Home > 「明日に向けて」
2014.12.03

明日に向けて(987)映画『小さき声のカノン』に込められた思い(鎌仲ひとみさんとの対談から)-2

守田です。(20141203 08:00)

鎌仲さんとの対談の後篇をお送りします。

*****

映画『小さき声のカノン』に込められた思い-2
2014年11月24日 アースディしがにおいて
鎌仲ひとみ&守田敏也

守田 その話を聞くと思い出すことがあります。僕もあちこちで講演させていただいているのですけれども、岡山で話をしたときに、関東の方から逃げてきたばかりのお母さんが参加されていました。
僕の講演が終わった後に、幾つかグループを作って、それぞれでお互いの話を聞ける場を作ってくれたのですが、その時にその逃げてきたお母さんが、とつとつと、さきほど鎌仲さんが言った通りに話をしてくれたのですね。
地震があった時に何も知らなくて、小学校6年生の息子さんがいて、お母さんたちみんなで卒業式だけはやってくれという運動をやったのですね。
体育館も崩れている状態の中でしたが、学校側も「それでは校庭を使ってだったら認めましょう」ということになって、3月15日に校庭で子どもたちが並んで卒業式をやってしまったわけなのです。(守田注 3月15日、その小学校がある地域を大量の放射能を含んだ雲が通過していった)
ずっと子どもたちがそこに立っていて、しかも卒業式が終わってからもみんなこれでバラバラになるからお母さんたちも名残惜しくて、ずっと一日そこに立っていたということをそのお母さんが泣きながら話すのです。「私は子どもたちを被曝させてしまった」と言いながら。
それ以上、そのお母さんはどう捉えるべきなのかはなかなか言えないのだけれども、それを聞いていた周りのお母さんたちが彼女の手をとって、その方たちも言葉ではどう表現していいのか分からないのだけれど顔を見合わせて「うん、うん」と言っていたシーンを思い出しました。
鎌仲 本当に人類史上、まれにみる大惨事が起きたわけですが、しかし「人類史上、まれにみる大惨事」とメディアは伝えてないのですよね。

守田 そうですよね。
鎌仲 だからもちろん、どうしたら良いか分からなくて、言葉も出なくて、泣きながらたたずむのはしょうがない。誰だってそうだ。だけれどそれから3年経つ中で、子どもたちを守る新しい取り組みに入っていくときが来たのです。その瞬間を私はこの映画の中で描きたかったのですよね。
それまで待たなくてはいけないというか。見守って、「うーん」という感じで。やはり人間の中にある強さ、母なるもの、男性の中にもありもちろん女性の中にもあるそういう力が、小さき存在の命をどう守っていくと考えたときに出てくる。今、その段階に来たと思います。その力の出すべき方向を私はこの映画の中で示していると思います。 (さらに…)

明日に向けて(986)映画『小さき声のカノン』に込められた思い(鎌仲ひとみさんとの対談から)-1

守田です。(20141203 07:30)

もう一週間も経ってしまいましたが、11月24日にアースディしがに参加して、映画監督の鎌仲ひとみさんと対談させていただきました。
午前11時15分からの開始でしたがその前に卒原発を掲げて当選した三日月滋賀県知事と、選挙を担った「チームしが」の方たちとのイベントトークがありました。しがのかあちゃんたちを中心とするチームです。
あらかじめ用意してきた幾つかの質問がなされましたが、チームしがのみなさん。知事をいじる、いじる!三日月さんはことごとく頭をかきながら応答していましたが、参加者全員の笑顔がはじけて雰囲気がとても良い。なんでも柔らかく包んで、楽しい間にどこかに連れて行ってしまう?しがの「市民力」の強さを見る思いがしました。

このセッションに僕も最後の方で登壇させてもらい、兵庫県篠山市での例を交えながら、原子力災害対策を市民目線でしっかりとたてて欲しいと知事にお願いしました。鎌仲さんとのお話はこのセッションの後に始まったのですが、鎌仲さんの提案でこの続きから話をすることになりました。
原発が災害を起こした時、リアルにはどんなことが起こるのか、その中で避難するというのはどういうことなのか。前半はこの話で盛り上がりました。
その後、鎌仲さんの最新作『小さき声のカノン』に話題を移行。ここからは対談というより主に僕がインタビューをして鎌仲さんに映画の内容を教えていただく形になりました。

『小さき声のカノン』は福島原発事故による放射能汚染に直面し、オロオロと慌てふためきながらも、子どもたちを守るために歩み始めたお母さんたちの姿を描いた作品ですが、この日、鎌仲さんはどんな思いでどのように映画を撮ったのか、その時どう思ったのかをリアルに語ってくださいました。
僕もこれまで鎌仲さんから月1回送られてくる『カマレポ』を観て映画の輪郭をつかんでいるつもりでしたが、鎌仲さんが何にフォーカスしていったのか、今回の対談を通じて初めてはっきりとつかめると同時に、深く共感し、感動するものがありました。
この映画は絶対に広める必要がある。この映画を観てもらうことで、子どもたちを放射線から守る活動をレベルアップさせることができる。多くの方に、未来のためにぜひ観て、広めて、上映に関わって欲しいと思いました。

