2014.08.16

明日に向けて(917)紛争解決入門:ハマースと話せ(メデア・ベンヤミン 岡真理さん翻訳)

守田です。(20140816 02:30)

ひさびさの夜中の投稿です。今宵だけ特別です!
昨日15日は「終戦記念日」でした。正確には「敗戦の日」と呼称すべき日ですが、ともあれ今年も戦争の悲劇を悼むさまざまな催しや報道がありました。
しかしそんな間にも、ガザの緊張は続いています。今はなんとか停戦が維持されていますが、イスラエルの全くひどい虐殺行為に「国際社会」なるものは相変わらず、まっとうな批判を行っていません。
こんなときに何も言わずにはおれない。ガザの事態に触れずに「終戦記念日」は終われないと、自分の禁を破って夜中の投稿を行うことにしました。

7月にイスラエルがガザ侵攻をはじめて以降、友人の岡真理さんが連日、パレスチナの声、パレスチナに連帯する世界の声を翻訳して発信してくれています。凄いパワーです。
僕ももっとたくさん転載、転送をしたいと思っているのですが、例えば昨日は、締め切りの迫った川内原発再稼働に対するパブリックコメントの執筆に追われていました。
トルコの旅の報告もまだ全部ができていない。そんな中で14日は軍隊「慰安婦」問題の国際メモリアルデーを迎えました。僕も京都市内でのビラまき行動で連帯しましたが、もっと論じたいのに記事にできていない。

いやそれだけではないのです。連日、不安定状態が懸念されている福島原発の今についてももっと詳しく分析し、論じる必要があるし、凍土壁失敗の問題などにも触れる必要がある。
沖縄の辺野古の攻防も紹介して、連帯していきたいし、それやこれや論じたりないことばかりです。
でも焦ってもしょうがないのですよね。そうです。僕らはやれるだけのことしかやれない。そうしてそれをやりつづけることが尊いのです。

8月10日に大津市の白雲山荘で、主に宮城県南部、丸森や筆甫から来ている子どもたちに、放射能からの身の守り方の講演をしました。
清涼飲料水の恐ろしさを述べて、マクドナルドにいっちゃいけないと話して、放射能はつぶでくるから防げ、身体に入ったものは出せといいました。
そうしたら一番前に座って、素晴らしいレスポンスを示してくれていた小学校低学年の男の子がいいました。「それで守田さんは病気になったことはないの?」
「そこなんだよね。3月に大きな病気をしてね。4月に手術をしたんだ」と言ったら、ちょっと笑いながら「えーー。なーんだあ・・・」という顔をして睨まれてしまいました!

そうなのです。放射能の被害とたたかうわれわれは、ぜひとも健康を維持していく必要があります。
「被爆者は絶対にガンで死ぬな!ガンで死ぬのは原爆に負けることだ!」と力強く訴え続けたのは肥田さんですが、まったく同じことが今も言えます。
われわれは病気にならずにいよう。病気になることは福島原発事故に負けることだ・・・と叫び続ける必要がある。

しかし一方で今なお、本当に理不尽な暴力がガザに加えられていて、とても黙って見ていることはできない。
何をしていても心が焦るし、何かをし足りない気持ちにさせられます。夏祭りや花火を楽しむこともできない。楽しんではいけななどとはまったく思っていないのですけれども、心が楽しめない。
そんな気持ちが、ゆったりと身体を休めることを拒んでしまう面もある。人には必ず「無理は禁物、休んで下さい」と言うのに、自分にだけそれを適用しないどうとも言えない矛盾の中にいたりする。

ではどうしたら良いのだろう。一番正しい答えだなどとは思えませんが、しかし今、この事態の中で学べるだけのことを学び尽くそうという以外にないように僕には思えます。
イスラエルの蛮行の国際的な目撃証人となりつつ、同時に、パレスチナ問題を一歩ずつ学び、深めていく。それを拠点に世界を彩っている暴力に関する省察を深めていく。その中で平和の創造のためのイマジネーションを強めていく。
無力かもしれないけれども、いや無力と感じることを拒否して、僕はこの中で私たちが賢くなっていく以外に歩むべき道はないと思うのです。

岡さんも何かをしないではおれないという駆り立てられる気持ちと同時に、きっとそんな思いで、まさにこの事態の中で、新しいことを学んでいるのだと思います。そうして次々と翻訳をしてくれているのだと僕には思えます。
そんな風に感じながら、連日の投稿を読み返していて、はっとする文章に行きあたったので、今宵はぜひこれを紹介したいと思いたちました。題名は「紛争解決入門:ハマースと話せ」です。
この文章の紹介の中で岡さん自身がこう書いていて、僕はなんだかとても共感したのでした。

