2013.11.30

明日に向けて(767)秘密保護法制定を阻止しよう!(上)

守田です。(20131130 23:30)

みなさま。この間、「明日に向けて」の更新が大幅に滞ってしまいました。原因は体調不良です。
11月9日から24日まで講演9回、会議1回、打ち合わせ2回を重ねましたが、その途中で風邪から腹痛を誘発し、お腹を抱えながらの行脚になりました。
このため、行く先々の方にもご心配をかけることになってしまいました。
連続講演終了後、身体を治すことに専念し、ゆとりをもった時間を過ごさせていただきました。ご心配をかけたみなさま、大変、申し訳ありません。

さて、そうしている間にも、ご存知のように、秘密保護法をめぐる情勢が急展開し、衆院議員での強引な可決が行われてしまいました。
法案は参議院に回されています。私たちは大変な危機の前に今、立っています。

ある方から、この法案の危険性について、ぜひ分析して欲しいと言われたこともあり、この間、休みをいただきながら、いろいろな方の論考を拝見してきました。
法案があまりにひどく民主主義を逸脱していることがあって、たくさんの危険性を指摘することができ、それだけに多様な論点が出されているように思えます。
あまりに恣意的で法の運用の幅が大きいため、どのように適用することも可能なのがこの法律であり、その目的とするところを一義的に定義するのは難しいようにも思えます。

ただその中でも、この法案を歴史的経緯に遡って、もっとも明快に解析しているのは、孫崎享(まごさきうける)さんの説明ではないかと思えました。
これはIWJの岩上安見さんのインタビューで聞くことができます。ただし非会員への公開バージョンでは冒頭の15分弱しか聞けません。
非常に重要な内容なので、ぜひ会員になられるか、このページだけでも購読して、全体を聞かれることをお勧めします。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/112741

要点だけ述べてみたいと思います。僕が強く共感したのは、孫崎さんが、この秘密保護法の本質が、米国の要請によってなされているところにあると明快に語っていることです。
端的には「自衛隊が米国の指揮下に入り、共同オペレーションをする。その時に、米軍と同等の軍事機密が必要になる。自衛隊の米軍の下請け化が目的」とまとめられています。
つまり、自衛隊がアメリカ軍の下に組み入れられ、世界各地で戦闘ができるようにするため、「米軍と同等の軍事機密」が必要になり、そのために作られようとしているのがこの法律だと言うことです。

この点を理解するには、少し歴史を遡って日米関係を捉える必要があります。
戦後から1990年までの冷戦時代、日本は「自由主義圏」に属してきました。日米安保条約という軍事同盟を結んでいましたが、日本は軍事大国の道は歩まず、軍事小国・経済大国の道を歩みました。
と言っても、自衛隊の軍事規模は世界でも有数ですが、憲法9条のもと、これまで一度も主だった戦闘に参加せず、経済大国の道を歩み、自国民も経済的な豊かさのもとに統合する道がめざされたのです。
これを自民党を中心とする保守本流路線と言います。

ところが1980年代に後半に、東欧の社会主義諸国の瓦解が始まり、1990年代にいたって、東側諸国の盟主であるソ連邦が崩壊してしまいました。
このことによって世界の枠組みが激変していきます。
実は誰よりもショックを受けたのはアメリカ軍でした。ソ連軍という膨大な軍事力に対抗することで存在意義を持っていたアメリカ軍が、いきなり存亡の危機に立たされることとなったのです。
このため、軍部を中心に「新しい敵」探しが行われるようになり、「イラン」「イラク」「北朝鮮」をならず者国家と決め込んだ、新たな軍事戦略が策定され、湾岸戦争が行われました。

一方でアメリカの中には違ったムーブメントも存在していました。それはアメリカがソ連と対抗している間に、ぬくぬくと経済成長してきた日本をこそ、次の敵と考え、経済戦争を仕掛けようとする動きです。
当時のアメリカはこの両者の流れが、あるいは競合したり、反発したりしながら、日本への激しいプレッシャーをかけてくることに結果していきます。
軍事的には、湾岸戦争に「人的貢献をしなかった」というキャンペーンを張り、自衛隊の海外派兵を求めだしたことであり、経済的にはすでに1980年代から始まりつつあった「構造調整」圧力をかけ、日本をアメリカに「市場開放」することでした。

