2014.12.19

明日に向けて(998)読売新聞が安倍政権は民意を得ていないと自民党議員を説得?(総選挙を捉え返す-2)

守田です。(20141219 22:00)

前号の「明日に向けて」で「史上最低の投票率こそ問題。安倍政権は信任を全く得ていない!」と書きました。
しかしネットなどを読んでいると、民主的な側にスタンスを置く人々の間に、「ヴィジョンを出せなかった野党の敗北」という見解がけっこう多くあります。なぜ自民党の圧勝を許したのか・・・みたいな論調です。
そうした論調はさらに野党のふがいなさとか、対与党統一候補を作れなかったからよく無かったとか、なぜ人々はこんなに大事な選挙なのに棄権したのかという方向にむかいがちです。

これを聞いて僕は先日、滋賀県で対談した映画監督、鎌仲ひとみさんの言葉を思い出しました。
「日本人はまじめで責任感が強いから、ひどいことをされたと思うよりも、避けられなかった自分が悪いとすぐに思っちゃうのよ。そう教育されちゃってるのよ」というものです。
これは子どもを初期被曝から守れなかった女性たちが、被曝をさせた東電や政府に怒りを向けるよりも、ともすれば何も知らずに被曝を避けられなかった自分を責めてしまうことをさして語ったことです。

鎌仲さんは「あなたたちが悪いんじゃないんだ。政府や東電が悪いんだ。そのことに目を向けよう。その上で子どもを守るためにできることを探そう」と女性たちを励ましていくのですが、同じことを僕は感じています。
みなさん。いい加減、「良い子」でいることを止めましょう!何度も言いますが、第一に安倍政権の今回の選挙の仕方が卑劣だったのです。第二にそもそも歪み切った小選挙区制が問題なのです。第三に無責任な報道をした一部のマスコミが悪いのです。
怒りは安倍政権に向けなくちゃいけない。野党のふがいなさ批判はその次。いわんや統一候補が作れなかったと民衆勢力の間でもみ合うのは愚の骨頂。民衆そのものである棄権者に怒りを向けるのもやめましょう。

見据えるべきことは、これほど民主主義に背いた選挙を行った報いは必ず安倍政権自身に跳ね返るのだということ。そこを見逃さずに民主主義の破壊者安倍政権と対決しなければならないということです。
仲間割れしていてはいけない。選挙において戦術がそれぞれで違うのは当たりまえ。それぞれが懸命に考えて行ったことを尊重しあいましょう。棄権をした人の気持ちも忖度しましょう。そうして次に備えて仲よくなりましょう。仲良くなくてなんで真の連帯ができるでしょうか?
民衆勢力の中で問われているのは、まずは自分が正しいと思う行動をとらなかった人の立場を考えて見ることです。そこに気づきがあれば最高。そうでなくても思いやりを持てば互いの説得力があがるはずです。もちろんこれは常に僕が自分自身に言い聞かせていることです。

安倍政権の衰退の兆候を書きましょう。
極めて興味深い記事があります。読売新聞に載った「『熱狂なき圧勝』浮き彫り・・・自民党支持率ダウン」という記事です。
なぜ興味深いのかと言うと、今回の不意打ち的な総選挙の仕掛け人ではないかともうわさされるナベツネ氏率いる読売新聞の記事だからです。短いので全文を掲載します。

「熱狂なき圧勝」浮き彫り…自民党支持率ダウン
2014年12月17日 09時33分
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20141217-OYT1T50000.html