***

第二次インティファーダの頃、(ファタハとともに)イスラエルの市街地で自爆攻撃を行っていたことが強烈に印象に残っていますので、私自身、よもや自分が、ハマースを擁護するような日が来るとは思ってもいませんでした(ハマースであれ、PFLPであれ、「殺人」を正当化するいかなる思想も私は肯定しません。当然のことながら死刑も)。
でも、この間、ハマースについて書かれたいろいろな文章を読み、これまで知らなかった多くのことを知り、この10年のあいだに、ハマースもまた変わってきているということ、そして、ハマースも当然のことながら一枚岩ではないということを知りました。私自身、目から鱗でした。

***

僕からしても、また多くの人からしても、岡さんと言えば、パレスチナ問題の第一人者であり、もっともよく実情を知っている方であるわけですが、その彼女が「目から鱗でした」と語っている。
僕はそういう瞬間こそ、イスラエル・・・というよりはアメリカを頂点とした世界暴力支配の一角を、確実に切り崩す、大事な瞬間ではないかと思えるのです。
そうです。暴力は必ず壮大な嘘の体系を伴って発動されています。嘘の体系で、どう考えたって理不尽で正義性など微塵もない暴力が肯定され、支持すら集まってしまいます。

だとすれば暴力を打ち砕くのに有効なことは、その前提にある大嘘を打ち破ることです。そのためには暴力は必要ない。必要なのは英知と人間愛です。人々と世界に対する洞察力です。
僕には新自由主義の暴走によって貧富の差を極限的に拡大している社会は、人間的洞察力を摩耗させ、人を理解しようとする努力、人に理解してもらうための営為を無化させ、世界を単純化するモメントに溢れていると思えます。ヘイトスピーチもかくして生まれています。
しかし人間社会はいつの日にももっと複雑なのです。善悪二元論では割り切れないところに私たち人間の実相はあり、それを丁寧に紐解いていこうとするとき、今は見えない解決の方向性、したがって未来の可能性が見えてくるのでもあります。

だからこそ、暴力の時代に大事なのは人間的な洞察力であり、深い思考性であり、どこまでも人を思いやろうとする気持ちです。僕はその中にこそ、暴力の時代を越えていける可能性が懐胎していると思っています。
岡さんがこのところ翻訳してくれている文章の中には、そうした知性のきらめきを感じさせてくれるものが多い。悲劇の紹介にとどまらぬ人間的英知の紹介がたくさんこもっています。
ぜひ、みなさんと一緒にそこをつかみたい。そのことでイスラエルの攻撃で、私たちの心の中まで砲撃され、殺伐となってしまうことを拒否し、まさにパレスチナの人々の苦難に心を寄せる中で、なお私たちは成長していきたい、愛を強めていきたいと思うのです。

そんな観点からぜひ、岡さんが連続的に訳出されている文章に目を通すことをお勧めします。そのための一助として今回は表題の文章を転載したいと思います。
なお岡さんはこれらの文章をMLやメルマガで配信されています。岡さんに連絡をして配信を受けることもできますので、末尾にその情報も付け加えておきます。

みなさん。共に賢くなりましょう。世界を牛耳る為政者たちが度肝を抜くほどに!

******

京都大学の岡真理です。(守田注 この文章は8月9日12時投稿です。)

すでに報道されているとおり、5日に始まった72時間の停戦は、残念ながら、双方、合意に達せず戦闘が再開しました。
数日前に投稿されたものですが、メデア・ベンヤミンの「紛争解決入門:ハマースと話せ」をご紹介します。

メデア・ベンヤミンは、「CODEPINK(コードピンク) 平和のための女性たち」の設立者の一人。コードピンクは、アメリカの資金でおこなわれる戦争や占領に反対し、平和と社会的正義を求める女性たちの運動です。
この間、すでにご紹介した記事の中でも、アイルランド紛争のことがよく、引き合いに出されています。積年の紛争が解決へと至ったのは、「テロ組織」とされていたIRAを英国政府が交渉相手として認め、直接、交渉をしたことによると。政治交渉の席につくこと、それが、紛争解決のための第一歩ということです。

以前、ご紹介したシャレットの「ハマースを理解する」では、2007年、ハマースはEU諸国の要求に従って、ファタハとの統一政府をつくったあと、ブッシュ大統領に書簡で、1967年の境界線に従ってパレスチナ国家を創り、イスラエルと長期にわたる停戦をする準備があること」を伝えていますが、この申し出は無視された、ということが紹介されていました(世界はハマース側のそうした努力に対し、ガザの完全封鎖という形で応答したのでした)。
メデア・ベンヤミンの記事でも、ハマースが2009年、キャスト・レッド作戦のあと、オバマ政権に対し、「政治交渉の席につく準備がある」と申し出たことが紹介されています。しかし、この申し出も、先の申し出同様、無視されました。
こうした事実は主流メディアでは、まったく語られませんし、主流メディアの報道によって形作られた、ハマースについての私たちの認識・イメージを大きく塗り替えるものではないでしょうか。