そんな思いを込めて、この日の鎌仲さんと僕のセッションの後半部分を文字起こしすることにしました。
記事と対談につけた「映画『小さき声のカノン』に込められた思い」というタイトルは僕が独断でつけたものです。
長いので2回に分けますが、どうかお読みになった上で、映画の前売りチケットを購入し、他の方にも勧めていただければと思います。

*****

映画『小さき声のカノン』に込められた思い-1
2014年11月24日 アースディしがにおいて
鎌仲ひとみ&守田敏也

守田 鎌仲さん。そろそろ映画の話をしましょうよ。
鎌仲 したいしたい。

守田 映画がとうとう完成したということですけれども、まずは「見どころ」を教えて下さい。
鎌仲 え? ここで言うの?(笑)それがねえ、難しいのですよ。難しいと言うか、「見どころ」いってもエンターテイメントではないじゃないですか。
「観たことのない映画」と言われています。まだそんなに多くの人に観ていただいてなくて、試写会を3回ほどしただけなのですけれども。観た人たちはそう言っている。

守田 観たことがないというところが「見どころ」というわけですね(笑)
鎌仲 つまり震災について起きた事象、問題についての映画は、この大震災と原発事故以降、たくさん作られてきたのです。初めて映像作家たち、メディアの人たちが原発問題を捉えるようになった。
私はそれをできるだけ見るようにしているのですけれども、私自身は問題の核心は被曝にあると思っていて、その被曝に真正面からどう取り組むのかがこの映画の難しいところだったのです。
一番、人々が混乱させられているところでもあったので、そこに一本の光が薄暗い中にサーっと射し込むようなビジョンを示せる映画にしたいと、作り始めたころから思っていたのです。
なぜなら例えば福島の人たちは、原発が爆発してその瞬間を報道する福島中央テレビに「原発から水蒸気のようなものが上がっています。水素爆発だ」と言われたのです。放射能が出たとは言われなかった。
「放射能が出ました。原発が爆発しました。みなさん。この放射能から逃れるためにこうしてください。ああしてください」ということは一切なかったのです。それでみんなボーっとしていた。何も知らされなかったのです。
翌日、本当に線量の高い土壌の上で子どもたちが遊んだり、そこに座ったり、ご飯食べたり、一緒に水を汲みにいったりしていたのですよ。危ないことを知らなくて。
それでその後にだんだん事実が明らかになっていったときに、人々の心の中に複雑な感情が芽生えてきたと思うのですよ。お母さんたちがどう思ったのかと言うと「ああ、自分たちが子どもを被曝させてしまった」って。 (さらに…)

2014.11.30

明日に向けて(983)社会的共通資本としての絵本-市居みか展四日市へのお誘い(2)

守田です。(20141130 00:30)

社会的共通資本としての絵本の続きをお送りします。

絵本に対する思いをさまざまな経験から深めつつも、しばし滋賀県に通わなくなっていた僕が市居みかさんと再会したのは、市居さんが絵を書き、玉崎洋子さんが文を書いて作った、1枚のチラシがきっかけです。
タイトルは「まずは知らなきゃね」。市居さん描く「あすのわぐま」が、原発について「本当はこうなんだよー」と猫ちゃんに説明しているものです。
何はともあれ以下をクリックしてみてください。A4二つ折り、見開きようのもので、1枚目の右側からスタートしています。
http://asunowa.shiga-saku.net/e614436.html
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=1n4BN-8yTV5-BqPLEixco6GMXyRBn1Hz1NF8pdV_ibNfW20AATCj_rShSINd8&hl=en

僕がこのチラシを手にしたのは、2011年4月に行われた大阪での脱原発デモでのこと。カメラを持って撮影しながら歩道を歩いていた僕に小学生ぐらいの女の子が「はい!」とにこやかに手渡してくれたのでした。一読して、これは原発事故以降のベストチラシだと思った。
それでただちに持ち帰ってマスプリ。周りにじゃんじゃん配りだしたところ大好評でしたが、その頃になって良く読むと「イラスト市居みか」と書いてある。「あ、あの時の市居さんだ」と嬉しくなりました。
チラシのマスプリの許可を得なければと、連絡先の「あすのわ」に電話を入れて快諾を得ましたが、そのあすのわの方たちがのちに「びわこ123キャンプ」をはじめていきました。思えばこれが僕のしがの方たちとのつながりの糸口になりました。1枚のチラシ、素敵な絵の踊るチラシのもつ力でした。 (さらに…)

2014.11.29

明日に向けて(982)社会的共通資本としての絵本-市居みか展四日市へのお誘い(1)

守田です。(20141129 18:30)

