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2016.11.21

明日に向けて(1323)原子力推進派は福島原発事故の流れ=放射能の放出を事前に的確に予測していた!

守田です。(20161121 15:00)

このところ原子力規制委員会が、原発再稼働や老朽原発の運転延長に向けての新基準の合格を連続して出しています。無責任極まる行為です。
新規制基準の問題点について、これまで多方面にわたって紹介してきましたが、今回は、独立行政法人・原子力安全基盤機構が、原子力防災専門官向け資料として作成していた炉心溶融のシミュレーション画像をご紹介します。2009年作成のものです。
すでに「明日に向けて(1311)島根原発(沸騰水型原発)の構造的危険性を把握しよう」の中でもご紹介していますが、これはかなりレアなビデオです。

これを観ると、原子力推進派は、福島第一原発事故のような事故をかなりの精度で予測していたことが分かります。
その際、ベントを行うことも予定済みでした。にもかかわらず「過酷事故が起こりうる」という重大事実を社会的に明らかにせず、いわんや住民を逃がすための措置を施してきませんでした。
重大犯罪です。何よりも過酷事故が起きる可能性があり、その際にベントを行うことが予定済みなら、そのことを社会に対して、とりわけ原発周辺の住民に対して告げて、大がかりな避難の準備などをしておくべきだったのです。

にもかかわらず、現在の新規制基準のもとでの審査は、この重大なあやまちを問うことなく、同じ構造のもとに進められています。
そもそも正しい判断は、福島原発事故の教訓に基づいて原発を止めることですが、「再稼働」の基準を作ると言うのであれば、最低でも社会に対してこうした過酷事故がありうることをもっと鮮明に知らせるべきです。
またその際にベントを行うこと、つまり事故対策として放射能放出がなされることを周知徹底し、ベントの前に人々がどう逃げるべきなのかの方策も責任をもって作るべきです。

しかしこの点が曖昧なままに再稼働や、運転延長の許可が出され続けています。無責任極まりない。
なぜこんなことが続いているのでしょうか。過酷事故が起こり、放射能が放出されるリアリティが社会にきちんとつながったらとてもではないけれども原発の運転が認められなくなることを原発推進派が理解しているからです。
このために事故のリアリティが曖昧化されているのです。許しがたいことです。 (さらに…)

2016.10.19

明日に向けて(1311)沸騰水型原発の配管破断事故の危険性を問う(沸騰水型原発の危険性-連載4回目)

守田です。(20161019 17:00)

10月16日に柏崎刈羽原発再稼働反対を掲げて当選した新知事の米山さん、さっそく再稼働は少なくとも福島原発事故の原因解明がなされるまでは稼動を認められないと表明してくれています。
実はこれは原子力規制委員会が打ち出した新規制基準にも沿うものなのです。なぜなら新規制基準では福島原発事故の教訓を取り入れることがうたわれているからです。
しかし、まったく当たり前のことなのですが、教訓を取り入れるためには原因が解明されなければなりません。しかし福島原発1号機から3号機ははメルトダウンした燃料デブリから発する放射線値が高すぎていまだに誰も近づけないのです。
投入したロボットも次々と壊れてしまって一台も帰ってきません。そもそもコンピューター制御されているロボットは人間以上に放射線に弱いからでもあります。これでどうして教訓を生かすことなどできるのでしょうか?

「再稼働の前に福島原発事故の検証が先だ」という見解は、3月10日に稼動中の高浜原発3号機と、自らシャットダウンした4号機の運転禁止の仮処分を命じた大津地裁決定(山本裁判長)の中でも指摘されたものです。
以下、稼働中の原発を停めた初めての司法判断である大津地裁決定から抜粋します。

「福島第一原子力発電所事故の原因究明は、建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況であり、~津波を主たる原因として特定し得たとしてよいのかも不明である。」
「その災禍の甚大さに真摯に向い合い、二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講ずるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。」

これまた実に鮮明ですが、大津地裁は「津波を主たる原因として特定し得たとしてよいのかも不明です」と重要なポイントも示唆しています。
なぜかといえば、田中三彦さんや後藤政志さんたち、技術者の方たちが、早くから福島原発事故は、津波によれる電源喪失によって引き起こされたのではなく、地震による配管破断によって引き起こされた可能性が高いと、パラメーターの解析などから主張してこられたからです。
僕も当初からこの解析に注目し、この場に紹介してきました。2011年6月29日に掲載した記事をご紹介しますのでご興味のある方はご覧下さい。長いので1,2に分けています。

明日に向けて(176)地震による配管破断の可能性と、東電シミュレーション批判(田中三彦さん談再掲1) 20110629
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/f1914e7352792c89767a9c7585ee4a00

明日に向けて(176)地震による配管破断の可能性と、東電シミュレーション批判(田中三彦さん談再掲2)20110629
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8d603fe6649fe963d189d712df46e0c5 (さらに…)