ハマースと言えば、第二次インティファーダの頃、(ファタハとともに)イスラエルの市街地で自爆攻撃を行っていたことが強烈に印象に残っていますので、私自身、よもや自分が、ハマースを擁護するような日が来るとは思ってもいませんでした(ハマースであれ、PFLPであれ、「殺人」を正当化するいかなる思想も私は肯定しません。当然のことながら死刑も)。
でも、この間、ハマースについて書かれたいろいろな文章を読み、これまで知らなかった多くのことを知り、この10年のあいだに、ハマースもまた変わってきているということ、そして、ハマースも当然のことながら一枚岩ではないということを知りました。私自身、目から鱗でした。

強硬派もいますが、政治部門を担っているのは、政治外交交渉によって問題を解決していこうという穏健派の人々です。しかし、政治・外交的に問題を解決したいというハマース側の努力は(7月の、ハマースによる停戦案同様)、一貫して無視されています。
そこから分かることは、主流メディアが喧伝するのとは裏腹に、政治・外交努力によって問題を恒久的に解決することを望んでいないのは、ハマースではなく、実はイスラエル側だということです。そして、ベンヤミンの記事から分かるのは、ハマース側の政治・外交努力を一貫して拒否することで、世界はハマースをより強硬路線へと追い込んでいっている構図です。

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http://mondoweiss.net/2014/08/conflict-resolution-hamas.html

紛争解決入門:ハマースと話せ

メデア・ベンヤミン
Mondoweiss / 2014年8月5日

世界は息を殺して結果を待っている。合衆国のジョン・ケリー国務長官が仲介する暫定的停戦が長期的停戦となるかどうかの。だが、合衆国の調停が誠実で効果的なものであろうとするなら、アメリカ政府は、ハマースをテロ組織のリストから外し、ハマースがパレスチナの正式な代表として交渉のテーブルにつくことを認めなければならない。

過去1ヶ月、ケリー長官は中東を歴訪し、暴力的事態を終わらせるための交渉に努力してきた。イスラエルのネタニヤフ首相とも現在進行形で議論を続けている。パレスチナ自治政府のマフムード・アッバース大統領とも定期的に相談している。エジプト、トルコ、カタルなど、域内で影響力のある国々の政府とも会談した。だが、調停者としての彼の努力には、ひとつ、明らかに欠けているものがある。1997年以来、合衆国のテロ組織のリストに載っているハマースと直接、話をしないことだ。

紛争解決入門は言う、「全当事者と交渉せよ」。北アイルランド問題で「聖金曜日合意」[1998年、ベルファストで、英国とアイルランドのあいだで結ばれた和平合意]を見事に仲介したジョージ・ミッチェル上院議員は、英国がアイルランド共和国軍(IRA)をテロ組織として扱うのを止め、IRAを政治組織として対応し始めて初めて、本当の交渉が可能になった、と言う。

トルコ政府も最近、この教訓を学んだ。何十年もクルディスタン労働党(PKK)と戦闘を続けたあとで、トルコのエルドガン首相はPKKをテロ組織のリストから外し、投獄されているPKKのリーダー、アブドゥッラー・オジャランと直接交渉を始めた。この動きは、和平プロセスに新たな命を吹き込んだ。

あなたが調停者になるなら、重要な当事者のひとつを、あなたが嫌いだからと言って除外してはいけない。この教訓はガザにもあてはまる。ハマースの立場について代理人を通してしか聞けないなら、ハマースはほぼ確実に、[交渉の]結果を拒否するだろう。7月15日のケリーの停戦案を見よ。それはイスラエル政府と取り決められ、ネタニヤフは、イスラエルは進んでこの提案を受け入れると自慢げに言った。

だが、ハマースは何の相談もされず、メディアを通して、「受け入れるのか、受け入れないのか」という形でつきつけられたのだ。ハマースがこれを拒否したのも不思議ではない。もと国連特別報告者のリチャード・フォークはケリーの努力を「外交版不条理劇」と呼んだ。

ハマースの軍事部門、イッズッディーン・アル=カッサーム旅団は、たしかにテロ活動に関与してきた。1990年代の自爆攻撃やイスラエルの市街地にロケットを撃ち込むなどだ。しかし、ハマースは社会福祉部門もあり、パレスチナ自治政府が提供しない社会奉仕を長いこと行ってきた。

