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2015.08.26

明日に向けて(1131)岩波ブックレット『内部被曝』を読もう!

守田です。(20150826 17:00)

2012年3月に矢ヶ崎さんと一緒に編み上げた岩波ブックレット『内部被曝』、未だに継続的に売れて読んでいただけています。
被爆70年の今年の夏、僕は各地で「戦争と原爆と原発と放射能被曝の太い関係性」について語ってきました。
その中心的内容は、原爆を落とした加害者であるアメリカが、被害者である被爆者を排他的・独占的に調査したデータが、現在の放射線防護学の基礎になっており、そのことが放射線被曝の人体への影響が極めて軽く扱われる大元の根拠になっていることです。
その際に行われたのが内部被曝隠しでした。被曝影響を主に原爆の破裂時に発せられた初期放射線によるものに限ってしまい、放射性微粒子の降下と体内へのとり込みによる被曝の影響が意図的に無視されたのです。

岩波ブックレット『内部被曝』は、矢ヶ崎さんへのインタビューに基づきながら、内部被曝のメカニズムを明らかにしたのちに、アメリカが主導する国際放射線防護委員会(ICRP)がいかに被曝影響を過小評価してきたのかのからくりを明らかにした書です。
被曝の過小評価の歴史的経緯と論理的方法を解き明かしており、ぜひこの点を多くの方に理解していただきたいです。そのためにも『内部被曝』の購読を強くお勧めします。すでに読んだ方には周りに広げていただくことをお願いしたいです。
今、私たちは川内原発の強引な再稼働を前に緊張感を強いられていますが、そもそも原発も核戦略を生き延びさせるための「原子力の平和利用」によって登場してきたもの。その点の歴史的経緯も論じてあります。
そもそも原発の促進とて、内部被曝の軽視なしには不可能だったのでした。原発は正常運転していても放射能を漏らし続けるし、かつまた深刻な被曝労働を作り出すからです。

本書はこれまでさまざまな場できわめて好意的にレビューされてきましたが、この8月と昨年末にもそれぞれに素晴らしいブックレビューを書いて下さった方がいましたのでここに紹介します。先に岩波書店の購入先を案内しておきます。

『内部被曝』購入先
岩波書店ブックオーダー係 電話049‐287‐5721 FAX049‐287‐5742
岩波書店ホームページ・ブックレット
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/ (さらに…)

2014.12.13

明日に向けて(996)ICRPが総力で隠してきた内部被曝の危険性(ICRPの考察-7)

守田です。(20141213 14:00)

ICRPの考察の7回目です。今回で一つの区切りをつけます。総選挙前日ですが、執念をもって被曝隠しの歴史の検証を続けたいと思います。
これまでの6回の考察において、僕が全面的に依拠してきたのは中川保雄さんの名著『放射線被曝の歴史』でした。
本書が出版されたのは1991年9月。奇しくもこの年の5月、IAEAが発足させたチェルノブイリ原発事故をめぐる国際諮問委員会(IAC)が、ウィーンで報告会を行いました。
内容は「汚染地帯の住民には放射能による健康影響は認められない、むしろ『放射能恐怖症』による精神的ストレスの方が問題である」というもので、被曝影響を全面否定したものでした。

この委員会を率いたのは、ABCCの日本側代表を務め、後継組織として1975年に発足した放射線影響研究所の理事長となった故重松逸造氏でした。
その後、事故で被災したたくさんの子どもから甲状腺がんが発症したこと、事故処理にあたったリクビダートルの人々から白血病が発症したことなどを国際機関が認めたため、同報告が間違っていたことが明らかになりました。
もちろん国際機関がしぶしぶ認めたのが小児甲状腺がんと白血病、および白内障であるのにすぎないのであって、実際の被害は心筋梗塞や脳血管障害、免疫不全など、もっと多岐にわたっています。
しかし中川さんが研究を重ねていたころは、まだチェルノブイリ原発事故の被害が一切認められていない時期であり、その時代にこれだけの追及を重ねた功績にはとても大きいものがあると思います。

中川さんが明らかにしたのは、放射線防護学がもともとマンハッタン計画を引き継いだアメリカ原子力委員会や全米放射線防護委員会(NCRP)などによって、核戦略を擁護するために生まれ、発展してきたものだということでした。
その際、核政策推進派が一貫して考慮してきたのは放射線による遺伝的障害の危険性に対する多くの人々の危機感をすり抜けて核政策をさらに進めることでした。
核政策推進派は遺伝的障害の発生を動物実験などで認め、人間にも発生する可能性を十分に認めつつ、しかしそれが極めて高い線量でしか起こらないとして、低線量被曝を安全なものと描こうとしてきました。
遺伝的障害の問題が初めにクローズアップされたのは、原爆開発以前からマラーら遺伝学者による実験によって、放射線が生物の遺伝子に破壊的影響があることが分かっていたからでした。

さらにその後、放射線障害によってがんや白血病が引き起こされることも明らかになり、遺伝障害のみならず晩発性障害発生への懸念も高まり、核政策推進派にはこれらと鎮めることが問われました。
このためもっとも活用されたのがABCCのもとで作成された広島・長崎の被爆者のデータでした。それらはアメリカによって一元管理され、恣意的に被害が小さくなるように評価されたものだったからでした。
しかし次第に放射線の危険性を追及する科学者たちから、低線量被曝でさまざまな被害が発生することが他のデータから明らかにされるにいたり、ICRPら核政策推進派は医学的生物学的な論争ではますます規制を厳しくせざるを得ないと考えて路線転換をはかります。
それがリスク・ベネフィット論やコスト・ベネフィット論への移行でした。放射線障害の発生が抑えられないことを認めた上で、それよりも社会的利益が上回れば良いという説得方法に転換していったのでした。 (さらに…)

2013.08.09

明日に向けて(724)岩波ブックレット『内部被曝』5刷が発売されました!