2016.10.14

明日に向けて(1308)改良沸騰水型原発(島根3号機など)もかなり危ない!(連載3回目)

守田です。(20161014 23:30)

島根・鳥取訪問記の3回目です。

これまではマークⅠ型、マークⅠ型改、マークⅡ型、マークⅡ型改、マークⅢ型、改良沸騰水型(ABWR)と変遷を遂げてきた沸騰水型原発の危険性についてみてきました。
とくに繰り返し「改良」がなされたことから、改良がなされなければならなかったもともとの危険個所をおさえてきました。
今回は改良を重ねた末に到達した改良沸騰水型(ABWR)原発が抱えている危険性について論じていきたいと思います。
その際、やはり最も信頼できるのはAPAST主宰者の後藤政志さんの提言で、とくに今回は以下の内容をご紹介したいと思います。

改良沸騰水型原発(ABWR)の技術的特徴(その2)
後藤政志談 20130817
https://www.youtube.com/watch?v=j9NwIwqC2qo&feature=youtu.be&t=14m31s

話を分かりやすくするためにここでもアトミカ掲載のABWRに図を掲載しておきます。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/02/02030402/08.gif

前回も述べたようにこの型の格納容器の特徴は鉄筋コンクリート製であることです。このため英語ではReinforced Concrete Containment Vessels(RCCV)とも表記されます。
このことで構造が簡素化し、内部の機器なども収めやすくなったことを前回ご紹介しました。
基本構造を後藤さんがビデオの中で詳しく説明してくださっているので、ぜひ動画をご覧になってください。

さてこのABWRの最も大きな問題として後藤さんが指摘しているのは、これまでマークⅠ型からⅠ型改になったときも、マークⅡ型からⅡ型改になったときも、格納容器の容積の拡大(約1.5倍に)が行われたのにも関わらず、ABWRでは縮小してしまったことです。
より正確に言うと、格納容器の容積の絶対量は拡大しているのですが、同時に出力も上げられており、この出力あたりの容積が小さくなっているのです。
格納容器の内部はドライウェルとウェットウェルという部分に分かれているのですが、この全空間の容積がマークⅠでは6030㎥だったのがマークⅠ改で14100㎥、マークⅡで9800㎥だったのがマークⅡ改で14400㎥と大きくされてきました。
ところがABWRでは13400㎥に縮小されてしまっているのです。 (さらに…)

2016.10.13

明日に向けて(1307)島根原発(沸騰水型原発)の構造的危険性を把握しよう!(連載第2回)

守田です。(20161013 18:30)

前回から島根原発への取材とお隣の鳥取県境港市での講演についての連載を始めました。
これまで述べてきたのは島根原発が1号機(マークⅠ型)、2号機(マークⅠ改型)、3号機(改良沸騰水型)と、このタイプの原発の変遷の見本のような原子炉が並んでおり、それをみていると沸騰水型原発の危険性がよく分かるという点でした。
実際に1号機から5号機までマークⅠ型を使っていた福島第一原発では1号機から3号機までメルトダウンからメルトスルーを起こし、ベントが試みられましたが、それでも格納容器が破損して大量の放射能漏れ=毒ガス噴出事故を起こしました。
とくに2号機はベントに失敗して格納容器下部が激しく壊れ、3つの炉の中でも圧倒的な量の放射能の噴出を起こしてしまいました。

前回も書きましたがここで注意を促したいのは、もともとこの原発が作られた時に公言され、技術者たちの間でも絶対に守るべき原則とされていたのは、深刻な事故を起こしても大量の放射能漏れなど、絶対に起こさないということでした。
しかしスリーマイル島事故などの経験から、メーカーが理解したのは、配管破断などの何らかの要因で冷却材喪失事故が起こった時、炉心でメルトダウンが起こり、メルトスルーに移行し、膨大なガスが発生して格納容器が持たない状態に陥ることでした。
このため後付けでとりつけられたのがベントだということです。ベントは放射能を閉じ込めることを絶対的な任務としてる格納容器を崩壊から守るために、放射能を自ら噴出させる装置であって、「格納容器の自殺装置」なのです。
このことだけでも原発賛成論のすべてはもう崩壊しているのです。なぜって賛成論ではあくまでも原発が深刻な事故を起こす可能性はまったくないか、あったとしても「天文学的確率でしかない」などと言われてきたからです。

こうした点から、最低でもマークⅠ型原発はもっと早く廃炉にすべきであったこと、こうした決断を行えば十分に福島第一原発事故は防げたのだと前回書きましたが、実はこうした可能性を政府もメーカーも電力会社も100%知っていたのでした。
今回の記事を書くにあたって、元東芝の後藤政志さんや小倉志郎さんらがこの9月に行った集会動画を参考にしていたら、その中でやはり元東芝の渡辺敦雄さんが、このことを示す驚くべき動画をご紹介してくださっていたのでそれをここでも示しておきたいと