「衆院選結果に関する読売新聞社の緊急全国世論調査では、安倍内閣の支持率は51%と解散直後の前回調査(11月21~22日)から横ばいで、自民党の支持率は5ポイント下がって36%だった。
与党の圧勝が、内閣や自民党への積極的な支持によらない「熱狂なき圧勝」であることを裏付けている。
2005年以降、過去3回の衆院選では、圧勝した政党の支持率は解散直後に比べ8~16ポイントも上昇している。内閣支持率も、「郵政選挙」で自民党が圧勝した05年の衆院選をみると、小泉内閣の支持率は解散直後の48%から選挙後は61%にまで跳ね上がっていた。
今回、自民党が大勝した理由については、65%が「ほかの政党よりまし」を挙げており、消極的な理由だとみていることが分かる。
自民支持層に限っても「ほかの政党よりまし」は64%にのぼり、「安倍首相への期待が高かった」14%、「経済政策が評価された」11%、「与党としての実績が評価された」9%など、積極的な理由を挙げた人は少数にとどまった。
一方、民主党が伸び悩んだ理由は、「信頼が回復していなかった」61%、「選挙準備が整っていなかった」15%、「政策が評価されなかった」10%などだった。
自民党に対抗できる野党が「必要だ」との声が82%に達していることからも、有権者が現在の野党に期待を持てない状況が浮かび上がる。」

読めば分かるように、読売新聞は今回の安倍与党の「勝利」が、自民党への積極的な支持によらないものであること、要するにけして民意を得て無いことをするどく指摘しています。
この他にも読売新聞は以下のようなタイトルの記事を次々と出しています。「自民、実感なき勝利」「自民圧勝『他党よりまし』65%…読売世論調査」「内閣支持率、横ばい51%(12月15~16日調査)」
その上で「『謙虚な政権運営を』世論調査結果で政府・与党」という記事が出てくる。読売の提言を読んで、政府与党が「謙虚な政権運営をしよう」と言いだしたという記事ですが、ようするにそう言わせたかったことが分かります。

なぜ読売新聞はこのように一見すると安倍政権に不利な記事を連発しているのか。非常に分かり易い。安倍与党を最もバックアップしている読売新聞が低得票率の下での選挙結果のもろさを一番感じているからです。
そしてそのことを小選挙区制で安易に当選した劣化した与党議員たちに教育してもいるのでしょう。「議席は獲った!しかし民意を得たわけではない。慎重になれ」というわけです。
「勝って兜の緒を締めよ」のようなものでもありますが、それ以上に、読売新聞は与党完全応援新聞としての深い危機感を前面に出している。大衆の動向をいつも見つめているがゆえに、この選挙への怒りがどこから涌くかもしれないという危機感を持っているのでしょう。

一方、政府与党批判派として、民主主義を守り抜こうと懸命に論陣をはっている側からも、同じ点を問題にした記事が出てきてます。
その筆頭は東京新聞ですが、今回は東洋経済オンラインを紹介したいと思います。
これもある種の戦術かと思われますが、東洋経済オンラインはあえてアメリカの日本専門家に総選挙について尋ねる形をとり、つぎのような記事を載せています。

日本国民は安倍首相を信任したわけではない 国民は「不死身のベール」に穴をあけた
2014年12月18日 東洋経済オンライン ピーター・エニス :東洋経済特約記者(在ニューヨーク)
http://toyokeizai.net/articles/-/56208

彼の主な論点は以下の通りです。

「安倍首相は今回の結果を国民から受けた信託だと言うでしょうが、他の人は誰一人、そうは思わないでしょう。
投票率はとても低いものでした。 実際、自民党はいくつか議席を失っています。今回の選挙により、いくつかの側面で安倍政権は失速したと私は考えています。」
「選挙結果で最も皮肉なのは、衆議院における議席の3分の2を連立与党が占めたにも関わらず、政府に関しても政策に関しても国民の信託を得たとはとても言えないことです。
今回の結果は、政府がこれまで行ってきたことを今後も継続してよいというメッセージではありません。これまで推し進めてきた政策が、徐々に支持を失っていたことは明らかだからです。」