守田です。(20130809 09:00)

みなさま。本日は長崎に原爆が投下されてから68年目の日です。長崎原爆で失われた命に追悼の意をささげたいと思います。同時に長きにわたって長崎原爆の影響で苦しまれてきたすべての方々にお見舞い申し上げます。
この長崎原爆投下から68年目の日に、矢ヶ崎克馬さんとの共著、岩波ブックレット『内部被曝』が、お陰様で5刷になったことをご報告したいと思います。8月1日より発売されています。今回から帯がなくなり、表紙にそのまま印刷されています。
自画自賛で恐縮ですが、私たちのブックレット、ぜひこの広島・長崎の痛みを思い起こす日々に読んでいただきたいです。なぜなら私たちはこの中で、内部被曝のメカニズムにとどまらず、それが隠されてきた歴史的背景に深く切り込むことに大きなウエイトを置いたからです。

この点をとくに展開したのは、第4章「なぜ内部被曝は小さく見積もられてきたのか」です。ここで僕の「内部被曝を小さく見積もることも、核戦略のなかでなされてきたということでしょうか」という問いに答えて矢ヶ崎さんは次のように述べています。
「そのとおりです。核戦略という場合、核兵器を製造し、実験し、配備することなどが考えられます。いわば、これは見えやすい核戦略です。
もう一つ重要なのは、核兵器の巨大な破壊力を誇示する反面、核兵器の残虐な殺戮性を隠すこと、とりわけ放射線の非人道的な長期にわたる被害を隠すことです。とくに、内部被曝の脅威をないものにしてしまうことに大きな力が割かれてきました。
ICRPが内部被曝を、無視した体系を作り上げてきたのも、核戦略の重要な一環です。それがいまの福島原発事故への政府の対応、すでに飛び出してしまった膨大な放射性物質への対処を大きく規定してしまっています。」(同書p43) (さらに…)

2012.10.18

明日に向けて(565)岩波ブックレット『内部被曝』4刷が決まりました!

守田です。(20121018 09:00)

3月に上梓した『内部被曝』、いまなお、多くの方が読んでくださっていて、最近、4刷が決まりました!とてもありがたいです。

同書には矢ヶ﨑さんが解明してきた内部被曝のメカニズムと脅威を、できるだけ分かりやすくかけたと思っていますが、同時に、広島・長崎原爆以降、アメリカ核戦略の最重要課題として、内部被曝隠しが行われきたことを後半で平易でありながら詳しく解説しました。
自画自賛ですが、非常にバランスが取れた著述になったと今でも思います。6月に放影研に、ドイツからのおふたりとともに訪問するなどして、ますますその思いを深めてきました。

これから私たちは長い期間、放射線被曝、とくに内部被曝の脅威と向かい合い続けて行かなければなりませんが、そのために必要な基礎的知恵をここに盛り込むことができたと自負しています。

ぜひみなさんに読んでいただきたいし、広めていただきたいと思っているのですが、そんな折り、僕から30冊を買ってくださった元東洋大学助教授の杉浦公昭先生が、首都圏での脱原発デモの現場で、同書を売り歩いてくださっていたという話を、東京の友人から聞きました。胸が熱くなりました。

僕はさらにこれに次ぐものを作っていきたいと思います。より研究を深め、より筆を磨いて、みなさんの手元に必要な知識を、わかりやすい形でお届けする努力を続けます。 (さらに…)

2012.05.29

明日に向けて(474)『内部被曝』を京都新聞が紹介してくださいました!

守田です。(20120529 17:30)

先週土曜日に、富士吉田から仙台・福島を駆け抜けた旅を終えて、京都に戻りました。非常にたくさんの人と出合い、たくさんの刺激を受けました。取材内容も高密度で、どれから原稿化すればいいやら迷うところです。しかし今は、少しお休みをいただいています。

この「明日に向けて」はたくさんの方の本当に暖かい手によって支えられています。それだけに一日でも執筆を休むのは気が引けるのですが、それでは持続可能な活動が維持できない。また「腹をくくり、覚悟を固め、開き直り、免疫力を最大にあげて、放射線の悪さとたたかう」という肥田さんから教わったこの時代に必須の生き方を自分自身が実践できない。

なので、高密度な講演と取材の連続のあとは、意識的に体を休めることにしました。記事の発信が遅れますが、どうかご容赦ください。

さて今日は、京都新聞が、矢ヶ崎さんとの共著、『内部被曝』を二度にわたって紹介してくださったので、みなさんとシェアしたいと思います。一つは昨日28日の朝刊1面の「凡語」欄での掲載です。 (さらに…)

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