思います。
独立行政法人・原子力安全基盤機構が、原子力防災専門官向け資料として作成していた、炉心溶融のシミュレーション画像で、作成は2009年のようです。

動画で見る炉心溶融
https://www.youtube.com/watch?v=wwYk62WpV_s

ご覧になると分かるように、なんと福島第一原発事故は、かなりの精度で発生と進展が予測されていたのです。
予測が外れたのは、ベントが円滑に行えなかったことでした。動画ではベントによって排気塔から大量の放射性ガスが排出されて、まるで「めでたし、めでたし」と締めくくられています。
最後にこんな文章が映されます「最悪の事態に至った場合でも、住民の方々に安全・安心して頂けるよう、日頃から、防災担当者への訓練を通して、原子力災害時の対応能力の習熟に努めております」・・・。
実際にはこんなことが起きる可能性があることは明らかにされず、また起こった際の対処もなんら準備されていませんでした。それどころかこうした可能性を知っていた東電は、自社の家族だけに「とっとと逃げろ」という指令を出したのでした。 (さらに…)

2016.10.12

明日に向けて(1306)島根原発の危険性と境港市と水木しげる記念館―1

守田です。(20161012 23:30)

みなさま。このところとても長い間、ブログの更新を怠ってしまいました。大変、申し訳ありません。9月23日の投稿から書いていませんから19日間のブランクを作ってしまいました。これまでで最長です。
理由はこれまでにない密度で講演を依頼いただき、かつまた内容にも大きな幅があったので、準備に追われて「明日に向けて」を書く時間がなかったことにあります。
また四国全県や島根県、鳥取県など、これまで行ったことのなかったところに次々と呼んでいただき、講演小旅行を繰り返してきたことでも時間がとれませんでした。
けして体調不良や精神的不調のためではありませんのでごうかご心配されませんように。

Facebookを観ていただけている方には、時々の集会報告などをまめにアップしているので、けして身体の問題ではなくあちこちを走り回って時間がとれないことをご理解いただけていると思うのですが、そうでない方にはご心配をかけたと思います。
ともあれ僕は現在、心身共にとても元気です。今年の前半期にかかってしまった坐骨神経痛も完治しました。なのでご心配はご無用です。
今後、こうして飛び回っている中でも、ブログの更新を続けられるように、活動や執筆に工夫を加えることでパワーアップしていくつもりです。ご心配していただいた方がおられましたら、この場を借りてお詫びとお礼を申し上げます。

さてその講演小旅行ですが、先週の7日に島根県松江市までいきました。鳥取県境港市で8日に講演するためですが、この日は松江駅から島根原発見学に行ってきました。
僕を招いてくださった鳥取の方のコーディネートのもと、長い間、島根原発に反対してきた地元の方たちが案内してくださいました。
あけて8日には午後から境港市民会館で講演にのぞみました。新聞の折り込みや、学校でのチラシの配布のお願いと実現など、幅広い宣伝を行ってきてくださったみなさんのご尽力のもと、実数で70名以上が集まってくださいました。
境港市の人口が34000人弱であることを考えたとき、とても大きな成果だったと思えます。また境港市の防災課の方々や、鳥取県会議員さん、境港市、米子市双方の市会議員さんなども多数、参加して下さいました。

今回はこの島根原発取材と、境港市での講演についてご報告したいと思います。

島根原発は島根県の県庁所在地の松江市に位置しています。全国で唯一、県庁所在地に立地している原発です。もともとは鹿島町に建てられたのですが、その後に鹿島町が松江市と合併したので県庁所在地への立地ということになったとのことです。
松江市から原発に向かう際に驚いたのはあまりにこの原発が人口密集地の近くに作られていることです。正確には日本の原発の第一号機である東海原発の方が、周辺の人口が多いそうですが、それでも県庁所在地のすぐそばにあるのは際立っています。
もちろん人口密度の低いところに建てれば良いと言うのでは断じてありませんが、それでも人口の多い現在の松江市内に原発があることの危険性をひしひしと感じざるをえませんでした。

しかもそこからお隣の鳥取県までもわずか20キロ。島根県に接する境港市の市役所まででも21.1キロしかありません。
その境港市には米子市を起点とするから境線が運行されています。米子駅の「れい番線」から出発して終点が境港駅になりますが、現在は鬼太郎ワールドの入り口で、走っているのは「鬼太郎列車」「ねこ娘列車」「ねずみ男列車」「目玉おやじ列車」です。
境港駅からは「水木しげるロード」が続き、辿っていくと「水木しげる記念館」に至ります。たくさんの妖怪の大小の銅像を楽しみながら歩けるのですが、その記念館までも島根原発からほぼ21キロしかないのです。
僕も講演の前日に宿泊したホテルから境線の駅に出て「目玉おやじ列車」に乗り、水木しげるロードを記念館まで辿り、見学をしてから会場に向かったのですが、終始、「妖怪たちは原発をどう捉えているのだろう」との思いが消えませんでした。 (さらに…)