この際、強烈なイデオロギーとなったのが、「新自由主義」でした。これは冷戦時代に、社会主義との対抗から、多くの自由主義諸国がとった「ケインズ主義」を批判するものとして登場しました。
つまり、社会主義の台頭を抑えるため、社会保障制度などによって、内外格差の極端な広がりを抑制し、豊かさの中に国民・住民の統合を狙った「高福祉国家路線」への批判であり、弱肉強食の「競争」を絶対化するものでした。
このもとで「日米構造調整」などが叫ばれていくようになります。農業の保護をはじめ、自由競争の行き過ぎから人々を守らんとしてきた政策を、一つ一つ壊していこうとするものです。

旧来の自民党路線から転換し、これに全面的に乗っかったのが、中曽根元首相でした。中曽根政権のもと、日本は「日米同盟化」を強めるとともに、徐々に、新自由主義を拡大させ、労働者の権利の砦の一つであった国鉄労働組合の解体が目論まれました。
同時にそれは、国有鉄道という公有財産を、新自由主義のもと、私的に分配していくための国鉄解体=民営化路線とくっつき、労働者の権利の縮小と、公的領域の私的解体が同時に進んだのでした。
秘密保護法の前身である、「スパイ防止法」もこのころに、制定が目論まれました。

しかしこのことはまだ「左翼」勢力の力が今よりも大きく、全国的な反対運動が展開されて、法案は葬り去られました。自民党の中にも旧来の保守本流路線をめざし、軍事小国の歩みをとろうとする勢力が健在でした。
それが1990年代の世界の激変の中で大きくふるいにかけられていったのです。

当初、日本の側では、冷戦終結とともに、非米、アジアとの協調をめざす路線が生まれていきます。この流れはやがて自民党を分裂させ、非自民党政権である細川政権をも誕生させました。
ところがアメリカは日本が非米化し、アジアに近づくことに激怒。一方では経済攻勢を強めつつ、日本をつなぎとめるためのさまざまな方策を繰り返します。
とくに重要なのは、日本のアカデミズムや政財界の中に、新自由主義イデオロギーを浸透させていくことでした。ケインズ主義批判がもてはやされ、フリードマンなどに代表される弱肉強食論がさまざまな形で日本に上陸を始めます。

この流れの中で、アメリカへの完全従属の道を掃き清める形で登場したのが小泉政権でした。小泉政権は、自民党の保守本流路線を、「官僚支配」として国民・住民にイメージさせ、「自民党をぶっこわす」と宣言しました。
実際には官僚による公的領域への恣意的支配から、公的領域を解体し、民営化の名のもと、大企業やアメリカ系企業に分配していくことが目指されました。
その象徴が、郵政の民営化でした。郵便貯金はかつて、国民に質素倹約と預貯金を進め、そこで集めたお金をインフラストラクチャーの整備などに投資するための重要な仕組みでした。
そのために預金の安全な保護が確保されており、さまざまな公的サービスがそこに担保されていました。

小泉元首相はこれをぶち壊し、日本の民衆が持っている高い預貯金を、積極的に市場に引き出すために、郵政の民営化を推し進めたのです。
同時に小泉政権は、労働者の権利を次々と壊し、一部にしか認められなかった派遣労働の枠を大幅に拡大するなどして、正規雇用の道を著しく狭めてしまいました。
今日の若者の、ワーキングプア―と言われる状態、職のない状態は、みな、1980年代により推し進められてきた、新自由主義路線のもとで拡大されてきた惨劇であり、小泉政権によって社会の隅々にまで拡大されたものです。

一方、アメリカは2001年の「911事件」によって、さらに軍事行動を拡大し、アフガニスタン、イラクに全面的に攻め込みました。
とくにイラク戦争では、ついに自衛隊を、現地イラクにまで派遣させることに成功し、アメリカ軍の後方支援部隊として活動させることができました。
しかしまだ戦闘をさせるところにまでは至れなかった。今回、アメリカが破ろうとしているのはこの「障壁」です。自衛隊をアメリカ軍の配下におき、戦闘に参加させようとしているのです。

