2015.07.07

明日に向けて(1101)あらためて川内原発再稼働計画の愚かさを問う!

守田です。(20150707 22:30)

本日7日、九州電力は川内原発1号機の再稼働に向けた燃料棒の装填を開始しました。
10日までの4日間で核燃料157体を運び込み、8月中旬の再稼働を目指すと言われています。
川内原発再稼働に向けた九州電力のこの動きは、私たちを再度の放射能被曝の危険にさらす暴挙であり、けして認めることはできません。
九州電力への抗議を表明するとともに、川内原発再稼働の試みがいかに愚かなことなのかを再度、捉え返しておきたいと思います。

そのために「明日に向けて」(1060)~(1065)で連載した内容(2015年3月24日~4月6日)を再度、ピックアップしたいと思います。ポイントを解説し、当該記事のアドレスを示しておきます。
なおこれらの連載は、福島原発事故以降、事故の進展や規制庁による新規制基準の提出などに即して、純技術的側面からもっとも適格な解説を行ってきてくださった元格納容器設計者・後藤政志さんの発言に学んで行ったものです。

まず第一に指摘すべきは、そもそもの九州電力が行った再稼働対策に向けた許認可申請があまりに杜撰に行われたことです。
この点、後藤さんは以下のように述べています。

「工事認可の内容は耐震が主になっている。従来のものはあまり変わってなくて、地震動を変えたからそこだけを修正するとなっている。あとは過酷事故関係となっている。
私が一番言いたかったのは、入り口で見てびっくりしたことだ。膨大な、全部で万のページになるものだが、そのうちの数千ページをみた。
プラントの配置関係を全部伏せて白抜きになっている。どこに何があるか分からない状態になっている。
耐震強度を計算する時に耐震の解析モデルがあるが、それの高さ方向の値がすべて白抜きになっている。

もっとすごいのは強度計算について、例えばあるものに力がかかって、それで計算をして発生する応力、計算上出てくる力に材料が耐えられるかなどをチェックする。
ところがその途中部分も白抜きになっている。大量にそれがなっている。
ひどいものになると何の計算書か分からない。その中で構造についても伏せているものもある。

以前から工事認可で伏字はあったが、こんなにひどいものは初めてみた。論外だ。はっきりいって読む気がしなくなった。ばからしくて。」

この後藤さんの怒りに満ちた発言だけで十分だと思いますが、要するに川内原発再稼働に向けた許認可申請は、主要部分を公開せずに行われたのです。
事故対策は多くの人々に影響するものであり、当然にも広く明らかにしてなさなければならないのに、重要部分をみんな隠してしまったのです。規制委員会もこの隠蔽を認めました。ここには許認可申請のあまりの杜撰さが表れています。

明日に向けて(1060)あまりに杜撰な川内原発工事認可申請(後藤政志さん談)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/0870cd08844d3d12e17ae6345ae8b79b

第二に再稼働の是非を審査する、規制庁の新規制基準に大問題があります。
端的に新しい規制基準では重大事故が防げないことを前提にしているということです。
福島第一原発の教訓を踏まえて、重大事故を絶対に起こさないようにする・・・とは言ってないのです。
起こさないように努力するが、それでも重大事故は発生しうる前提に転換したのです。大事故がありうることが前提に再稼働を認めると言っているのです。

事実、規制委員会は繰り返し、「新規制基準に通ったからと言ってその原発が安全だとは言わない」と述べています。
重大事故は起こり得るので対策した。安全ではないが、精一杯の対応は考えたと言っているのです。
この最も重大な点があまりにハイライトされていません。マスコミも本当に不十分にしか伝えていません。だからこの重要なポイントを意図的にずらした「規制委員会が安全だと言った原発から動かす」などと言う政府の詭弁を批判しきれないのです。

そもそも福島原発事故まで、政府は設計上の想定を越える事故という意味での重大事故による放射能の原発敷地外への大量漏れは絶対に起こらないと公言してきたのでした。
言い換えればそれが原発を動かすにあたっての社会との約束事でした。だから原発敷地外での広範囲にわたる被曝防護の準備などもまったくなされていなかったのでした。
それどころかその場合の法律すら作られていませんでした。とくに原発の外に大量に飛び出した放射能をどうするのかの法的取り決めが一切なく、東電が「原発敷地外に出た放射能は自分たちのものではない」などと居直る根拠にもなってしまいました。

大事なことはこの大約束が壊れたことは、それまでの原発稼働にあたっての社会との約束が破られたことを意味するのですから、当然にも絶対に敷地外に放射能が漏れないようになるまでは原発再稼働は認められないということです。
ところが政府や規制庁は「これまでは重大事故を前提していなかったのが良くなかった。これからは重大事故を前提にする」と開き直ったのです。それが新規制基準の内容です。
何よりも私たちが許してはならないのはこの開き直りです。最低でも福島原発事故の前まで政府の立場を戻させないといけない。「絶対に大規模な放射能漏れはないから原発を運転させてくれ」と言ってきたのですから最低限これを守らせないといけません。
この点を繰り返し強調していきましょう

