2013.10.12

明日に向けて(753)水害の多発とナラ枯れ・・・温暖化によって森が悲鳴をあげている(2)

守田です。(20131012 07:00)

本日はこれから水害のあった京都市京北町に出かけて、畑の修復のお手伝いなどしてきますが、その前に、「ナラ枯れ」について、数年前に毎日新聞に掲載していただいた論考をご紹介したいと思います。
短い文章ですが、日本の山と森の美しさと、ナラ枯れの脅威をきちんと伝えることができたのではと思っています。山と森への万感を込めて書いたものです・・・。

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温暖化による森の悲鳴
毎日新聞2010年4月13日
守田敏也

日本最大のミズナラ倒れる

日本列島にはたくさんの美しい森林がある。訪れる四季はこの美しさを一層引き立て、俳句にも、山笑ふ(春)、山滴る(夏)、山粧ふ(秋)、山眠る(冬)と詠まれている。
私たちは常に顔色を変えていく山と森に心を洗われながら日々を過ごしている。森林は大切な社会的共通資本だ。

この山と森の美しさは、日本列島が南北に長く、幾つかの気候帯をまたいでいることにも関係がある。日本海側と太平洋側でも著しい気候の違いがあり、木々をはじめ生物の種類を豊かにしている。
山々には常緑樹と落葉樹、広葉樹と針葉樹が混交し、南から北、西から東へと、目まぐるしく様相が変わっていく。
同じ理由から日本の森林は温暖化の影響も受けやすい。樹木には自生に適した気温があるが、変化に即して逃げ出すことはできないからだ。
このため、今、山々に温暖化の影響が表れ、森の崩壊が進んでいる。

中でも深刻なものの一つがカシノナガキクイムシ(カシナガ)のもたらす「ナラ枯れ」現象だ。ミズナラやコナラなど、秋にたくさんのどんぐりを落とす広葉樹が次々と集団で枯れている。
カシナガは本州の温暖な地域や九州以南のカシの木などに生息していたが、温暖化で北東に移動を始めた。カシと木の構造が違うナラ類は枯らしてしまうため、宿り木を次々に替えることになり、ものすごい勢いで枯損を拡大させている。
夏に近くの山を見て、どうしてこれほど早く紅葉が始まったのかといぶかしく思った経験はないだろうか。目についたのは紅葉ではなく、初夏に羽化したカシナガに枯らされた木の無残な姿だ。

私は京都市に住んでいるが、その北方にある芦生という原生相の森でもミズナラ林が壊滅した。日本で最大だったミズナラの木も倒れた。
カシナガはさらに京都市中にも侵入し、お盆の送り火で有名な大文字山や、寺院の居並ぶ東山でも猛威を振るっている。被害は比叡山にも及び、京都は枯死木に囲まれた悲しい街になりつつある。
石川県の白山ではミズナラ林が跡形すら無くなった所がある。丹後から北陸にかけての被害は甚大だ。日本海側から太平洋側へのカシナガの越境も進み、島根から中国山地瀬戸内側、関ケ原から東海道、奥羽山脈から福島・宮城へと広がりだしている。
有効な防除法が京都の「北山の自然と文化を守る会」の主原憲司氏らによって確立・実行されているが、国や行政の対処は遅れている。

森が悲鳴をあげている。それは自然に対する敬いを失い、温暖化をもたらした人間への警鐘ではないか。温暖化を止め、山と森を守りたい。

カシノナガキクイムシ
体長約5ミリの甲虫。メスのマイカンギアという器官にキノコの一種のナラ菌を乗せて運び、穿入(せんにゅう)した木に植え込んでエサとして繁殖。1本の木に多くて数百匹が集まり、翌年に数十倍の数の成虫が羽化する。
主にカシの木の中心部を利用し、枯らさず生活してきた。だが、温暖化の影響で北東に移動を開始。ミズナラやコナラなどに接触したが、カシとの構造の違いから、ナラ菌が本の成長が活発な形成層に感染して壊死(えし)させ、枯死させる。被害は島根から秋田までの日本海側を中心に拡大している。

続く

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