2014.06.14

明日に向けて(871)憲法9条はいかなる国のいかなる軍隊より強い!(アレン・ネルソン談)

守田です。(20140614 15:00)

昨年より、僕は「京都被爆二世三世の会」に参加させていただいています。毎月、例会があるのですが、今月は平塚淳次郎さんが参加され、講演してくださいました。このことを報告したいと思います。

平塚さんは、1975年8月6日に白血病で亡くなられた被爆二世・峯健一君の安倍野高校時代の担任の先生をされた方です。
英語科だった関係から、峯君の死後に彼のことを書いた英文パンフレット”DEATH OF A HIGH SCHOOL BOY”を製作され、各地の教員研修会で発表、さらに国際会議に招かれて、世界に峯君のことを伝えられました。
原爆とは何かをあらためて捉え、かつ被曝の次世代への影響を考える上でとても貴重なお話でした。

平塚さんは峯君と過ごした日々の体験を心に刻みつつ、教師として平和運動を担ってこられましたが、さらに1996年に元米軍兵士だったアレン・ネルソンさんが日本を訪れ、戦争体験を話してくださるようになって以降、何度も通訳として同行されました。
アレン・ネルソンさんは1947年ニューヨーク州ブルックリンで生まれ、貧困生活から逃れようと18歳で海兵隊に入隊。ベトナムに派遣されて過酷な戦場を生き延びらた方です。
自らたくさんの殺人を犯してしまったネルソンさんは、除隊後に後遺症に苦しめられ、家族から同居できないと言い渡されてホームレスを経験し、自殺未遂も繰り返しましたが、ある医師との出会いから回復されました。
その後、本当の戦争(real war)とは何かを伝えるのが自分の役目だと考えはじめ、米兵による少女レイプ事件あった直後の1996年に沖縄に30年ぶりに訪問され、語り部としての活動を始められました。

ネルソンさんは1996年から13年間のあいだに日本中をかけめぐり1200回もの講演を重ねられましたが、2009年3月26日に米軍が撒いた枯葉剤の影響によって発症したと思われる多発性骨髄腫で亡くなられてしまいました。
平塚さんは、ネルソンさんの平和への思いをさらに伝えたいと「アレン・ネルソン平和プロジェクト」を結成。昨年、ネルソンさんの語りを中心に編集したDVD『9条を抱きしめて』を製作され、普及活動をされています。
この日も、峯君との日々のお話に続いて、ネルソンさんと行動を共にした日々について語られ、『9条を抱きしめて』のダイジェストを見せてくださいました。

非常に感動し、共感しました。

二つのお話共に重要なのですが、今回は先にネルソンさんのことについて触れたいと思います。なぜかと言えば、前回の「明日に向けて(870)」でも書いた憲法9条の意義、精神を、ネルソンさんが力強く語ってくれていたからです。
アメリカの正義を信じ、ベトナムに派遣されて実際にたくさんの殺人を経験してきた元アメリカ軍兵士のネルソンさんが、自己回復の長く苦しい時を経てから語られていることだけに、深い実感がこもっており、胸を打ちます。
『9条を抱きしめて』の最後の方に出てくる、ネルソンさんの集会での講演の発言シーンから少し言葉を拾わせていただこうと思います。2か所から引用します。ぜひお読み下さい。

***

アレン・ネルソン

1996年に来日した時、ある人が日本国憲法の英文冊子をくれました。ホテルで第9条を読んだとき、立ち上がるほどのショックを受けました。信じられませんでした。
キング牧師の有名な演説「私には夢がある」のように力強い衝撃を与えました。
これこそ人類の未来、これこそ人類が持たなければならないもの、そうしなければ人類は滅亡してしまうだろうと思ったのです。
そして憲法9条を読んで気づいたことはこれは国の法律というだけではなく、私たちの生きるべき道を示しているということです。
日本国憲法第9条はいかなる核兵器よりも強力であり、いかなる国のいかなる軍隊より強力なのです。
日本各地で多くの学校を訪れますが、子どもたちの顔にとても素晴らしく美しくかけがえのないものが私には見えます。子どもたちの表情から戦争を知らないことがわかるのです。それこそ第九条の持つ力です。
日本のみなさんは憲法に9条があることの幸せに気づくべきだと思います。

ほとんどの国の子どもたちが戦争を知っています。アメリカの私の子どもたちは戦争を知っています。イギリス、イタリア、フランス、オーストラリア、中国、韓国の子どもたち、みんな戦争を知っています。
しかしここ日本では戦争を知りません。憲法第9条が戦争の悲惨さ、恐怖や苦しみからみなさんを救ってきたからです。