ではなぜアメリカはそのようなことを必要としているのでしょうか。アフガニスタンでもイラクでも、実際には泥沼の戦闘が強いられ、兵士の犠牲への国内での批判が高まっているからです。
そのためアメリカは一方ではたくさんのロボット兵器を登場させています。無人攻撃機などです。もちろん、兵士の損傷をさけ、国内の批判を受けないようにするためです。
一方で、属国の軍隊を使う。これならばアメリカ兵の損傷を避けられるからです。まさにそのためにアメリカは自衛隊を、日本の若者と使おうとしています。

他方でそのように軍事行動への参加を促しつつ、日本がアメリカにとって、二度と経済的な脅威にならないように、日本の力を非効率的な軍事に向けさせること。
また自衛隊や日本警察を、アメリカの士気下に組み込むことから、日本全体を監視し、アメリカにはむかうことのない国家に日本をさらに変えようともしています。
このような意図は何も日本に向けられたものだけではありません。元CIA職員のスノーデン氏が全面的に暴露したように、アメリカは「同盟国」のほとんどにも膨大な盗聴網をしかけているのです。
もちろん日本にもたくさんの盗聴行為がなされてきたことをスノーデン氏は暴露しています。その意味で日本は実はアメリカのスパイ天国なのです。ヨーロッパ諸国のような盗聴への抗議すら行わないのですから。

小泉元首相を、師匠とあおぐ安倍首相もまた、対米追従路線の著しく強い人物です。そのもとでアメリカは、日本を軍事的にも経済的にもより属国化しようとしており、その中で秘密保護法が登場しているのです。
この際、冷戦時代とアメリカの価値のおきどころが大きく変わっていることに留意すべきです。冷戦時代のアメリカは、社会主義批判のために、自由主義・民主主義を強調する側面がありました。
しかし今はその必要がまったくなくなっている。そのため、民主主義の根幹を破壊するこのような法律の策定を日本にごり押ししてきているのです。

ではこれに対して日本の保守の側はどうなのか。端的に言えば、小泉政権の猛攻撃により、保守本流派はほとんど「抵抗勢力」として撃滅されてしまいました。
むしろ今は、外務省などを中心に、よりアメリカに近づこうとする動きが強くなっており、日本の自主性を守ろうとする動きは極端に弱くなっています。
その表れが、安倍政権のもとで、中国・韓国との軋轢ばかりが強められており、それをけん制し、アジアの平和を取り戻そうとする動きが起こってこないことです。
日中、日韓が対立して、一番、得をするのはアメリカです。在日・在韓米軍の位置も安定するからです。北朝鮮もまた同じ立場にあるでしょう。

このように見たとき、秘密保護法は、まさにアメリカが自衛隊を属国の軍隊として活用するために求めている法律であり、その背後には、TPPなどでますます日本の資産を、アメリカ系企業のもとにさらそうとする動きがセットになっています。
日本の社会的安定を保証する金融システムの要であり象徴でもあったかつての郵便局に、アメリカ系企業であるアフラックなどが居座っているのもその一つの象徴です。
ちなみにここまでの歴史の流れの分析は、僕自身がこれまでの知見をもとにまとめたものです。孫崎さんのまとめとは食い違いもあるかもしれませんので、その点はご注意ください。

ただし、ここから先は僕は孫崎さんとは違う意見を持っています。
この上に安倍政権や日本の官僚たちが、この法律の制定に動く強い動機を持っていることを感じるからです。その意味で安倍政権や官僚たちは、アメリカに対して受け身ばかりでなく、ごり押しを利用しようともしている。
その最も大きな点は、原発事故にまつわる問題です。端的に言えば、事故の実態を隠し、健康被害を隠し、これからの福島原発の廃炉行程や、高レベル廃棄物の処理の過程を秘密にしようとすることです。
ただしさらにそれを規定しているのは、安倍政権や官僚たちの恐怖です。何への恐怖なのか。日本の民衆の覚醒に対しての恐怖です!

続く

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