絵本作家でアースディしがも担われている市居みかさんの作品展「あのころ」が三重県四日市市のメリーゴーランドで始まりました。11月28日から12月10日までです。
10月に行われた京都展の続きです。僕はポーランドから帰国してぎりぎりの日程で行くことができましたが、本当にとても良かったです。

市居さんは今回の個展のことをこんな風に表現しています。

子どもの頃にしか感じられなかった、あの感じ。
わくわくするような、不思議なことが起こるような、ドキドキするような、あの感じ。。。
思い出しながら、もう一度味わいたいと思います。

絵本作家 市居みかの日々あれこれ
http://ichiipk.exblog.jp/23487278

ドキドキしながらあの扉を開けて・・・そんな懐かしいあのきらめきの一瞬があなたの中に蘇ってきます。
お近くの方、また近郊の方もぜひお越しください。会場を記しておきます。12月7日午後2時から市居さんも在廊されるそうです。

メリーゴーランド
http://www.merry-go-round.co.jp/index.html

またこの時期に三重県松阪市嬉野図書館で市居さんの講演とワークショップもあります。
定員が親子30組だそうです。われと思われる方は早めにご連絡を。

絵本作家 市居みかさん講演会ワークショップ
http://www.library-matsusaka.jp/matsuri5.html

市居さんと出会ったのは僕が滋賀県に一瞬だけ起ちあがった「みんなの滋賀新聞」という新聞社に参加していて県内を走り回って取材していたときのことです。
滋賀県は図書館が素晴らしくいい。間違いなく日本で一番いい。それもダントツにいい。素晴らしいポリシーを持って作られてきています。とくに僕が惹かれたのは当時才津原哲弘さんが館長をされていた能登川図書館でした。何度も通ってお話を聞きました。
そのとき才津原さんに紹介されて参加したのが近江兄弟社小学校の「とりいしんぺい」先生の主催する大人を対象とした絵本を読む会で、その場に参加されていたのが市居さんでした。

絵本を読む会は能登川図書館と、近江八幡のとても素敵なカフェレストラン「茶楽」で交互に行われていました。参加するたびに驚きがありました。とうに忘れていた絵本の力を思い出しました。
たくさんのことを取材して、図書館や絵本に関する連載を企画していたのですが、残念ながら立ち上がったばかりのこの新聞社が一年で力尽きてダウン。
ものすごく溜め込んだ他の滋賀県ネタとともに、すべてがお蔵入りになってしまいました。

その後、恩師の故宇沢弘文先生が僕を同志社大学社会的共通資本研究センターにひろってくださり、僕の社会的共通資本に関する研究が始まりました。
宇沢先生が最晩年に最も力を注いだのは「社会的共通資本としての医療」でしたが、それとともに社会的共通資本の考え方を社会のさまざまなところに適用していくことも意欲的に考えておられました。
そんなときに僕の滋賀県での絵本に関する取材の話から「社会的共通資本としての絵本」という企画を同志社でやらないかということになりました。 (さらに…)

2011.09.27

明日に向けて(271)ことばの力、絵の力、絵本の力

守田です。(20110927 23:30)

すでにお知らせしたように、明日、信楽によんでいただき、お話をすることになっています。信楽町開発センターで午後1時からですが、少し前にいって、周辺の放射線を測り、お話の後もまた計測会を行うつもりです。信楽周辺の方、よければご参加ください。

今回の講演会は、「あすのわ」のみなさんによって主催されていますが直接に声をかけていただいたのは、これまでも紹介している絵本作家の市居みかさんです。今回のお話会は、その市居さんが絵を書き、玉崎洋子さんが文を書いて作った、1枚のチラシがきっかけになっています。

タイトルは「まずは知らなきゃね」。市居さん描く「あすのわぐま」が、原発について、本当はこうなんだよーと猫ちゃんに説明しているものです。何はともあれ以下をクリックしてみてください。A4二つ折り、見開きようのもので、1枚目の右側からスタートしています。
http://asunowa.shiga-saku.net/e614436.html
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=1n4BN-8yTV5-BqPLEixco6GMXyRBn1Hz1NF8pdV_ibNfW20AATCj_rShSINd8&hl=en

僕がこのチラシを手にしたのは、4月に行われた大阪での脱原発デモでのこと。カメラを持って、歩道を歩いていた僕に、小学生ぐらいの女の子(玉崎さんの娘さん?)が、はい!とにこやかに手渡してくれたのでした。一読して、これはこの間のベストチラシだと思った。

それでただちに持ち帰ってマスプリ。周りにじゃんじゃん配りだしたところ、大好評でしたが、その頃になって、良く読むと、「イラスト市居みか」と書いてある。実は市居さんに僕は、数年前に滋賀県で行われた絵本を読む会の場でお会いしていたのでした。

これは絵がつないでくれた縁だな。絵本の縁だなと感じました。すると市居さんが呼びかけて、絵本作家さん60人が集まって、NO!ゲンパツ展が行われていることを知り、東京に出かけた際に、みてくることができました。圧巻だった!集まった絵の力に胸を打たれ、心が温かくなりました。 (さらに…)