ご存知のように多くの政治家が憲法から第九条を消し去ろうと躍起になっています。断じてそれを許してはなりません。
みなさんとみなさんの子どもたちはこれまで憲法第9条に守られてきました。今度はみなさんが第9条を守るために立ち上がり、声をあげなくてはなりません。
第9条は日本人にのみ大切なのではありません。地球に住むすべての人間にとって大切なものなのです。アメリカにも9条があって欲しい。地球上のすべての国に9条があって欲しい。

世界平和はアメリカから始まるのではありません。国連から始まるのでもありません。ヨーロッパから始まるものでもありません。
世界平和はここからこの部屋からわたしたち一人一人から始まるのです。

***

素晴らしい!これが本当の戦争=real warを体験してきた元兵士の実感です。ネルソンさんは殺し合いの苦しみを通り抜けてきたからこそみえたものを、懸命になって私たちに伝えてくれました。何よりそれをみなさんと受け止めたいです。
私たちが「天国にいるものはそこが天国だとは気づかない」という名句を思い出す必要があると思います。ネルソンさんは地獄を体験された。だからこの言葉が出てきた。同時に私たちの国も第二次世界大戦という地獄を経験しました。その経験が9条を紡ぎ出し、今日まで伝えてきたのです。
そうです。まさに私たちの国は、第二次世界大戦以降、未だに兵士が一度も他国の人々を殺したことがない。子どもたちも戦争を知らない。だからこそ平和なのです。
アメリカはどうでしょうか。銃犯罪は日常茶飯事です。その上、前途を悲観した若者による学校での銃乱射による無差別殺人などが繰り返し起こっています。だからネルソンさんは言いました。「アメリカにも9条があって欲しい!」と。

さらに世界の混乱、ウクライナでの対立や、今まさに戦闘が激化しているイラクのことなどを考えるとき、私たちは「正義のための戦争」という野蛮をもう本当に超えるべきときに来ていることを自覚するべきだと思います。
軍隊がなければ信頼関係の醸成にしか安全を守る方法はない。そのためには相互理解が不可欠です。正義と正義を振りかざしあって、互いを罵り合って、衝突するのではなくて、相手の正義を理解する、その上で譲歩しあう、譲歩しあって妥結点を目指す。そのために信頼関係を重ねていく。
軍隊がなければその道しか選ぶことはできないし、事実日本は戦後の長い間、そうした道を辿ってきたわけですが、その道にこそ互いが和解し、互恵的に発展していく展望があるのです。
軍事力で一時的に勝ってもさまざまな歪みが残っていくだけで、必ず自国内部にも歪みをもたらします。力がすべてだという暴力的な発想が支配的になり、社会から相互理解を深めようとする人間的な力が失われていくからです。

そのために私たちが今、放棄しなければならないのは、自衛も含めて、軍事で物事の解決を図ろうとする発想です。自衛と言えども戦争は悪であり歪みをもたらすのです。
なぜか。ひとたび戦争を経験しそれを肯定してしまうと、問題の解決を、説得やものごとの真偽を確かめることによってではなく、武力によって決しようとする発想がはびこってしまうからです。
しかしそんな発想を持ち続けていたら、武器や軍隊の性能が信じられないぐらいに発達し、劣化ウラン弾をはじめ人間にも環境にも絶望的な破壊力を持ったものが増えるばかりの現代では、破局的な被害が広がるばかりです。ネルソンさんの言うようにまさにこのままでは人類は滅んでしまう。
自衛戦争、革命戦争・・・それやこれや「正義の戦争」という発想そのものを私たちは越えられなければならない。それは人類史における思想的な大転換です。だから私たちは今、もう一度、憲法9条を選び直していくことが問われているのです。

何度も言います。私たちは自衛隊が憲法9条違反であることをもう一度はっきりと認識すべきです。私たちの国は、すべての軍事力を否定した国です。人との信頼関係の醸成にすべてをかけると宣言した国なのです。憲法にはそうはっきりと書いてあるのです。そしてそれこそがネルソンさんが伝えてくれたように人類の希望なのです。
正義であろうとも戦争は止めましょう。正義を説得と、信頼と、愛で実現する道を選びましょう。その方途を見つけ、その能力を開発しましょう。
そのことで私たちはいかなる国のいかなる軍隊よりも強い思想、精神、魂を持ちましょう。憲法9条にもっと力を!
***

以下、「アレン・ネルソン平和プロジェクト2013」のブログをご紹介しておきます。
DVD『9条を抱きしめて』のPR版も載っています。
購入先もここから分かります。1000円+送料です。ぜひ全編(50分)をご覧になって欲しいです。
http://d.hatena.ne.jp/shioshiohida+Allen_Nelson/

最後に、貴重なお話をお聞かせくださった平塚淳次郎さんにもう一度、感謝を捧げます。

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