これは昨日、僕が指摘したのとほぼ同じ内容ですが、ピーター・エニス氏は、国民が安倍政権の「不死身のベールに穴をあけた」とまで述べています。
要するにこのひどい選挙が「終わりの始まりだ」とも述べているわけですが、論点が読売新聞が与党自民党に向けた指摘とピッタリと重なっていることに注目して欲しいと思います。
もちろんピーター・エニス氏は、すぐに「負けた」と自己反省を始めてしまう私たち日本民衆にむけてこうした点を強調しているのです。なお同氏は次のような記事も書いています。

「総選挙で日本人は愚かでない選択をした」 極右を排除、低投票率で無意味な選挙に抗議
2014年12月16日 東洋経済オンライン ピーター・エニス :東洋経済特約記者(在ニューヨーク)
http://toyokeizai.net/articles/-/55943

この記事も全体として短いながら読みごたえがありますが注目すべき点は、選挙が低投票率に終わったことに対して日本の民衆をけして責めずにむしろ「懸命な選択だった」と持ち上げてくれていることです。

「これは日本の人々が愚かではないことを示しています。
彼らは、今回の選挙が「ジェリー・サインフェルド的選挙」(アメリカのコメディアンによる長寿テレビ番組にまつわる表現で、何の意味も持たない選挙の意) だということが分かっていたのです。そのため、家から出ないことを選んだのです。」

「棄権を美化するのか」・・・などと野暮な批判をするなかれ。もちろん棄権の内容もさまざまであり、それこそ意識の高い棄権もあればそうでない棄権もあるでしょう。
しかし僕は今は、棄権した人々に怒りを向けるよりも、棄権した人々の中の善意に訴え、仲間として連帯していく道を探ることの方がずっと重要だと思うのです。ピーター・エニス氏の論にはそうした温かみがある。
「なんで棄権したんだ!」ではなく、「無意味な選挙への抗議だったんだよね!」と呼びかけていて、ユーモアに溢れた情がこもっている。学びたい姿勢だと思います。

さてもう少し選挙結果の分析を進めると、今回の特徴はすべての政党の中で、唯一、「次世代の党」だけが大負けしたことです。19議席から2議席への激減です。小選挙区制の問題があるので、得票としてはこれほどの減ではないのですが、それでもこのことは好ましいことです。
なぜかと言えば今回の「次世代の党」の選挙戦略が完全なるネット右翼=極右排外主義狙いだったからです。実際、「在特会」は「次世代の党」への全面支持を打ち出していました。その極右政党が完全に崩壊してしまった。
このことは現在、行われている「ヘイトクライム」が実はごく一部のものによってもたらされているものでしかないことを大きく示しました。

ではかつて維新の中にいた次世代の党への票はどこへ行ったのでしょうか?そこまで行きすぎていないとの判断で安倍自民党に入ったのだと思われます。議席数にして17。
つまりこれがなければ自民党は大きく議席を失っていたのでした。その分、よりリベラルな側へ、ラディカルな側へと暫時、票が移っていったのだと思われます。
何にせよ、ネット右翼は文字通り、「ネット」上の仮想空間で数がいるように見せかけているものでしかないことがはっきりしたのではないでしょうか。

ところが安倍首相にとっては実はこの「ネット右翼」の存在が大きな心の支えなのです。
そのために自身のFACEBOOKでとんでもない排外主義団体のページをコピーして載せてしまったりしています。
その点で、次世代の党の没落は、安倍首相にとっても打撃であること、このことで自民党の中のリベラル派、さらに連立与党の中での公明党の相対的位置が強まったことも見ておくべきことです。

もちろん、公明党や自民党リベラル派を頼みにしたくてこう言っているのではありません。
すべてを決定づけるのは民意であること。その力の発揮いかんで、自らも民意を得ていないと実感しているこの政権はまだまだどのようにも動きうることが示されていること、私たちがつかむべきことはこの点です。
だからこそ、民衆勢力の間で、互いを大きく思いやって、できるだけ大きく手をつないでいくことが問われているのです。

続く

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