十名で研究を重ねているのが火山学会の実情でもあります。(諸外国では10倍以上の規模を誇る国もあります)
ここには自然災害の脅威を無視し、本当の意味での「国防」など何も考えていないこの国のあり方が如実に表れてもいますが、政府のそうした姿勢に対し、私たち民衆こそ、こうした誠意溢れる科学者たちの提言に耳を傾けなければなりません。

なお項目(3)に対する小山真人氏の回答の中でこれは紹介したいと思ったところがあったのでその点も掲載しておきます。
「こうした巨大噴火を起こすカルデラ火山は日本列島に10個程度あり,その半数が九州(阿蘇以南)とその近海に位置しています。このうち川内原発付近に実際に火砕流を到達させたカルデラ火山は,姶良,阿多,加久藤,小林の4火山です。」
なんと日本列島の中にある巨大噴火を起こす10の火山のうちの4つが川内原発付近にあるとのことです。重要なポイントだと思いました。

政府と九電は「噴火の数十年前からの予知などとてもできない」という火山学会の方たちの科学的提言に従い、川内原発再稼働をただちに断念すべきです。
新規制基準の技術的なあやまりとともにこの点も強く訴えていきましょう!

Tags:

« | | | »

Trackback URL

Comment & Trackback

Comment feed

Comment

  • ?
  • ?
  • ?