明日に向けて(1062)原発再稼働に向けた新規制基準は大事故を前提にしている!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/3d3e4b0cb07ae7a68734a3b52c9c693f

第三に規制委は「福島第一原発事故の教訓」を参考に新基準を作ったと言っているのですが、そもそも福島原発事故はその全容がまだ解明されていません。
それどころか1号機から3号機は放射線値が高すぎて内部がほとんどみれず、溶け落ちた核燃料の状態やありかさえつかみ切れていないのです。

そもそも事故は継続中なのです。汚染水の発生から明らかなように格納容器のどこかが壊れているのは確実ですが、肝心のどこかが分かっていない。事故がどのように進展してどこが壊れたのかも分からないのです。それでなぜ対策ができるのでしょうか。
原子力規制委員会が打ち出した新審査基準は、今、分かっている事象だけへの対策を考えることであり、事故の全体への対策になっていないのです。後藤さんはこれを「事故のつまみ食い」と指摘しています。

明日に向けて(1063)福島の教訓に基づく重大事故対策などまだできるわけがない!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8718f402298f072498d32eb7f59478f8

第四に、規制委が新基準に盛り込んだ地震対策のあやまりです。ここにはそもそも地震の揺れの大きさは現代科学で十分に解析できるのかという問題が横たわっています。
この点で重要なのは8年近く止まっている柏崎・刈羽原発を襲った2007年中越沖地震の地震動です。この原発の設計基準地震動は450ガルでしたが、実際には1699ガルの地震動がここを襲ったのでした。4倍もの揺れでした。
その後、東電は地層の解析を行ってなぜ予想の4倍になったのかを説明したのですが、実は後になって4倍になった理屈など幾らでも作ることができます。

重要なのは450ガルと解析したものが1699ガルと4倍もずれていたということで、むしろそこでは現代科学ではまだ地震動の揺れを正確に捉えることができないことの方がクローズアップされたのだということです。
にもかかわらずこの重大問題に目を伏せたまま、規制委はあたかも地震のことを現代科学で把握できるかのような想定に基づいて地震対策の指針を出し、認可を与えています。これも大きなあやまりです。

明日に向けて(1064)原子力規制庁・新規制基準の断層と地震動想定のあやまり(後藤政志さん談)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/a3f0e8c33a857d8a36a56280845eedc1

第五に、新規制基準における重大事故対策の内容が、事故を収めるどころかむしろ拡大しかねないより危険な内容をも含んでいることです。
とくに重要なのは、川内原発や高浜原発で採用されている加圧型原子炉の格納容器には、東電のような沸騰水型原発と違って窒素が充填されておらず、水素爆発が起きやすいので、イグナイタ―をつけて水素が溜まる前に燃やしてしまおうとしていることです。
しかし福島原発事故で明らかになったように、重大事故ではそれまでの設計上の想定が突破されているのですから、こうした非常用の装置も期待通りに動くとは限りません。
事実、ベントにしても1号機と3号機は設計上、開閉を司ることになっていた電源を欠いていたために、圧縮空気を送り込んでようやく開けたのでした。2号機はそれも間に合わず格納容器が激しく損傷してしまいました。

同じようにイグナイタ―も期待した時に確実に着火できるとは限りません。非常事態下で焦りながら必死になって何度か着火を試みる。それでようやく火が着くようになったときに、すでに水素が危険な状態まで溜まっていたらどうなるのか。
水素を燃焼させて溜まるのを防ぐどころか、格納容器を破壊するにたる水素が溜まった段階で着火してしまうことになりかねないのです。重大事故対策どころか、格納容器の内側からの大爆発という福島原発事故をもはるかに越える惨劇が起こってしまいます。
その意味で、付け焼刃的に加えられた重大事故対策は、役に立たないばかりでなく、かえって非常に危険な装置に変わってしまう可能性すら大きくあるのです。

明日に向けて(1065)新規制基準の重大事故対策はあまりに非現実的でむしろ危険だ!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/d4c8272d4c01e698efd2e68600b4b4af

明日に向けて(1075)川内原発再稼働も禁止すべきだ!~加圧水型原発過酷事故対策の誤りを後藤政志さんに学ぶ~
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9605e1dc395c1d33815861dad65ac36a

以上、新規制基準はなんら原発の稼働の安全性を保障するものではなく、その点からも川内原発の再稼働は絶対に認められません。
これらの点をさまざまな機会を通じて社会に広く浸透させていきましょう。そのことで再稼働を食い止めること、仮に強行されたとしても一刻も早く再度、止めるためことを可能にする民衆の知恵を強化していきましょう。

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