そして、2006年に選挙で勝利すると、ハマースの政治部門は政府として機能し始めなければならなかった。安全保障だけでなく、保健省、教育省、商業省、運輸省といった、より日常的な組織も監督するようになった。ハマースのより穏健なメンバーが、しばしば、より軍事的なメンバーと対立しながら、政府機関を運営している。

2009年、1400名以上のパレスチナ人の死者をもたらしたイスラエルの恐ろしい侵攻の直後、CODEPINKはガザにいくつかの人道的代表団を派遣した。そのひとつで私は、これらハマース政府の当局者の何人かと直接、話をすることができた。彼らの方から、私たち代表団の3名と会談したいという要請があったのだ。私たちのうち2人は、ユダヤ系アメリカ人であることを公然と表明していた。

結局のところ、私たちの政府は起きたばかりの軍事作戦に資金を提供してきたのであり、私たちはそのアメリカ人であり、そしてユダヤ人なのだ。その私たちに向けられる怨恨を考えれば、会合はさぞ緊迫したものになると予想していた。ところが、私たちは、10人ほどの男性たちの集団に暖かく迎えられたばかりだけでなく、繰り返し言われたのだった、「私たちはユダヤ教とは何の問題もありません。実際のところ、ユダヤ教はイスラームと、とても近いのです。私たちの問題は、イスラエルの政策であって、ユダヤ人ではありません。」

私ははっきりと理解した。どの政治組織もそうであるように、ハマースも多様な個人で構成され、さまざまな政治的見解があるのだということを。西洋に対して敵対的で、イスラエルの破壊を強固に主張する強硬なイスラーム主義者もいれば、私たちが会った者たちのように、西洋の大学で学位をとり、欧米文化の多くの側面を評価し、イスラエルとも交渉できると信じる者たちもいるのだ。

翌日、私たちが会ったハマースのリーダーたちは、私にオバマ大統領宛ての書簡を渡して、大統領の助けが欲しいと言った。書簡にはアハメド・ユーセフ博士の署名があった。副外相で、ガザのイスマーイール・ハニーエ首相の相談役だ。書簡は、反イスラエル的レトリックとは無縁で、代わりに国際法や人権についての言及で溢れていた。

それはガザに対する封鎖の解除、すべての入植地建設の停止、そして合衆国の政策を国際法とその規範に基礎を置いた、公平さを示すものに転換することを訴えていた。書簡は、ハマースは「互いに尊重し合い、前提条件なしで」すべての当事者と進んで話す準備がある、と述べていた。当然、そこにはイスラエルも含まれる。

つい最近、残忍な攻撃にさらされたばかりの政府のこれら代表者たちが、しかも、その攻撃は大部分、合衆国の税金で賄われているというのに、オバマ大統領に対して介入してほしいと、実に筋の通った嘆願を差しだそうとしていることに私は驚いた。さらに驚いたのは、彼らがその書簡をオバマ政権に届けるために、この私に預けたことだ。フェミニストで、ユダヤ人で、アメリカ人の女に。

ワシントンDCに戻って、私はその書簡を届けたが、私が強く主張したにもかかわらず、オバマ政権は、書簡を受け取ったことを認めることさえ拒否したのだった。ましてや返事など送るはずもなかった。それは、ハマースの穏健派にとってはさらなる敗北であり、武装抵抗こそがイスラエルの譲歩を勝ち取る唯一の方法だと考える者たちの勝利だった。

2009年に私が受け取った書簡同様、先月、ハマースが申し出た対抗停戦案も、実に理を弁えたものだった。停戦の条件は以下のようなものだった。

・ガザの境界からイスラエルの戦車が撤退すること
・3人の[イスラエル人の]若者が殺された後、逮捕された囚人たちの解放
・封鎖の解除と、国境の検問所を、国連の監視のもとで、商業および人々の移動に対して開放すること
・国際的な港と空港を、国連の監視のもとで、建設すること
・国際規範に合致するよう、許可される漁協水域を拡大すること、
・工業地区の再建とガザ地区における将来の経済開発の改善

これらの条件は筋が通っているだけでなく、根底にある制度的問題にまで達する、長期にわたる停戦の基礎を形成してもいる。これが実現する唯一の方法は、ハマースを合衆国のテロ組織のリストから外すこと、そして、パレスチナ人がかくも切実に必要とし、彼らが受けるに値する制度的変化について交渉するための機会――と責任――がハマースに与えられることである。

[翻訳:岡 真理]

***

(以下、岡さんからです)
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