2015.03.29

明日に向けて(1063)福島の教訓に基づく重大事故対策などまだできるわけがない!

守田です。(20150329 19:00)

高浜原発再稼働に向けて、原子力規制庁は新規制基準への合格内容を説明するために、3月3日から高浜町のケーブルテレビでビデオを流し出しました。
この内容の文字起こしを含んだ批判的検討を前回に続いてお届けします。全体で29分のビデオの8分55秒から17分10秒までの分です。
当該ビデオを掲載している原子力規制委員会のHPも紹介しておきます。

高浜発電所に関する原子力規制委員会の審査概要について
https://www.youtube.com/watch?v=azZk3mPHUrg

原子力規制委員会
http://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/shinsa_setsumei.html

ここで原子力規制委は、関電の対策への審査ポイントを説明しています。福島第一原発事故の教訓に基づき、前半で重大事故防止策について、後半で重大事故が防止できなかった場合の対策についてとなっています。
前回も述べたように、重大事故を防止できなかった時の対策を云々する時点で、つまり重大事故発生が完全には防げないと認めている時点で、再稼働はまったく認められませんが、今回は重大事故対策そのものも信用性が低いことを指摘します。
一番のポイントは、元原子炉設計者の後藤政志さんなどが繰り返し指摘しているように、規制委が「福島第一原発事故の教訓」などと言っても、そもそも事故そのものがまだ解明されていないことです。放射線値が高すぎて全く内部がみれないからです。

それどころか事故は継続中です。汚染水の発生から明らかなように格納容器のどこかが壊れているのは確実ですが、肝心のどこかが分かっていない。事故がどのように進展してどこが壊れたのかも分からないのです。それでなぜ対策ができるのでしょうか。
原子力規制委員会が打ち出した新審査基準は、今、分かっている事象だけへの対策を考えることであり、事故の全体への対策になっていないのです。後藤さんはこれを「事故のつまみ食い」と指摘しています。
福島第一原発事故の教訓を踏まえるというのなら、当たり前のことですが事故のすべてが分かってからでなくてはなりません。それでなければ対策をしたなどとはとても言えません。何せ対策を施すべき対象が分かっていないのだからです。

その上で最も大きなポイントである地震対策への批判も行っておきたいと思います。
ここで規制委は、断層について述べていますが、しかし最近、断層について分かってきた知見として、地層は固いものの上に柔らかいものが乗って構成されているのだけれども、下層と上層が必ずしも同時に動いてはいないと言う事実があります。
重要なのは上層の柔らかい層が動かなかった場合はその下で起こっている地震の揺れを断層として把握できないことで、実際には7割ぐらいがこのような構造になっているということです。要するに現代科学はまだ断層を完全に把握できていないのです。

同時に規制委は、高浜原発の設計基準地震動を550ガルから700ガルに引き上げたと言っています。しかしそもそも地震の揺れの大きさはこのように簡単に解析できるのか。
この点で重要なのは8年近く止まっている柏崎・刈羽原発を襲った2007年中越沖地震の地震動です。この原発の設計基準地震動は450ガルでした。しかし実際には1699ガルの地震動がここを襲ったのでした。4倍もの揺れでした。
その後、東電は地層の解析を行ってなぜ予想の4倍になったのかを説明していますが、実は後になって4倍になった理屈など幾らでも作ることはできます。

重要なのは450ガルと解析したものが1699ガルと4倍もずれていたということで、むしろそこでは現代科学ではまだ地震動の揺れを正確に捉えることができないことの方がクローズアップされたのでした。
にもかかわらずこの重大問題に目を伏せたまま、規制委は今回も550ガルから700ガルに上げたから重大事故対策になっていると語っています。しかし実際に起こりうる地震が700ガル以内であるという科学的保証などないのです。
ここから明らかなことは、断層の把握の面から言っても、地震動の把握の面から言っても、原発を設計するだけの条件が整っていないことです。したがって今回の対策が重大事故を引き起こしうる地震への備えになっているとはとても言えません。

なお今回の地震対策に関する検討は後藤政志さんの以下の講演に学んで作成しました。ぜひこちらもご覧下さい。

後藤政志(工学博士)川内原発が溶け落ちるとき-元・原子炉格納容器設計者が問う原発再稼働
2015年1月31日 薩摩川内市まごころ文学館にて講演 該当内容は27分30秒から36分23秒まで
https://www.youtube.com/watch?v=4QEwDJhrwFE&feature=youtu.be

以下、原子力規制委の説明部分の文字起こしを掲載します。

*****

新基準規制にのっとって関電がこうじるとした重大事故を防止する対策に対し、原子力規制委の審査のポイントを説明する。

【地震への対策について】
地震への対策において重要なのは想定する最大の揺れを評価すること。その上で発電所の重要な施設はその揺れに耐えなければならない。
発電所を設計するために設定する地震の揺れの大きさを基準地震動という。この設定が適切に行われたかどうか審査した。
例えば地震を起こす可能性のある敷地周辺の断層の評価で、関電は当初若狭湾にあるFO-A断層とFO-B断層が連動して活動すると評価していた。
しかし審査の結果、内陸側にある隈川断層の連動も考慮する必要があるという結論に達し、3つの断層が連動して活動するものと評価することにになった。
その他、地震動の大きさを決める上で重要な地震発生層の範囲などについても見直しが行われた。その結果、基準地震動は申請当初の最大加速度550ガルから700ガルに引き上げられた。

【津波への対策について】
原子力発電所の津波対策は福島第一原発事故の大きな教訓だ。
地震対策と同様に想定する最大の津波である「基準津波」を設定した上で、津波が到来しても原子炉の冷却機能など重要な機能を損なわないように防護する必要がある。
基準津波の審査では、海底の断層で発生する津波の想定を見直し、地すべりとの組み合わせを考量することを求めた
その結果、津波の高さが放水路の奥で最高6.7メートルとなり、対策を講じなければ原子炉建屋など重要な施設のある3.5メートルの敷地に津波が到達する可能性のあることがわかった。
そのため放水口側に高さ8メートルの防潮堤、水路の途中に高さ8.5メートルのゲートを設定するなど津波侵入を防ぐ対策を講じることになった。
審査ではゲートの閉め方を多重化し、津波が到来した時に確実に閉められるようにする方針についても確認を行った。

新基準では地震、津波以外にもさまざまな自然現象や人為事象を想定するとともに、これらの組み合わせを想定することも求めている。

【新たに追加された竜巻への対策について】
審査では秒速100メートルの竜巻に対して車両が飛ばされないようにする対策や、竜巻によって飛んでくるものから守るための対策を確認した。
海水ポンプ室を竜巻によって飛んでくるものから守るための設備を設置。
設備面の対応だけでなく、竜巻対策のための設備の操作手順、教育・訓練の定期的な実施、運用面の対応方針についても確認した。

【あらたに追加された森林火災対策について】
審査では施設外の火災の熱による壁や天井の表面温度を押さえることや有毒ガスが運転員の作業空間へ影響を及ぼさないようになっていることを確認した。
森林火災対策として森林伐採により18メートル以上の防火帯を設定し、施設を森林火災から守るようにしている。
防火帯の維持、管理、初期消火活動のための手順、教育・訓練の定期的な実施。このような運用の方針についても確認した。

【新たに追加された内部溢水対策について】
施設の内部には原子炉や設備を冷やすために多くの水がタンクや配管にある。これらの水が例えば地震の影響によってあふれ出し設備が浸かったり故障することが考えられる。
審査ではまず水に浸からないようにする。また水に浸かったとしても故障しないことを確認した。
水や蒸気がかからないようにする。水や蒸気がかかっても故障しないことを確認した。
水に浸からないようにする堰や水がかからないようにする保護カバーなどを設置した。
設備面の対応だけでなく、保護カバーの保守管理、水密ドアを閉じる手順、教育・訓練の定期的な実施など運用面の方針についても確認した。

【電源の確保について】
福島第一原発事故の大きな原因は地震と津波により電源のすべてを失ったことにあった。このため新規制基準では電源設備について厳しい要求を課している。
常設の非常用電源を含めたすべての電源が喪失した場合、つまり全交流電源喪失の場合の対策として、すべての電源を喪失しても原子炉の冷却に必要な電源を確保することを求めている。
審査ではその対策として例えば空冷式非常用発電装置や電源車を設置し、原子炉にタンクから水を注水するためのポンプの電源も確保するものとなっていることを確認した。
外部からの支援を受けられないときに備えて、発電所内に7日分の電源用燃料を確保することを確認した。

続く

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